第22話 セレブなアクティビティリゾーツ「ハイランドリゾート」

寒い-っ!

あっそうだ。ムンベの村を脱出したんだ。

ジグムトさんの運転するジープで、ハラスメントリゾートに向かるんだったよね。

揺れる揺れる、カーブの連続だったり(-_-;)

それよりなにより寒いんでっす。

なんかね、首のまわり熱っぽくって、胸がヒリヒリする感じです。

風邪を引いちゃったかも?

後部座席でイリーと毛布にくるまり、頭っゴチンで寝てました。

そっとkeiの頭をどけて、イリーの頭はゆっくりと肩に乗せました。

さめはどこに行ったのかな?

「keiさん、お目覚めですか?」

ジグムトさんに見つかった。

「寒いでしょ。幌付きの車があればよかったのですが、手近にはこの車しかなかったものですから。」

「おはよおです。標高が高いんですか?けっこう寒いですね。」

「標高は800mくらいでしょう。もうすぐカヌーの難所を見ることができます。谷あいの川ですから、少し明るくならないと見えないかもしれません。そこで焚火でもして休みましょう。」

keiはイリーを起こさないように、ちょっぴり伸びをしました。

さめも毛布にくるまっていたようです。肩のあたりから出てきましたよ。

「keiさん、おはよう。休憩ですか?」

「ジグムトさんがカヌーで下る川を見せてくれるって。」

両ヒレで両目をこすって眠そうです。

「おはようございます。」

助手席で寝ていたキュッピも起きました。

「おはようございます。少し焚火にでもあたって暖を取りましょう。」

さっきまでヘアピンカーブが続く山腹を、ぐねぐねと登っていたのね…

振り向くと断崖絶壁が見えるのです。

あそこ走ってきた(-。-;


(keiっ沈黙してしまいました!)


ほぼ垂直に切り立った断崖絶壁。ちょっぴり、せり出た道路を走りまくってたわけです~。

「絶対に通りたくない。もっとも危険な道10選」なんてタイトルで、クルクル動画で紹介されていそうな道です。

「ハラリゾもサンド同様に、観光のお客様でにぎわっていたのです。しかし、組織の活発になってきたので、隣国に退避していただいたきました。リゾートは閉鎖しました。」

ジープは砂煙や小石を巻き上げながら細く曲がりくねった道路を爆走しています。

「あっ、ハイランドリゾートはザメハラの街が経営しているリゾートです。副町長の私が創設者で最高責任者です。」

レンジを4WDに入れて疾走してるみたい。ハンドルを切るたび、カーブの外へ四輪で滑ってく~。

「車酔いしちゃいましたか?」

黙っているkeiやキュッピを心配してくれましたが...

ジグムトさん。こっちを向かないで!前を見て!

ぜったい崖から落っこちるー(・・;)

「私は大丈夫ですが、keiさんは高い場所が苦手なんです。」

「はっ?」

キュッピはkeiを気遣って恐怖症という言葉を使わないでくれたんだと思お。

「kei、こういう場所っておっこちゃいそうで怖いんですー」

なので、自分で言った!

あはははー

スピードはそのままカーブでは四輪滑らせて大笑いしています。

keiっ状況が呑み込めない。

かなりヤバいです!

少し下り始めると道幅が、さらに狭くなりました=3

右側の切り立った絶壁から小石が落ちくるのが分かります。

「もうすぐ休憩です。この切り立った道も終わります。」


最後のとどめに木製のつり橋です。

車が走ると橋に組まれた木々がたわみ、カタカタと音を立てますよ。

橋を渡ると平らな大地に出ました。

つり橋の横には大きなあづま屋があります。

「ここで少し休みましょう。いま、火を焚きますね。」

あずま屋の真ん中が丸い囲炉裏のようになっていて、焚火ができます。

あづま屋にはハラスメントのお客さんが使えるように、焚火が用意されてました。

それにしても慣れた様子です。マッチと小枝で、あっという間に火が立ち上がりましたよ。

「ジグムトさん、慣れてますね。」

keiが感心してみていると「子供のころから、こうして火を起こしていましたから。」といって笑ってる。

「おはよう。」

イリーも眠そうな顔で、毛布をかぶったまま車を降りてきました。

そして、焚火にあたったまま動かなくなった(^^;)

ジグムトさんは火の様子を見ながら立ち上がると、川の方を向きました。

「あの断崖が、さっきまで走っていた道です。」

見るのも嫌、足がすくむ~。

「あの谷間に川があるのですが、このあたりはゆっくりな流れです。橋の下あたりから左手の上方に向かって、難所と言われています。もう少し明るくなったら、橋から川をのぞいでみましょう。」

イリーも立ち上がって橋を見ています。

「イリー。あの崖をジグムトさんたら、すごいスピードで走ってたんだよ。タイヤ滑るし、おっこしちゃいそうだった!」

「その崖をですか?」

ほらっ!イリーだってびっくりしてる。

「そう世界に誇る絶対に通りたくない危険な国道だとおもお…」

イリーてば、まぁ。。って顔をしてます。

「わたし、寝ててよかったわ。」

「keiも寝てれば良かったんですが…(-。-;」

「おびえているkeiさんを見ていても、何もしてあげられないし、いたたまれないわ。」

何もしてあげられない?

いたたまれない?

「keiさん、おびえてぐちゃぐちゃになってましたよ。」

さめ!

「やっぱり!」

イリー、なに納得してんの!

