第19話 洗脳と魔術

「ちょっとまって!あなた達で武力行使をすることが決まってるの?」

イリーが叱りつけるようにおやっさんを問いだしました。

反政府軍は国の許可も何も根拠もなく、組織と戦争をしようとしているのです。

勝手な信念と正義を振りかざし、組織を捕えようとしています。

イリーさんが怒るのは当然です。

やっていることはグレーマントの自警団と何も変わりはありません。

「同じ国民同士なのよ。しかも反乱分子でもなく、犯罪者でもない、ほんとうなら善良な国民よ。」

おやっさんは困った様子で頷きます。

「あなた達の勝手で、行動を起こせる問題ではないでしょ!」

イリーさん、厳しく言い放ちます。

「おれもそう思うな。」と、トラネコさんも困った様子です。

「あのとき、黙って帰すんじゃなかったわ!」

イリーさんは空てい部隊が助けに来た時のことを言ってます。

「とはいっても、すでにザメハラはあの様子。もしも、その先のイーグルの人たちが洗脳されたら、世界の要人を人質に取られるということですよね。」

アジトの先にどこか大切な街があったことを思い出し、イリーさんは冷静になって考えをめぐらせています。

「イーグルという町がどこにあるのか解りませんが、すでに洗脳は始まっているかもしれませんね。」

うっかり、またスマートマスコットのさめが話に加わってしまいました。

keiさんは耳を澄ませて聞き入っている様子です。

「イーグル!」

イリーさんは強く言葉を発すると、真逆に弱弱しく息を吐きました。

「イーグルって、なんですか?」

どれほど、重要な拠点なんでしょう?

またまた、スマートマスコットが会話に加わってしまいました。

「イーグルも世界の要人専用のリゾートなの。」

この前と同じく、秘密のリゾート!

「イーグルが狙いだったのか?」

トラネコさんが腕を組んで地図をにらんでいます。

「世界の要人が狙われているんでしたら、自国民であれ国軍は容赦なく攻撃するのでは?急いで情報収集ですね。」

さめ、余計なことを言ってますか?

洗脳されて囚われている人を助けるには、とにかく情報だと思もいました。

「そっそうよ、さめ君!情報だわ。適切に攻略すれば、被害を最小限に抑えらえるわね。」

困り顔のイリーさんに元気が戻ってきました。

トルネコさんも大きく頷いています。

「たしかに情報だな!無線機のレピーターやネット配信のためにモバイル機器もそろってるなら、ばんばん情報を流してくれ。」

おやっさんも元気顔になってきました。

「リーダーを説得しましょう!」

「とにかく、ザウラクの国民を傷つけないように注意して、多少は仕方がないとして、怪我をさせれば傷害罪ですからね!」

イリーさんが一言付け加えました。

でっ、keiさん!

静かにしていると思ったら、腕を組んで真剣なまなざしを床に向けています。

たぶん、いつものようにありんこを見つめているんだと思います。

「keiさん!」

やっと顔を上げました。珍しくむつかしい顔をしています。

「魔法なのか、洗脳なのか、どっちだろうろ?」

あっ、keiさんはちゃんと考えていたようです。

洗脳であれ、魔法であれ、それを解くカギを見つけないといけません。

「洗脳なら最後は自分に不利益なことはしないよね。魔法で操られていたら、決死の覚悟で攻撃してくるよ。きっと!」

珍しく、すっごくイイことを言ってます。

次の言葉に期待して、みんなの視線が集まります。

「ほらぁ、見て見て!アリ達が困ってバラバラになって逃げまどってるよ。決死の覚悟でkeiを攻撃してくるアリはいませんねぇ。女王アリから魔法で操られているわけではないみたい。」

やっぱり!

いい場面なんですが、どっか...

いや、かなり間違ってます。

目先は違っても、まぁ言っていることに間違えはありません。

「え~い、砂埃攻撃。ふー!」

アリを攻撃しています(-_-;)

