56、伝説のあの人

 マルが向こうからやって来る。いつもと違う装いだ。


「その服、どうしたの?」


 彼女はニコニコしながらその場でくるりとターンした。


「形から入るっていうのをやってみました」


「初めて見る服だね」


「マルが作りました。ディアハットとインバネスコート!」


「どうしてそんな格好してるの?」


「伝説上の名探偵の姿です。マルが謎を解き明かします」


「≪ゲラシオン・パーク≫のこと?」


 彼女は大きく頷いた。その目は輝いている。


 彼女は今までもカオスに熱い興味を示してきた。それが謎に結びついて、解き明かしたいという探究心に繋がったのかもしれない。


「面白そうだね」


 何かをしたくてウズウズしている彼女を止めることなどできない。僕が応えると、彼女は首を傾げた。


「マルは何をすればいいですか?」


「何も考えてなかったの?!」


 彼女は恥ずかしそうに僕を見た。


「えへへ……」

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