54、サプライズ
マルがニコニコしながらやって来る。
「いいことでもあるの?」
「はい!」
彼女が後ろ手に何か持っているので、なんとはなしに尋ねてみる。
「何を持っているの?」
「エルさんにあげるサプライズプレゼントです!」
得意げに言うので、僕はいつかも同じことがあったと思い出して申し訳なくなってしまった。
「ああ、訊いた僕が悪かった……。サプライズは、先に言わないほうがいいよ」
彼女は慌てて口を押さえるが、もう遅い。彼女は恐る恐るという感じで、僕に一枚の紙を手渡した。
写真……いや、写真と見紛うほど精細な絵だ。
僕とマルが並んでこちらを見ている。そのまわりを無数の鉢植えのアルが囲んでいる。
「これ、君が描いたの?」
「はい!」
「もしかして、ずっと僕に内緒でこれを描いてたの?」
「はい!」
「ありがとう。でも、どうして?」
「アーカイブで確認しました。今日、2月22日はエルさんのお誕生日です!」
彼女のサプライズに僕は思わず涙を流してしまった。
彼女が慌てている。
「エルさん?! どうしましたか?!」
「嬉しいんだよ」
「かなしいんじゃないですか?」
僕はもう一度言った。
「嬉しいんだ」
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