第17話 留置所からの逃亡…

自警団詰め所に入ると、いきなり肩と腕をつかまれて、手首に縄で縛られてしまいました。

自警団は手錠じゃないんだ。

「縄で縛られるなんて、異世界チック(-_-;)」

「警察が銃や無線機、手錠とかを、彼らに奪われないよう隠したんじゃないかしら。」

詰め所はちょっと大き目な保安官事務所くらいです。

二階建て。

「イリー、ザメハラの人口はどのくらい?」

「2万人くらいかしら。」

市は…5万人以上ってお客さんが言ってたから、日本だったら大きな町です。

「ここは派出所かなー?」

「ん、警察支署はもっと街の中心にあるんじゃないかしら。」

「じゃあ、やっぱり派出所だね。」

さめが得意げな顔をしてポッケから出てきました。

「keiさん、今は派出所とは言わないんです。平成6年から正式な名称は交番になりました。アメリカでもKobanとして設置している州があると聞きますよ。」

ほお、さめっトレビアです。

「Kobanね。それぞれの自治体に任せてたと思うわ。ザウラクには交番はなくて、地域ごとに支署と移動警察署があるんですよ。大きな事故や事件があったときだけね。」

「そういうのもありだね。消防署みたい。」

さめが縛られた腕を見ています。

縄で縛られたなんて初めてです。硬い繊維が肌に食い込んで、すっごく痛い!

「keiさん、手錠よりは縄で縛られた方が痛くないらしいですよ。」

サメトレ(↑さめのトレビア)

手錠よりは痛くないと言われてもねー(~_~;)

keiたちは詰め所のカウンター通り抜けて、建物の奥につれていかれました。

するとお決まりの牢屋が(-_-;)

「ほら、さっさと入れ!」

お決まりの囚人用ベットが2つに洗面、いちおう腰くらいまで隠されたトイレです。

あと事務机がある?

「ねぇねぇ、牢屋に入ったんだから縄をほどいてよ。」

知らん顔してマントさんは行ってしまいました。

「縄で縛るより、本当は手錠がほしくてたまらないのよw。警察ごっこがしたくてたまらないのね。」

まずはカッコからというやつです。

牢屋のカギが見つからないみたいで、チェーンをかけて南京錠してます。


keiたちが連れてこられてからは、部下たちにkeiたちの荷物を取りに行かせたり、トルネコさんを組合や市場に探しに出たりでした。

けっきょく、取り調べも受けたよ。

でも…

何しに来た!

トラネコはどこだ!

と同じ質問ばかりです。

ほかに事件が無いの。って言うくらい、keiたちの素性で盛り上がっていました。

でっ、イリーがお姫様なんて気づかない(^^ゞ

「ほかにやることが無いんでしょ。私たちを不審者に祭り上げて、警察ごっこを楽しんでるんだわ。私が王女だなんて気づきもしない!」

イリーは厳しいです!

てか、怒ってる(・_・;)

でもね、なんかもっと意地悪をされるんじゃないかって心配です。


でも、静かになった...

まだ寝てしまうには早い時間です。

扉を出入りする音どころか、コトリとも音がしません。

聞こえるのはイリーの寝息。

あー、イリー寝てる(-_-;)

「え、何keiさん?」

声をかけたわけではないんですけど、keiの意識を感じて起きたみたい。

「あっごめん、起こしちゃった。」

「別にいいけど。」

こんなところで、しかも変な人たちにつかまっているっていうのに、良く寝れるものです。

疲れてるんだろうな~?

お父さんが心配なのに、keiたちにも気を配ったり!

「さっき、keiさんがごろつきにいってたじゃない。トラウマ!」

「グレーマントに異常に反応してたよね。」

「たとえば、想像だけど。あの人達はグレーマントに誘拐されて、洗脳か何かでグレーマント化されたんじゃないかしら?その時の記憶が残っているとか?」

バックで寝ていたさめが顔を出しました。

「それが正解じゃないですか。どうして、警察が居なくなったのか、全く記憶が無いみたいでしたね。その事に自分で気がつきそうになって、困っている様子でした。」

そうそう、グレーマントに激怒してるし、警察がいなくなったことに目がきょとんとしてました。

てか、最後まで話をさせてもらいたかったな~。


さめが突然にさめバックから飛び出してきました。

イリーも立ち上がった!

「一人と一匹で、何を以心伝心してるんですかー?」

さめがkeiの膝の上で、何か気配をうかがっています。

「誰かいるんですよ、keiさん。」

えー誰?

