第6話 男はみんなヒモでいい

パチンっと、アリアさんが指を鳴らした。


「うわああああああああああああ!」


俺は炎のような真っ赤な光に包まれた。

身体が焼けるように熱い!


……何だ?

身体がずっしりと重い。

あれ?

俺の腕が真っ黒だ。手には赤い爪。

いったい何がどうなって……?


「リュート。窓を見ろ」


俺が窓を見ると、


「え……これは?」


窓に映っていたのは、ファンタジーの世界に出てきそうなドラゴン。

トカゲのような黄色い目、鋭い牙、大きな鼻腔がヒクヒク動いている。

もしかして……俺?


「……わああああああああああああああ!」


俺はショックで叫んだ。


「自分の真の姿を見るのは初めてか。これでわかっただろう?そなたは本当に古代竜の末裔なのだ」

「これが、本当の自分……」

「そうだ。そなたがその気になれば、一瞬で大陸ひとつ消滅させることできる。このハルモニアで、最強の存在だ」


ただの大学生だった俺が、大陸を消し飛ばすほどの力を持ったドラゴン……

信じることはできなかったけど、俺の姿はまさに、ドラゴンにしか見えない。


「……元の姿に戻るには?」

「そなたが念じればよい。元の姿を思い浮かべてながら」


俺は目を閉じて、強く念じた。

人間の姿、俺の仮の姿を思い浮かべながら。


再び赤い光に包まれた。

また身体が熱くなる。

……目を開けると、5本の指がある手が見えた。

よかった。元の姿にちゃんと戻れた。


「うっ……頭が痛い……」


頭がすげえガンガンする。

俺は右手で頭を抑えた。


「大丈夫か?急に真の姿になったから、魔力を消耗したのだ。聖水を飲ませてやれ。」


侍女のロゼさんは、小さなビンを持ってきた。   


「リュート様。お飲みくださいませ。」


ロゼさんが聖水を飲ませてくれた。

頭の痛みが少しずつ引いていく。

楽になってきた……


「……リュート。竜族の掟では、古代竜の血を受け継ぐ者が、王になる。そなたはドラカリス王国の王、すなわち竜王となるのだ」

「俺が、王様……」

「まだ王国候補だがな。姫の私と番になり、世継ぎを作れば、正式にそなたは竜王になれる。と言っても、そなたしか候補はいないが」


こないだまでコンビニでバイトしていた大学生の俺が、一国の王様になる……

うっ!また頭が痛くなってきた。


「リュート……そなたを召喚したのは、世継ぎがほしいからだ。古代竜の血を受け継ぐ者が、みな死んでしまった。このままでは、プリマロード王家は滅びる。それに、隣国のサキュバス族——エロティカ帝国が我が国を脅かしている。国を守るために、そなたの持つ竜の血が必要なのだ」

「国のために、俺とアリアさんの子どもが要ると?」

「そうだ。なんとしてもな」


……かなり面倒くさそうな事情だ。

いきなり、国のために子作りしろって言われても。


「で、俺は何をすればいいのです?」

「そなたがやることは、私と毎晩交わること。それだけだ」

「それだけ?」

「……そなたのいた世界では、男が女を養うらしいが、ここでは逆だ。女が男を養うのだ。女よりも男のほうが貴重だから」

「男は、ヒモでいいってこと?」

「ヒモとは何のことか知らぬが……ハルモニアでは、男は10000人に1人しか生まれない。女たちは数少ない男を奪い合っているのだ」


どうやらハルモニアは、男女比がかなり偏っているらしい。

男女比は、1:10000ということになる。 

男はかなり貴重な存在……だから、俺みたいな陰キャでもモテるのか。


「リュートの世界では逆らしいが、ハルモニアでは女が男を襲う事件が多い。だからそなたの貞操を守るために、護衛の騎士をつけたい」

「マジかよ……」

「セリス!入って来い!」



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