第10話 貞操帯は嫌だ

「貞操帯って……」

「リュートの世界にはないのか?」


聞いたことがある。

大昔、女性が貞操を守るためにつけてた、腰につけるベルトみたいなものだ。

現代だと、S◯プレイで使われるらしい。

俺は趣味じゃないから実物は見たことないけど……


「あるにはあるけど……」


特殊な趣味な人たちが使ってるだけだ。

そういう大人のお楽しみ以外に、使われない。


「……リュートはつけたことないのか?」


アリアさんは不思議そうな顔をした。


「普通はつけないよ。貞操帯なんて」

「そうか……なら、試しにつけてみるのもいいかもしれないな。持って参れ」


アリアさんが近くの侍女に命じる。


「俺は嫌だよ」

「まあそう言うな。案外、気に入るかも」

「絶対、無理です」


侍女が銀のお盆を持ってきた。

お盆の上に、水道の蛇口みたいなものがある。

金色で、横に鍵穴がついていた。


「これが貞操帯だ。しっかりリュートを守ってくれるぞ。つけていればサキュバス族に誘惑されても安心だ」

「……嫌だ。だいたい、トイレの時どうするの?」

「トイレ?ああ、そうか。リュート、この世界では男女でトイレは別れていないのだ。少ない男のために、わざわざトイレを作るのは大変だからな。安心しろ。トイレの時は私がついて行ってやる」

「…………え?」


俺は言葉を失った。

いくら男女比が1:10000になってるからと言って、男性用トイレがないのはひどすぎる。


「……リュート、大丈夫か?」


呆然としている俺を見て、アリアさんが心配そうな顔をした。


「リュート様、貞操帯をつけてください。万が一、リュート様の種がサキュバス族に搾り取られてしまっては、大変なことになります。どうかお願いです!国のために……」


フレアさんが深々と頭を下げた。


「……無理です。こんな金属を股間につけるなんて」

「うーむ……わかった。リュートを信じよう。リュートなら、サキュバスの誘惑になど負けないな」

「姫様。番を甘やかしすぎです。私の番など、3ヶ月も貞操帯をつけています」


健康な男子が3ヶ月も我慢させられるのは地獄だろう。

想像してだけで、股間がモヤモヤする。


「我慢させれば種もたくさん出るでしょう。無理矢理でもつけさせたほうが……」

「私はリュートの意思を尊重したい。夜、交わる時に頑張ってくれたらいい」

「……姫様がそうおっしゃるなら」


フレアさんは大いに不満げだ。


ふう……なんとか貞操帯は回避した。

本当にこの世界は何が起こるかわからない。


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