22、苦手なもの

「エルさんが苦手なものってなんですか?」


 彼女がそう問いかけてくる。


「なんだろうな……。君が苦手なものは?」


 彼女は恥ずかしそうに、上目遣いで僕を見た。


「……お料理、ですかね」


「もしかして、まだあのこと気にしてる?」


 そう言ったが、思い出した。彼女は記憶することはできるが、忘れることができないということを。


「ちゃんとデータベースを参照して、次は失敗しないように準備してますよ」


「そうか、じゃあ、今度また料理しようか」


 彼女は僕の服の袖を掴んだ。


「一緒に作りましょう。見守っていて下さい」


 僕は返事の代わりに言った。


「僕が苦手なものは、ひとりでいることかな」


 彼女が僕の腕にぴたりとくっついてきた。


「エルさんの苦手なもの、ないですよ」

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