24、燃えるような

 マルは食べ物を摂取する必要はないが、僕と一緒のものを食べたり飲んだりしたがった。


「見て下さい」


 お茶を飲んでいた彼女がピンク色の舌を出す。


「どうしたの?」


「火傷を感知しました」


 彼女の生体パーツは僕と違って細胞のターンオーバーによる修復は行われない。だから、火傷を感知するシステムを組み込む必要があった。


 見ると、確かに彼女の舌が火傷による炎症を起こしていた。


「だから冷ましてから飲んだほうがいいって言ったのに……」


「ごべんなたい」


 舌を出したまま謝る彼女だが、心なしか嬉しそうだ。


「火傷〜。えへへ」


「火傷したかったの?」


 彼女はぴょこんと頷いた。


「エルさんは火傷したことありますか?」


「もちろん」


 彼女は、知っている、と言わんばかりに満足そうにニコニコ顔だ。


 できれば怪我をしてほしくないのだが、彼女の笑顔を見ていると何も言えなくなってしまう。


「一緒です」

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