「アリに意地悪をしていると、またアリ裁判ですよ!」

以前、大量無差別殺蟻罪でアリに逮捕されたことがあるんです。

「また、あの弁護士アリさんに助けてもらうもん♪」

keiさんにはアリと戦っていてもらいましょう。

「では、さめが説明します。」

催眠術というものがあります。

人の無意識に語り掛けて、トラウマを取り除いたり、植え付けたりする技術です。

それを応用して、人を暗示にかけて操ることができるそうです。

無意識に理性も理屈もないので暗示にかかり易いのです。

集団催眠なんて言葉を聞いたことがあると思います。

人は集団のほうが暗示にかかり易いと教わりました。

怪しい新興宗教や詐欺まがいの物品の販売とかに使われてます。

でも、催眠や洗脳というものは心に暗示をかけられているだけです。

暗示をかけられた心が行動しているわけです。

なので、究極的には自分に不利益なことはしないと考えられています。

つまり、顕在意識であれ、無意識であれ、防衛本能が働くんでしょう。

では、魔法はどうかというと、魔法を使って、まったく別の人格にすり替えられてしまうのです。

コンピュータに別のプログラムをインストールすると、それまでとは全く違う働きをするのと似ています。

つまり、魔法によって違う人格をインストールすれば、魔法使いの筋書き通りに行動する事になります。

あとは命令すれば良いだけなんです。

自己防衛も働きません。

「ナイフを胸にさして死ね」と命じれば、その通りにしてしまうでしょう。

悪魔が使う魔法ですね。

でも、古来から禁断の魔法として封印され、今は存在が確認されていません。

人を操る強力な魔法は、一人一人に儀式や薬剤を使って施します。

そして、その後も一人一人を操ることになりますが、それには莫大な魔力や時間が必要です。

魔力でいうとサタン級の力が必要です。

今回の騒動にサタンが関与しているとは思えません。

また、禁断魔法を手に入れた魔法使いがいたとしても、現代の魔法使いに、それほどの魔力を持っている者もいません。

ずっと以前の話になりますが、魔法使いと使い魔が争いをおこしたことがあります。

平和を願い和み石という石で、魔法使いや使い魔の魔力を制限したのです(詳細は猫魔王討伐!8章「妖気をまとう秘密の沼」参照)。

1000人以上の人を操るとしたら、先ほどお話しした洗脳や催眠とおもわれます。

ポピュラーなものは偶像崇拝です。

「~ために!」的な偶像を作り上げるんです。

ネックレスは間違いなく偶像をモバイル化して、携帯出来るようにしたものです。

たぶん、その最高位にある偶像がどこかにあるはずです。

城だか、教会だか、どこかに礼拝堂のようなものがあって、祀られているでしょう。

そうネックレスは剣だという話でしたが、礼拝堂には人の形をした神様的な像があると思います。

それを見つけることは重要ですが、見つけた後にそれをどのように利用するかは、見つけた後のことになります。

いっしゅん沈黙が続きましたが、おやっさんがさんが驚きの声を上げました。

「このさめのマスコットはすごいな!催眠術とか魔法とか...。wifiでクルクル検索に連動してるの?」

wikiではありませんから~(-_-;)

「あーこれね、実はkeiの使い魔なんでっす。ホオジロザメなんたよ。さめは幼児なので、まだ小さいです(^^ゞ」

「通快魔??」

おやっさんは使い魔というもの自体を知らない様子です。

イリーさんがザウラクの日常的な言葉でうまく説明してくれています。

おやっさんは大きく頷いてます。

よかった。

「じゃぁ、この通快魔はマンゴーが好物なのかな!」

おやっさん、知ってるよ!って感じで、得意げな顔です。

「マンゴーか、イースに帰らないと手に入らないな。取引はあるから取り寄せておくよ。」

トラネコさんまで(^^ゞ

イリーさんはどんな説明をしたんでしょう?

「あっ、そうだ。何かの役に立つと思って、奴らのネックレスを持って来てました。これを預けておきましょう。」

このネックレスがあれば組織の関係者のふりが出来るかもしれません!

「ねぇねぇ、この十字の剣に巻かれてる布って、天橋立の羽衣のようだね。」

布だか、羽衣だか、解りません。

和風な天女を崇拝していいるのかも、もしくは観世音菩薩様...?

「さめは偶像崇拝で洗脳って言うけどね。組織さん達はアリじゃないんだから、分担して魔法をかけてるかもしれないよ。」

たしかに!

またまた、keiさんがまともな事を言ってます。

「なんかkeiさん、冴えてるわね。」

イリーさんに褒められてニコニコしています。

「keiさんの言う通りですね。でも、魔法が使われていない事を祈りましょう!」

アジトに潜入しなくては、何もわかりません!

「じゃあ、そういう事で!おやっさんとリーダーさんは正面から突撃してもらって、組織さんが慌てている間に、イリー班は裏の山岳地帯から潜入して、詐欺の神さま像を探しに行くということで...おー!」

「...。」

keiさんの突然の提案と号令に、みんな戸惑っています。

「おおおおぉ~!」

イリーさんがやっとの思いで声を上げました。

そして、立ち上がると鉄格子の見つめています。

「まずはここから出なくてはね!」

みんな、ヨシ!といって感じで気合を入れています。

さめもワクワクしてきました。

「keiっお腹空いた」

keiさんはお腹が空いているようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る