15、以心伝心

「エルさんはマルのおとうさんであり、おとうさんでない」


 いきなり堅苦しい言い方をするので、彼女のことをじっと見つめた。彼女は僕を見返した。


「おとうさんって、どういう方ですか? みんなを作る人ですか?」


「有性生殖生物は、基本的にはお父さんとお母さんの間に子どもを産むんだ。だから、お父さんなしに子どもは産まれない」


「エルさんにもおとうさんはいますか?」


「なんとも言えないな」


 彼女は表情を変えないまま、応える。


「第17世代人工交配プロジェクトで産まれたんですね」


 彼女はデータベースで照会したのだろう。僕も工場で産まれた。だから、彼女と大差ない。機械かそうでないかの違いだけだ。


 マルはニコリとする。


「なんだか、エルさんもマルも似ていますね」


 これが以心伝心というやつなのだろうか?


 自分の頰が緩んでいるのに気づく。


「そうかもしれないね」

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