第24話 能力限界「尾根への登攀」

登る登る!

絶壁に張りつき、ドンドンと登る。

岩をつかみ、草木を握りしめ、上に手を伸ばします。

行動と言うより作業です。

淡々と作業するだよ。

心の介入を許さないのね!

感じたり、考えたりしたら、お終い!

奈落へと導かれしまいます。

とにかく、下を見ない、上も見ない。

目の前の断崖にしがみつき体を上に運ぶんでっす。


そうそう、昨日のキャンプは楽しかったo(^^o)

みんなで(幼児のさめを除く)お酒も飲みました。

野営した谷は、川と一緒にくねくねと蛇行しています。

ちょっと、くらい火をたいても組織に見つからないのでは…

と言うことで、窪地に入って焚き火をしましたー。

カヌーから吊るしておいた、高級ハムを焼いて食べた。

焼きロースハム!美味しかったo(^^o)

最近のきゅっぴはね。

kei以外の人間と接することがなかったでしょ。

街にやって来て、すごい緊張してたみたいw

やっと、イリーとも打ち解けてきましたよ。

笑顔が見えはじめました(^^)/

九尾の狐の悪行の疑いも完全解消、ぜんぶ猫猫がいけないことになりました。

みんなで仲良くなれて良かった!


「keiさん、危険ですから岩壁をしっかり掴んで進んでください。」

きゅっぴの心配する声が下から聞こえてきます。

keiっ、ちょっとボーッとしてたかも。

「keiさん、頑張って!もうすぐ絶壁が終わって斜面に出るから。」

上の方からイリーが応援してくれるのね。

「イリーさん、keiさんを甘やかしてはいけません。癖になりますから...。」

さめ、覚えてらっしゃい!

「甘やかす。ってどういう事!こんなに頑張ってるんだよ。」

いけません!

さめの罠ですー。keiの気を散らして、奈落に落とそうとしてるんだと思お!

「オサキさんに肩車をしてもらってるのに、落ちるわけ無いじゃないですか。」

たしかに...。

「万が一の際は組織にさとられても、九尾の姿に戻ってお助けいたします。安心してください。」

「もう、ホントkeiさんをあまやかしすぎです。」

さめってば、なに調子にのってるのかしら...

「さめなんて、イリーのポシェットに入ってるだけじゃん!」

keiは目前の困難を乗り越えるために、力を振り絞っているんでっす!


でも、keiはなんでこんなに頑張ってるんだろ。

きゅっぴがいたから、ここまで登ってこれたけど…

keiだけの力ではムリムリ!

keiの能力をはるかに超えていると思う。

それでもイリーと別の方法を考えて、頑張ったかな~

イリーの期待に応えようとして...

お客さんやお友達やその他。

keiは周り取り囲む人達の期待に応えようとして頑張る。

誰もが、そうなのかなしら?

うんぅ、keiのは頑張ってるんじゃなくて、余計なことしてるんだと思お。

自分の期待にも応えられないのに、人の期待に応えられるはずがないのです(>_<)

必要もないことに関わって、空回りしるだけなんだと思お。

そして、疲れて引きこもるんでっす。

誰からも期待されたくない。

自分にも期待しないで、のんびりと暮らしたい。

ひとりでいるのが、いちばん幸せ!

さめはいるけど、邪魔をしなし、話し相手にちょうど良いです。

たまにきつね君たちや猫猫も訪ねて来てくれます。

それくらいが良いんです。

誰がいればkeiは依存して、期待に応えようと空回りする。

誰にも何にも依存しないで生きる道ってあるのかしら?

でも、依存心と違い、助け合う。という言葉もありますよね?

keiはさめのような合理的なエリート使い魔と違って、人としてそんな命題をいつも背負っているのですー!

「keiさん、斜面に着きましたよ!」

イリーの声が、すぐ目の前から聞こえてきた。

あっ、いけない!

また、ぼーとしてたかも…


断崖絶壁を制覇しても、足がすくむ~。

石と砂の滑りやすい急斜面だよ。

もしも、滑って転がって落ちて行ったら、断崖絶壁を転落!

下の斜面に激突!また転がって川に落ちて流されていくのです~。

危険を感じながらも、また一歩、また一歩一歩!

腿を引き上げ、足を前に出す。

前のめりで歩いているように、くるぶしの辺りが、ぎゅっと曲がってるのね。

ズリッ!

あっ!

足場にしようと思った岩が滑った。

ゴロゴロゴロゴロ~

岩が落ちてくー!

「きゅっぴ、岩落ちた!」

「お任せください!」

きゅっぴはポンと岩を受け取ってしまいました。

落ちないように、もっと大きな岩の上に乗せてます。

keiはきゅっぴを心配して、声をかけたんだけど…

きゅっぴは環境の保全を考えてたみたい(^◇^;)

「岩に例えて申し訳ありませんが、もしもkeiさんが落ちて来ても、あの岩のように受け止めます。安心して登ってください。」

「ありがとお!」

川の反対側の斜面にkeiの声が響いています。

そして、また登りはじめます。

ここは砂漠だけど、頭の中に八甲田山の映画の音楽が流れてきたよ。


汗が落ちます。下を向いてるので、おデコから、鼻先から、もちろん顎から…

まつ毛からも汗が落ちてますよ。

ふぅ~

「さめ~、何時になったら着くの?」

「夕方には着くんじゃ無いですか?」

イリーのポシェットに入って、他力本願なさめは無責任です。

「でも、もうこんな時間(・・;)」

もうすぐ3時です。

「そういえば、お昼ご飯を食べてない。」

お腹が空くのも忘れてました。

「高所恐怖症の人が、こんなところでランチ出来るんですか?」

たしかに!