さめもイリーも、床のほうに意識を向けているようです。

「足を踏んでるだろ!」

「引っ張るな。袖がちぎれる!」

床の下から、こそこそひそひそと声が聞こえてきます。

なんか緊張しているようだけど、コントをしているようにも聞こえますよ。

「のこぎりだって言ってんだろ!」

「これ、のこぎりだろ!」

「おっホントだ、だましやがって!」

「なんだと、もういっぺん言ってみろ!」

イリーがくすくすと笑いながら、keiの方を見ています。

どっかで聞いたことのある声。

そうそうトルネコさんとおやっさんです。

「この隙間じゃ、のこぎりが入んないよ。」

「よし、ちょっと待て、ドリルで穴よあけるから。」

「何も言わなくていいかな?」

「そうだ!イリアさん、keiさんいますかー?」

おやっさんがささやいてます。

「いま、ここにドリルで穴をあけますよー注意してください。」

「どこ?」

床の下から"ここに"と言われてものね。

「声のするところじゃないの?」

10分もしないうちに人が通れるくらいの穴が出来ました。

「ちょうど良かった。ベットの下だ。ベットをどかしてください。」

イリーとベットをどかすと、穴の中におやっさんの顔が見えました。


穴の中はけっこう広かったです。

階段になっていて、ずっと下の方に続いています。

イリーも不思議そうに階段の先の闇をのぞき込んでいますよ。

「なんの穴なんですか?」

やっとの思いで動かした重いベットを、おやっさんは穴の中から元に戻して穴を隠しています。

「昔の建物一部だったのか、中世とかにありがちな抜け道とか?」

イリーは首をかしげています。

トラネコさんもおやっさんも、埃だらけです。

「警察の勾留室の下に抜け道があるなんて?知ってたんですか?」

首をかしげていたイリーが、不思議そうに質問しました。

そうそう、抜け道をトラネコさんやおやっさんが知っていたのも不思議です!

てか、トラネコさんやおやっさんって、どういう取り合わせ??

「分所の工事をしている時に見つけちまったんだよ。部材もそろえた、基礎も打った、工期も決められてる。」

トルネコさんは、はぎとった床を下から補強しています。

「施工業者に穴を埋めさせようと思ったけど、金もかかし、時間もかかる。見なかったことにしちゃったわけだ。」

まぁ。。

「でも、施工業者が警察をうまく説得して拘留室は二階なった。でも、いつのまにか拘留室は一階に移り、なんと穴の上になってしまったわけだ。」

イリーはまじまじとトルネコさんを見ています。

ザウラル国家的に許されないことです!

「トルネコさん、ずいぶん詳しいんですね。」

イリー、やっぱり怒ってます。

先に立って階段を降りようとしていたおやっさんが、振り向いて一言付け加えましたよ。

「おれはダメだといったんだが、役に立ったな。」

イリーは頭にハテナです。

「そうそう、どうして二人がここにいるの?」

「大学の同期なんです。」と言って、おやっさんは階段を降り始めました。

トラネコさんは両手を広げて首をかしげました。

そして、keiに先に進むように勧めてくれたよ。

「個々の工事はあいつの会社で請け負って、おれが下請けで施工業者を手配してたんだ。」

前を進んでいたおやっさんが、その話に付け加えてくれましたよ。

「つまり、リーダーのお父さんが経営していた会社です。当時、私は社長付の経営見習いとして、秘書兼ぼっちゃんの世話係をしていたんです。」

「大学の同期って、どこですか?」

「王立共和大学」

トルネコさんが先に答えました。

「留学したんじゃなくて、王立大を出たんですか!エリートじゃないですか(゜O゜;)」

そんなにすごいことなの?イリーはびっくりしている。

「そんなにびっくりすることか?」とトルネコさん。

「keiの察するところ、すごい大学を出たエリート二人が、ほとりだらけで泥棒まがいのことをしているのに驚いているのですよ。ねぇイリー!」

「違いますよー!」

イリーってば否定していたけど、先を進むおやっさんの後姿を見てクスッと笑ってた。

「そうだ、助けに来た恩人にほこりまみれの泥棒とは聞き捨てならんな。」

トルネコさんに怒られた(^^ゞ

「よしここだ!」

出口に着いたみたいです。

その瞬間まぶしい光がおやっさんの頭上から射し込んできました。

おやっさんの姿が闇の中から照らし出されました。

頭上が騒々しいです。

「ダンジョンの探索、ご苦労。お目当ての財宝を見つけたようだね。」

意地悪な声、街の意地悪さんよりもっと意地悪そうです。

きっと意地悪さんたちの上司の意地悪司令官なんだとおもう。

「残念たが、おまえらも財宝と一緒に牢屋に戻ってもらうよ。」

穴の出口に自警団がいっぱい待っていました。

また、捕まったみたい(^^ゞ

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