1月31日

病んでいたのは、ここ三日間。

ほんとうに病んでしまうと、自分を見失ってしまう。

悪い癖だ。

別に、生きたい僕じゃなかった。

毎回、自分は何やってんだって思う。

どうして、こうも上手く生きられないんだろうって。

でも、思いっきり病んでみることもいいのかもしれない。


お風呂で、髪も身体も洗い終わって、追い炊きをしている湯船に浸かった。

ふたつの大きな丸い電気のうち、左のほうを見つめた。

見つめていた。

そうしたら、視界がかすんで、

何かを思い出したかのように頭がぐるぐると回りだした。

のどから声が出た。

「ああ、、、晴れた」

ほんとうに、それだけだった。

何かもやもやしていたものがなくなった。消え去ったのだ。

最初は、霧か靄が晴れたような、そんな感じだった。

でも、違った。

電気はどんどん輝きを増し、僕を飲み込んでいった。

そうだ。晴れたんだ。

ずっとずっと、僕の中に降り続けていた雨が。

もしかしたら、また病むのかもしれない。

また降りだしてしまうのかもしれない。

それでいいと思った。

また止んでくれればそれでいいって。


人は、ある程度深く考えたら病むものだと思っている。それでいい。

僕の尊敬している人たちは皆病んでいる。若いころに。

若いころに世界を嫌いになって、たくさん失敗して。そしたら世界は輝いて見える。

決してそんなことはなくて、何もないから歩こうと思うんだ。

走らなければ追いつけないから、走るんだ。

どんどん追い越していってやろうって思うんだ。

いつか絶対幸せになってやるって思うんだ。

確かに、歯医者の言葉は届かない。勝者の言葉しか見ていない。聞いていない。

一度幸せから思いっきり遠ざかって、幸せをつかむことができた人なんて少ないのかもしれない。

それでも、いい。

あの人たちは、一度死んだと言っていた。

肉体の死ではなくて、精神の死。魂の死。

そしてまた生まれかわればいいのだ。

新しい人生を歩めばいいのだ。

過去なんて今日からでいいのだ。


だから、さようなら。今までの自分

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世普 抄 川上世普 @ns74y

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