第18話 情報
さめです。
keiさんもイリーさんも、組織につかまって縛られています。
とりあえず、keiさんに代わってさめが冒険日誌を書いておきます。
keiさんたちは穴から引きづり出されて、4階建てのザメハラ町警察支所に連行されました。
すでにランメルさんが反政府軍だということがバレたしまったようです。
そうそう、おやっさんはランメルさんと言う名前でした。
取り調べはおやっさんからはじまりました。
警邏(ら)小隊が行方不明になっているらしく、胸ぐらをつかみあげられて尋問されています。
たぶん、keiさんがミサイルを撃ち込んじゃったグレーマント達だと思います。
意地悪さんたちは、おやっさんを犯罪組織の頭と思っているようです。
そして、商売の利益のために協力している商人トラネコさん。
keiさんとイリーさんは、おやっさんの若い部下たち(keiさんもおやじですが...)だと思われているようです。
警邏(ら)小隊にミサイルを打ったのはkeiさんだし、捕縛したのはリーダーさんです。
おやっさんは実行犯ではないんですけれど…
今のところ、イリ-さんの素性はばれていません。
でも、イリーさんの取り調べがはじまれば、すぐにわかってしまいます。
取り調べられても、バレなかったらイリーさんは逆に怒り出すと思います。
まぁ、王女ですから、そんな心配もなく普通にバレますよね。
ところがトラネコさんの取り調べがはじまったころ、黒い法衣姿の神官のような人がやってきて、意地悪上司さんに指示を出し始めました。
どうやら、この先のムンベ村に偉い人が来ることになり、取り調べにその人も立ち合うことになったようです。
今日のところは、イリーさんの素性がばれずに済みました。
夜のうちにkeiさんたちはムンベ村に移送されるみたいです。
いよいよ、さめの出番ですね!
護送車でkeiさんたちの縄を噛み切って自由にすれば、どうにかマントをやっつけて逃げられると思います。
警察支所の前には、大きな厳ついトラックがエンジンをかけたまま停めてあります。
カタカタカタカタ...
すいぶんと古いトラックです。エンジンの音よりも車体の部品の揺れる音のほうがうるさい。
軽油の排気ガスのにおいがしてきました。
「悪かったな、古くて!これは俺のトラックだ。」
あれ、考え事がぶつぶつと声に出ちゃってたみたいです(^^ゞ
「わぁ、このトラックはトラネコさんのなの?いすゞ6輪TWでしょお!なんでなんで?」
なんか?keiさんはトラネコさんのトラックを見てワクワクしています。
「ていうか!こいつら、なんで俺の車を使ってんだよ。」
トラネコさんは不満そうです。
「静かにしろ、証拠品として押収した。」
トラネコさんは小銃の銃先でつつかれています。
「護送車なんで持ってないんだよ。きっとw」
keiさんも余計なことを言うし...
「うるさい、早く乗り込め!お前はこっちだ。」
トラネコさんだけ、助手席に連れていかれました。。
困りましたー!
見張りの2人に突かれながら、keiさん達は荷台に乗り込みました。
keiさん達が荷台に乗り込むと、後ろから7人ものグレーマント達が乗り込んできましたー。
トラックの後ろには、何人乗っているか解らないワゴン車もついてくるようです。
この荷台だけでも7対3。
その上、トラネコさんも助手席で人質になってます。
縄を噛み切ったとしても...
結局、逃げるチャンスを見つけられずに、ムンベの村についてしまいました(^^ゞ
ムンベの留置所では縄をほどいてもらってます。
その代わり牢屋は南京錠ではなく、しっかり厳重な二重ロックで施錠されてます。
床も壁もコンクリート、窓さえありません。
でも、トイレだけは衛生的な個室のトイレが付いています。
「イリアさん、keiさん、会えてよかった!伝えなくてはいけない事があったんです。」
やっと監視がいなくなったので、おやっさんが内緒の話を始めてしまいました。
「ちょっと待てください!」
さめは周りの空気に意識を張り巡らしました。
「盗聴機もありませんし、聞き耳を立てている人の気配もありません。」
さめを見ておやっさんが目を丸くしています。
驚くほどの能力ではありません。初級使い魔でも使えます。
補助的な力ですが大切な能力です。
あっ、さめの能力に驚いたわけではなかったようです。
「ブルートゥースで動いてるんだってよ。さめ、雪だるまを歌ってみな。」
トラネコさんまで、さめを馬鹿にして...。
「何も動かないよ。」
おやっさんは不思議そうな顔で、さめを見ています。
「このまえは姫が歌い始めたんだけどな?」
「こんなところで、歌いません!」
おやっさんは首をかしげています。
イリーさんは笑ってます。
「スマートマスコットって言うらしいよ。」とトルネコさんがさめを紹介してくれました。
「最近じゃ、スマートホンから派生してスマートスピーカにスマートスイッチやら、便利なものがあるらしいな。」
さすがおやっさんは元商人、砂漠の真ん中にいても新商品の情報には詳しいようです。
「スマート洗濯機にスマート風呂、スマートトイレ、みんなネットにつながって便利になってるぜ!」
「トルネコさんてば、圧力釜にフライパンにトイレなんて嘘っぽい!」
keiさん、間違えてます。
「嘘じゃないよ。冷蔵庫に炊飯器、なんでもwifiだよ。スマートトイレはおしっこをすると、健康状態をスマホのアプリに送ってくれるんだぜ!5セット注文を入れたよ。」
トラネコさんの妄想ギャグも、keiさん並みにお調子もんです。
「嘘だ嘘だぁ!でも、keiはスマート鉛筆持ってるよ。」
「どんな鉛筆?」
トラネコさん、興味があるみたいです。
「細いの!」
やっぱり(-_-;)
トラネコさん VS keiさん
妄想対決はkeiさんに軍配が上がりそうです。
「もう、そんな冗談対決をしている場合じゃないでしょ!」
イリーさんが割って入りました。
もうホント、この人たちは話が先に進みません。
「とにかく、ここから脱出する方法を考えましょう。」
明日にはイリーさんの尋問も行われます。
王女を人質に取られたら!なんて危機感を、この2人は持っていないのでしょうか?