「ハイリゾまで急ぎはしないんですから、ゆっくり走ってあげればよかったんですよ。」

イリーがジグムトさんに話します。

さっきまで橋や断崖を見ていたジグムトさんは、空を見上げ明後日の方向を眺めています。

「keiさんたちはザウラクの救世主、イリア姫はとりあえず国王代理です。道が崩落してはいけないと思い、急ぎました!」

明後日の空を眺めたままジグムトさんはこぶしに力を入れて、誇らしく満足気な顔つきですよ。

全部、嘘だと思う!

keiにはわかるんです。

えっへん、高所恐怖症障碍者は護身のために、人のウソを見抜く能力を持ってるんでっす!

「それに明け方なると、ヘルメットをかぶった作業員の幽霊が出るという噂です。」

キャー――

通りたくない国道プラス!心霊スポットです。

「国道の話はこのへんにして、まずは朝食にしましょう。昨夜と同じものですが!」

お弁当缶が出てきた。缶詰やパックが缶の中に入って真空パックされてます。

「焚火がありますから、缶詰を温められますよ。」

お野菜いっぱいミネストローネ缶(たぶん)

玉ねぎ仕立て牛肉のトマト煮(たぶん)

缶を焚火の横に置きました。

8つ切りの食パンが2枚となんか動物のパテとマーマレード。

プチケーキとゼリーも入ってます。

「このマーマレード、おいしいですね。」

イリーの目が輝いてます。

「シェフが作りましたから。」

??

ミネストローネが温まってきたみたいです。

「すごいいい香りがしてきた。辛くないけどスパイシーなミネスト、おいしい!」

「シェフが作りましたから。」

??

「keiさん、さめにもください!ジグムトさん、シェフって軍の方ですか?」

keiもそれが聞きたかった!

「リゾートの総料理長です。」

えっ。

みんな、お弁当を食べる手がとまった。

「kei、もっと味わってゆっくり食べよう!」

「わたしもー。」

3回輪廻しても出会えない、超VIPが食べるセレブ弁当(¨O¨;)

「わたしは、海外の料理を食べるのも初めてです。」

「そっか、きゅっぴは洋食を食べに行く機会がなかったものね。」

パンもふかふか、おいしかった!

デザートはポッケにしまいました。あとでさめとはんぶんこします。

朝食を済ませたし、体もあったまったので、ジグムトさんにくっついて橋まで川を見に行きました。

つり橋!

太いワイヤーでしっかりと固定されていますが、手すりも何もありません。

幅はトラックが十分に走れる広さだよ。

足がすくむー

「keiさん、大丈夫ですよ。こんなに広いんだから、落ちたりしませんよ。」

後ろから声がします。

イリーはkeiのすぐ後ろを歩いてるのね。

ジグムトさんは橋の真ん中で立ち止まると川の上流のほうを指さしました。

橋から2kmぐらい先まで川が見えていました。

渓谷の中を左右に蛇行しながら川は流れてます。

ところどころに小さな瀬が見えも見えていますよ。

そしてですね。keiの足の下から200mくらい、ビックなホワイトウォーターが渦を巻いてます。

正確に言うと渦は巻かずに水しぶきをあげて、まっすぐ下っています。

足先がびりぴりむずむずしてきた。

イリーが心配そうにkeiを見ています。

「あっだいじょび!」

「なにが大丈夫なんですか?」

keiを疑っているのに気づかれた!って顔してる。

「川は大丈夫!まっすぐ流れてるし、渦なんかも巻いてないし、岩が隠れていたりも、なさそうだよ。」

「橋の上が嫌なのね!」

イリーったら呆れたって感じで、ため息をつくんですよ。

「この橋の高さより、普通は白い激流を怖いでしょ。本当にkeiさんはカヌーをやってたんですね。」

うん。

「みてみてホワイトウォータが続くでしょ。そのあと川が静かになったところ!」

イリーは川の先を見つめています。

「静かな水面だけど、よく見ると水面に筋が入っているのわかる?」

イリーも見つけたようでうんうんしています。

「あそこから川の水が川底に流れ込んでます。」

えっ

「勢いよく流れてきていきなり静かになるから、川が横にたくさん渦を巻いてるんだと思お。」

イリーもジグムトさんも感心してうなずいています。

「あの筋のところは物を吸い込む力が半端じゃないのね。カヌーごと引き込まれるりするでっす。」

えっ!

ジグムトさんまでびっくりした表情です。

「でも大丈夫です。あの筋につかまらないように、移動し続けていればいいのね。」

「keiさんは湖でインストラクターを務めるこのもあるんですよ。」

珍しくさめがkeiのことを自慢げに紹介しています。

「それよりkeiは国道の絶壁のほうが心配です。土砂が崩れてきたら、川に岩とかが降ってくるじゃないですか?」

「それは心配ありません。」

ジグムトさんあっさり。

「いや、ヤバそうですよ。」

「ハイリゾはお客様の安全が第一です。あの崖にはたくさんの鉄筋やアンカーボルトで埋め込んで補強してあります。ほぼ崩落はありません。」

えっ、崩落しないの?

「万が一何か落ちてきても、セイフティーネットが飛び出し落下物を受け止めるシステムになっています。」

もっとも通りたくない国道のはずなのに?

「じゃあ、あの国道が崩落したり、車ごとおっこっちゃたりしないの?」

「しません。さらに建設の時も完成後の整備事業でも、労働災害ゼロの模範的な作業現場で実現しました。ハラリゾはお客様だけでなく、働く者の安全も重要事項だと考えています。えっへん!」

「じゃあ作業員たちの幽霊は、どこからこんな山奥にやってきたの?」

あっ!しまったという顔をしています。ジグムトさんはばれちゃったことに気づいたようです。

嘘つき!

「浮遊霊じゃないですか?」

苦し紛れに出まかせを言ってます。

人と書いて~不誠実って読むんだよー♪

読むんだよー♪

イリーがコーラスを入れてくれました。

ジグムトさんの嘘つき!

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