第5話 そなたは古代竜の末裔だ

「……もう帰れないってこと?」

「そうだ。元の世界には戻れない。それに、そなたは私と結婚したのだからな」

「結婚?」

「そなたの左手の薬指を見ろ」


これは……

俺の左手の薬指に、銀の指輪がついていた。

言われるまで、気づかなかった。

……てか、アリアさんと結婚?


「そなたの世界では、結婚した男女は左手の薬指に指輪をつけるのだろう?」

「どうして俺の世界のことを知ってるんですか?」


ご飯と味噌汁の朝食も、結婚指輪も、俺の世界のことを妙に知っている。


「実は昔、リュートと同じ世界からこちらの世界――ハルモニアへ来た者がいてな。その者が残した記録を見て、なるべくリュートがこの世界に馴染みやすいようにしたのだ」

「以前にも、ここに来た人が……」

「もう何十年も前のことだが」


以前、俺以外にもこの世界に来た人がいたのか。

しかも、同じ日本人らしい。


「で、その人は今どこに?」

「残念ながら、病で死んでしまった」

「そうなんですか……」


同郷の人と会えると思ったのに、すげえショックだ。


「で、俺をこの世界に呼び出した目的は……?」


わざわざ別の世界から、俺を呼び出した目的は何だ?

かなり大変な事情があるに違いない。


「リュート……そなたは、古代竜の血を引いているのだ」

「古代竜?」


想像よりもだいぶ壮大な話になってきた。


「今から1000年前、ハルモニアは魔王に支配されていた。それを救ったのが古代竜だ。そなたは古代竜の血を濃く受け継いでいる。古代竜の末裔だ」

「いや、いやいやいや……そんなわけないでしょ。何かの間違いですよ。俺は別の世界で生まれて、普通の日本人として生きてきたんです。まさか、そんな、古代竜の血を受け継いでいるわけない……」


あまりにも話がブッ飛びすぎている。

俺は平凡な人間だ。こないだアリアさんのおかげで童貞は卒業したが、ただの量産型陰キャ大学生なのは変わりない。

そんな俺が、古代竜の末裔なわけない。


「古代竜は魔王との激闘の末、そなたの世界に飛ばされてしまったのだ」

「……要するに、1000年前に俺の世界へ飛ばされた古代竜が、俺のご先祖様だってことですか?」

「そのとおりだ。私も古代竜の末裔だ。昨日、リュートと交わった時、確信した。まさに古代竜の血を受け継ぐ者だと……」


ただの思い込みのような気がするんだよなあ……

俺がそんなご大層な存在なわけない。


「……信じてないな。なら、そなたの真の姿を見せてやろう」

「え?」



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