「1年ってなんですか？」

　彼女が突然そう質問した。僕は朧げな記憶を辿る。

「≪パンゲア≫の中枢に基準時間を規定するシステムがあって、それが定義してるはずだよ」

「ほえー」

「その基準時間がどうやって規定されてるかは分からないけどね」

　先に言い訳のように付け足すと、彼女はハッとしたような顔をした。

「どうしたの？」

「惑星の恒星公転時間を1年と定義して、これまで≪パンゲア≫が収集した天体運行情報と照合しました。歳差運動と摂動が考慮された情報なのに、合致する惑星が見つかりません」

「≪パンゲア≫が規定する1年の定義が、いつの時代の地球公転なのかによるんじゃないかな」

　彼女は目を丸くした。

≪パンゲア≫が規定する1年の定義と現在の地球の公転周期の差が分かれば、両者の間に何年の隔たりがあるか求めることができる。

「計算できた？」

「約67234年です」

　今度は僕が目を丸くする番だった。

「え？」

「約67234年です」

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