7、最初の思い出

「うまれた時のこと、覚えていますか?」


 彼女の問いはいつも突然だ。


「さすがに覚えてないな」


「マルの最初の記憶はエルさんの顔です」


「僕が君を起動したからね」


 彼女はじっと考え込む。


「エルさんはマルの最初の記憶よりも前の記憶があるんですか?」


「まあ、そういうことになるね」


「マルは、マルが目覚める前からここにいましたか?」


「いたよ。ただ、君にはまだ意識がなかったから覚えてないだけだよ」


「マルはうまれる前からエルさんと一緒だったんですね」


「君のパーツひとつひとつができあがる時も一緒にいたよ」


 彼女は自分の手を凝視している。


「どうしたの?」


 振り向いた彼女の目がいつもより潤んでいるように見えた。


「エルさんと手を繋いでいたような気がします。そんな記憶がないのに」

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