第8話 人を好きになったことある?

「姫様、外を出歩くのは危険です。民衆に見つかれば、大混乱になります」

「フレア。相変わらずそなたは心配症だな。変装していれば大丈夫だ」

「ですが……」


フレアさんは初夜の儀式の時に一緒にいた人だ。

何かとアリアさんに助言してるから、偉い立場の人みたいだ。


「いくら将来の国王候補とは言え、番を甘やしすぎです。国を治めていくのは姫様なのです」

「しかし……お互いに心から愛し合わないと、子が宿らないのだぞ。リュートに愛してもらうために、デートしなければ!」


俺とデートするのも、国のため、か。

アリアさんはお姫様でかわいい女の子だけど、恋愛とかしたことあるのかな?


「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」


俺は思い切って聞いてみることにした。


「アリアさんって、人を好きになったことあるんですか?」

「あるぞ。父のことも母のことも好きだし、フレアのことも好きだし、リュートのことも好きだ」

「そういう好きじゃなくて……好きな男性とか」

「父のことは好きだが」

「いや、だからそうじゃなくて……」


アリアさんは首をかしげている。


……どうしても上手く伝わらない。

アリアさんはお姫様だし、この世界は男が極端に少ない世界だから、もしかしたら普通の恋愛とかしたことないのかも。


「今更なんですけど、アリアさんは本当にいいんですか?俺と結婚しても?」

「古代竜の末裔と結婚するのが、竜族の掟だ」

「掟とか抜きにして、本当に俺なんかと……」

「……リュートは、私と結婚するのが嫌なのか?」


アリアさんはすごく悲しそうな顔をした。


「嫌じゃないですけど……」

「何が引っかかっているのだ?」

「もっとお互いを知ってから結婚したいというか」

「ふむ。そうか。私をもっと知りたいのか……しかしすまんな。結婚式はもう明日なのだが」

「え?」


……結婚式?

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