「でっ、なんでこの小さなさめは動いてしゃべるんだ?」
あ~!
「トラネコさん、それは私が後で説明しますから。何があったのか、そちらの話をお願いします。」
イリーさんが話を進めてくれました。
おやっさんはどうしても気になるみたいです。さめを観察しながら話し始めました。
「イリアさんたちを襲ったやつらを調べて、いろいろなことが分かりました。」
「何もしゃべらなくて、困ってましたよね。」
いろいろと方法はあります。とおやっさんは意味深に答えると、地図を広げて話し始めました。
イリーさんが不安そうな顔をして、「拷問したんではないでしょうね」と荒立てた声を上げました。
話が進まない。
「イリーさん。それは後にしましょう。まずはおやっさんの話を聞きましょう。」
「そうだったわね。サメ君、ごめんなさい。」
さてと話しの続きは…
ひょっとしたら、アジトが分かったんでしょうか?
「トラネコさん、スマートシャーペンはいかが?」
「芯が0.1mmなんだろ。いらない。」
「何で知ってるの?」
コラーっ!
話が進まない!
「ほっときましょ!」
あのグレ-マント達は民間人で、地域を問わず同世代の若いもので構成されているようです。
みんな同じ宗教に入信していてる様子で、熱心に何かに祈りを捧げていました。
奴らの本拠地は、この先の山岳地帯の尾根の先端にあることも解りしました。
尾根が終わる先端をコの字に掘って作られているようです。
奥の壁面は幅が150m、高さが100mの断崖です。
側面も切り立った断崖ですが、手前に向かって低くなっています。
例えるのがむつかいしですが、ダムみたいな形でしょうか?
奥の壁面の中を拠点にしているようです。
彼らのアジトと言うよりは、教会や寺院のようなものだと思います。
尾根の左右は、山から流れてくる川で遮られています。
解っていただけたでしょうか?「まぁ、なんとなく...」
イリーさんは地図を見つて、きょとんとしています。
「100m絶壁があって、城塞になってるんですよね。」
イリーさんにとって、細かい事は、どうでもいいみたい。
おやっさんの情報は、まだ続きます。
彼らについてです。
彼らは首に十字のアクセサリーのついたネックレスを下げています。
十字の形は剣に布を巻き付けたようなデザインです。
自警団と名乗るグレーのマントの者たちは、剣を持ち警察のようなことをしていることは知ってのとおりです。
先ほどのような法衣をまとったものは、政を行い作業者や自警団を統率しているようです。
作業者とは城を作ったり、作物を作ったり、そのほか労役に服している者たちのことです。
その者たちは同じネックレスはしているもの、服装はまちまち作業着だそうです。
信者全員を合わせると2000~3000人くらい。
武器や兵力は未知です。
どのくらいの武力を持っているのか、今のところは分かっていません。
武器庫に自動小銃もしまわれていると話していました。
それなりに近代的な武器を備えていると考えた方が良いでしょう。
もし攻めるとするならば、アジトの裏の山岳地帯を抜けて城に侵入するか、総力で正面の警備を突破して突入するしかありません。
リーダーの様子からすると正面からの突撃となります。
山岳地帯から組織アジトまで、けもの道がありますが、その道を使って軍を率い攻めいるのは不可能です。
かえって返り討ちに会うだけです。
リーダーでなくても、正面対決を選ぶと思います。
侵攻中の様子は映像で、逐次国軍に送信します。
そのための無線中継のレピーターも準備中です。
戦闘中を除く拠点の形状や周辺地形はクルクル動画にも配信予定です。
「ちょっとまって!あなた達で勝手に武力行使をすることが決まってるの?」
イリーさんはびっくりした様子でおやっさんを問いただしました。
いよいよ、リーダーさん達は組織に戦線布告をするようです。
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