40、最後の種

 黒い直方体には、入口がある。


「探検ですね」


 彼女はそう言って、入口からすぐのコントロール・ルームへ。


「ここで内部の種の保存状態を管理しているんだ」


「≪種の揺籠≫は、どういう場所ですか?」


「ああ、そうか、まだ説明してなかったか。ここは、全ての地球生物を形態を問わず保存してあるんだ。移住先の惑星で地球環境を再現するためにね」


「テラフォーミングですね」


 彼女はそう言いながら、コントロールパネルに向かった。だが、そこで険しい表情を浮かべた。


「エルさん、どういうことですか? ここに保存されているしゅが、全滅しています……」


 僕はため息をついた。ついに言わなければならない。


「ビシュテ区画の生物は、もう僕しか残っていないんだ」

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