下を見たら小石が転がって、止まった。

「ポッケに入ってるものでも、食べててください。」

ポッケに何にも入って無い。

「なんか、今日のさめ君はkeiさんに厳しく無いですか?」

イリーがさめを叱っています(^^)v

「keiさん、バックから何か取ってあげますよ。」

何か言いたげな、さめのオーラが伝わってくるのね。

「後ろの私が取りましょう。」

きゅっぴが、朝作ったおむすびとお茶のペットを取り出してくれました。

立ったまま、少し休憩です。

座ると転がり落ちそうだし、いちど座るともう立てないような気がする~。


そして、斜面の最後に待ち受けていたものは…

オーバーハング(・_・;

大きな岩が、せり出してるのね。

両側はもろい土の崖なのです。迂回できません!

ここを乗り越えなければ、尾根に出れません…

あっ、きゅっぴがぴょんぴょん、あっという間に登ってしまいました。

能力を使わなくで、さすがは狐君達の親分です。

ザイルと滑車を使って持ち上げてくれたーo(^^o)

ザイルで釣られながら、沈みかけている太陽が見えてるのね。

あと3分!

日没です。

家を出てから、11回目の夜がやって来ます(たぶん?)。

今日はいちばん、大変な日だったよ。

きゅっぴに引き上げられてると思うと、なんか安心して力が抜けて来た。

「keiさん、動かないでくださいね。」

きゅっぴが心配して声をかけてくれました。

なんか、寝てしまいそう。


あっ、寝てた!

もう星が出始めてます。

イリーもきゅっぴも、野営の準備をしていますよ。

「お腹すいたね!ご飯を食べて早く寝たい。」

「keiさん、もう少し待ってください。」

さめが機械をいじりながら、keiをチラリと見たよ。

「電話を鳴らしますか?」

「さめ君、お願い。」

また、さめは機械をいじりはじめました。

「通信、つながります。」

「ハーイ!」

イリーがパカパカみたいな受話器を持ったよ。

「イリアです。聴こえますか…?」

誰かと電話をしているようです。

「おー、おれだ!だって、どうにかして、この男!」

イリーてば、受話器を離した!

「だから、イリーさんっ我慢してください。話が進みません!」

「ごめんなさい!」

もとい、受話器を耳にあてるイリー。

こんどはおやっさんの声がしているようです。

話が進まないので交代したみい(^^;;

「川下りと尾根の登攀と予定通りです。ここまで順調なので計画通りに城塞に近づけそうです。」

やっぱり、おやっさんの声がする。

「keiさんも元気ですよ。ゆっくりと寝たみたいですし…」

ゆっくりと寝たそうです。

んっ?

「では、おやっさんも気をつけてください。また、夕方に連絡します。」

さめが通信機を止めてています。

「揺動部隊の反政府軍は準備万端だそうです。あのリーダーも殺さない、傷つけないことを約束したそうです。」

イリーは安心した様子だよ。

でも、わさわさ約束を取り付けなくても、リーダーさんはそんなに乱暴な人では無いと思うのです。

「keiっお腹すいた!」

「私もお腹が空いたわ。朝ご飯を食べたら出かけましょう!」


朝ご飯 ⁉︎


「えー、朝ご飯なの?夜ご飯はどこに行ったの??」

「keiさん、食べてたじゃ無いですか?缶詰めのシチューをお代わりしてたでしょ!」

イリーは当たり前のように夜ご飯のことを語るんです(・・;)

「朝なの?寝てないんですが…。」

「寝て起きたところでしょ。空を見てください。」

さめに言われる通り空を見上げると東の空に冬の星座が…

「さすがkeiさん、空を見ると時間がわかるんですね。この作戦が終わったら、また星座を教えてくださいね。」

敵城塞まで、あと1日!

イリーはファイトをみなぎらせています。

あーっ。損した!

夜ご飯も睡眠も記憶にないんですか…

keiはうなだれるのでした(-。-;

「keiさん、寝てたのには変わりはないんですから、疲れは取れたのでは?筋肉痛とかしてますか?」

さめが心配そうに、うなだれているkeiの顔を覗き込んでます。

昨日はあんなに悪態をついていたのにね。

でも、そう言われてみれば体が軽いような。

「だいじょぶ、たしかに疲れが取れてるみたい!」

イリーが立ち上がり、胸を張って尾根の先を指さしました。

「さぁ、朝ごはんを食べたら出かけましょう。この尾根の先に組織のアジト、城塞が待っているわ!」

昇り始めた朝日を浴びて、イリーが勇者のように頼もしく見えたよ。

keiも頑張らなくてはなんでっす(^^)/

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