16、ときめき

「野菜を収穫しに行こう」


 僕がそう言うと、彼女は両手を挙げた。


「わーい」


 最近、感情表現をよくするようになった。


「嬉しそうだね」


 準備をしている横でウズウズしている彼女にそう言った。


「野菜のカオス形状を見ると、不思議な感じがします」


「変わった理由だね……」


 育てているアルのことも大切にしているようだし、彼女は植物が好きらしい。


「計算しきれない現象が不思議です」


「計算できないものを見るとときめくのか」


 彼女が首を傾げる。


「ときめく?」


「そのことを思うと明日が楽しみになる、みたいなことだよ」


 彼女は目を丸くした。


「エルさんは野菜ですか?」


「どういうこと?」


 彼女は僕をまじまじと見つめる。


「エルさんのことを考えると、ときめきます」

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