63、第2の誕生
僕は胸の奥底にしまっていた記憶に光を当てた。ずっと目を背けていたことだ。
「目覚めた時、僕はひとりだった」
「マルはいませんでしたか?」
「君を造ったのは、僕が目覚めてからだよ。ひとりなんだと理解したのは、最後の記憶が僕の脳裏に鮮明に刻まれていたから」
話す僕の表情が心許なかったのだろうか、マルは僕の手をそっと握ってくれた。
「恐ろしいことが起こっている、と言われていた。だから、僕だけは守りたい、と偽装区域に連れて行かれたんだ」
「エルさんを守りたいと言ったのは誰ですか?」
「僕をデザインした人……大切な人だ」
マルが僕をじっと見つめている。その双眸に面影がある。
「そして、僕は冷眠装置に入れられた。最後に言われたのは『希望をあなたに託す』……。どうして僕に? と思いながら僕は眠りについたんだ」
マルはじっと動かない。
「偽装区域ってなんですか? マルの検索には出てきません」
「偽装区域は≪パンゲア≫の
「マル、そこに行きたいです!」
名探偵の格好をした彼女は勢いよく立ち上がった。
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