27、隠し事

 彼女がソワソワしていた。


 彼女には私室スペースがあるのだが、その近くを僕が通ると部屋から顔を出してすぐに引っ込んだり、いつもなら呼ぶとすぐにやって来るのに、「ちょっと待って下さい!」と返事が来たりする。


「ねえ、何か隠してる?」


 僕が尋ねると、マルは勢いよく、


「はいっ!」


 と答えてニコニコした。思わず、聞き返してしまった。


「えっ、隠してるの?」


「はい!」


 またキラキラした笑顔。


「隠し事があるって堂々と言うの斬新だね」


「え、隠し事があるって言っちゃダメですか?」


「普通は隠すと思うよ」


 彼女はハッとして、口元を押さえた。


「マル、何も言ってません」


 ここで秘密を探ろうとしたが、彼女の目が「何も聞かないで」と言っている気がして、黙っておくことにした。

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