11、星の海で君と

 マルは窓際で星を眺めるのが好きらしい。今も窓に手を当てて、星の波動を感じているかのようにじっと動かない。


「君は星を見るのが好きなんだね」


 彼女はこちらを向いてニコリと笑った。


「しあわせです」


「そうか。よかった」


 窓の向こうには、星の海。


「少しさびしそうです」


 マルが僕を見ていた。彼女には、無数の表情パターンのデータをインプットしてある。僕の心の中を透かし見ることも容易だろう。


「寂しくはないよ」


 彼女は僕から目を離さなかった。


「マルがいますから、エルさんはさびしくないですか?」


 なんの他意もない瞳。


 いや、僕を案じているのかも。


 それともただの好奇心か?


「そうだね」


 僕が答えると、彼女が隣にやって来て、僕の手をそっと握った。温かい手だ。


「マルも、さびしくありませんよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る