55、端緒

 マルがプレゼントしてくれた絵を壁に貼る。≪パンゲア≫のどこかに美術品を収蔵している場所があったな、と思っているとマルがやって来た。


「僕の誕生日を調べてくれたの?」


「はい。でも、エルさんが生まれた世代がが、最後の人間の誕生みたいでした。どうしてやめちゃいましたか?」


「やめたわけじゃないんだよ。停止せざるを得なかったんだ」


 彼女が首を傾げる。


「どうしてですか?」


「僕も詳しくは知らないけど、≪ゲラシオン・パーク≫が離脱したのが関係しているのは確かだと思う」


「マル、知りたいです。どうして、人間は生まれなくなってしまったのか」


「ただ、その情報がアーカイブの最高レベルのレイヤーに保存されていて、僕たちは見ることができないんだ」


「現場百遍」


 彼女が急にそう言った。


「なにそれ?」


「アーカイブに保存されていた映像で、怖い顔をした人が言っていたんです。『事件を解決するには、現場百遍なんだ』って」


「ああ、刑事ドラマってやつか……」


 彼女は嬉しそうに頷いた。


「はい!」


「……っていうか、君は刑事ドラマ観るんだね」


「カオスの人間的解釈がすごい!」


 彼女はそう言って目を輝かせた。

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