30、出発

「しゅっぱ〜つ!」


 マルが声を上げて歩き出す。彼女の後ろをキャリアーが追いかける。


「そんなに張り切って行くところじゃないよ」


「でも、野菜工場より先に行ったことがないので、楽しみです!」


 そう言って、彼女は大手を振って歩く。まっすぐと続く白い通路がその先にある。


「エルさんは野菜工場より先に行ったことありますか?」


「あるよ。このビシュテ区画ならね」


「その先はどうですか?」


「いや、その先はどうなってるのか知らないんだ」


 彼女は気合が入っているようだった。


「じゃあ、開拓ですね!」


「今回はビシュテ区画だけだよ。何があるか分からないからね」


 彼女は口を尖らせた。


「分かりました」


 残念そうだ。だから、思わず言ってしまった。


「今度はビシュテ区画を出てみよう」


「本当ですか?! 約束ですよ!」


 念の為の武装はその時に彼女に追加すればいいだろう。


「早く行きましょう、エルさん!」


 彼女が先の方で僕に手を振った。

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