魔王軍の落ちこぼれ四天王に転生したので最弱なりに知恵で勇者たちを倒してたら魔王女に惚れられました。他の四天王たちには悪いんだけど多分あと1000年はお前たちの活躍は無いと思う。
第20話 無自覚美少女 × 距離感男友達 = そんなん好きになるやろ
第20話 無自覚美少女 × 距離感男友達 = そんなん好きになるやろ
……やった。
やってしまった。キスしてしまった……よな?
「っ⁉ っ⁉ っ⁉」
うん、正面で顔を真っ赤に、目を白黒させて酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせているゼルティアの様子を見れば一目瞭然だな。俺は……勢いに任せて告白&いきなりキスをしてしまった。王族相手にこんなマネ、場合によれば斬首不可避だ。
「……あ、あのー、ゼルティア様」
「はっ、はいっ⁉」
「えっと、今のはですね……」
「じ、事故かっ⁉ し、ししし、知ってる! 事故なんだよなっ⁉」
「いえ、故意です」
「恋っ⁉」
ゼルティア様パニクってんなぁ……まあ、うん。故意でも恋でも今回の場合はそんなに変わらないけどさ。
……だって、この超絶美少女ゼルティア様が相手だよ? そんな彼女が、勇者を相手にしてる時から、なんだかんだずっと側に居てくれて俺のこと思いやってくれるんだよ? こちとら恋愛経験ほぼ無しの男だぞ? 恋に落ちないわけがなくないか?
でも、どうやらそんな理屈はゼルティアには通じないようだ。なにせ美少女といってもこの魔王女……完全なる【無自覚美少女】なんだから。
「そっ、そんな……アリサワが私に、恋……? あり得ん。いきなりキ、キスしたのは許してやる……だからもう、からかうんじゃないっ!」
「いや、本気ですが」
「本気なワケあるかっ!」
ゼルティアが俺から離れようと、体をよじる。
「こんな……こんな四六時中、剣の稽古に明け暮れてるような筋肉バカのどこがいいというのだ! 城の口さがない魔族どもからは『戦狂い』だとか『鬼女』だとか、『男に生まれた方がよかった』だとか……私は、そんな陰口を叩かれる女だぞっ!」
「だから、それ全部込みで好きだって言ってるんです!」
「っ⁉」
ガッチリと、俺はゼルティアの両肩を掴んで離さない。
「腹筋割れてる女の子めちゃくちゃかっこよくてエロくていいじゃないですかっ! それに『戦狂い』? 二つ名みたいで最高! それとゼルティア様は男に置換はできませんっ! だって『男っぽい』っていうよりは『
「え、えろ可愛……⁉ あ、あねご……⁉」
「だいたい、元が美少女なんですからちょっとやそっとの奇行で女の子として見れなくなるワケがない! そしてそんな美少女に気安く肩を組まれたり抱き着かれたりする男の、俺の気持ちを考えてくださいっ! 惚れないわけがないでしょうがっ!」
「えっ、えぇぇぇっ⁉」
うむ、どうやら本気で驚いているらしい。ゼルティアの顔が今にも燃え上がりそうだ。
「そ、そんな……だって仲間とかそういう間柄ではあれくらいのスキンシップが普通って、物語には書いてあったから……」
「男同士や女同士でならねっ⁉ ゼルティア様みたいに発育の良い女の子が引っ付いてきたら、俺に限らず男の子はドキドキで心臓破裂しちゃうからっ!」
「はっ、はついくっ!」
あと、主に下半身があられもない姿を見せる羽目になる……とまでは言わない。さすがにセクハラが過ぎる。
「そ、そうか……私は知らずのうちにアリサワに迷惑を……す、すまなかった」
「いえ、嬉しいんでもっとやってください」
「いや、今しがた心臓が破裂しそうだとか言ってなかったかっ⁉」
「それはそれ、これはこれです」
ホントそれなんだ。いろいろ大変なのは確かだけど、くっついてもらうのは嬉しい。これ、世の中の8割以上の男の意見だと俺は信じてる。
「とにかく、です。分かってくれましたか? 俺が本当にゼルティア様のことを好きって気持ちを」
「う、うむ……よく分かった。まさか、アリサワが私のことをそんな性的な視線で見ているとは、夢にも思わなかった……」
「……いや、それには語弊がありますね?」
性的な視線て。いやまあ否定はしないんだけどたぶんいろいろ勘違いされる言い方じゃない?
「だって、アリサワ……私のことを『エロ可愛い』とか、『発育が良い』とか……もう、完全にそういう目じゃないか……」
「……あれぇ?」
自分のこれまでの発言を思い返す……あれれ? 確かになんか俺、めちゃくちゃエロ親父みたいなことしか言ってなくね……? 『美少女に肩を組まれて発育の良い体が当たって嬉しいぜヒャッホイ!』的な……。
「い、いやいやいや、誤解です! ゼルティア様! つい先んじてそういう部分も口走ってしまいましたけど、俺の本心としてはゼルティア様の心優しさとか、そういうところもすごく好きで……!」
「いや、よい。よいのだアリサワ……その、私は純粋に嬉しかったのだから」
「……えっ?」
ゼルティアがなんだかウルウルした、熱っぽい目でこちらを見ているのは……気のせい、ではないよな?
「私はたぶん、心根では気にするところもあったのだ。自分が女らしくないということに。もちろん、剣を極めたいという想いに嘘はない。だが……同時に女としての劣等感があったのも事実だ」
「ゼルティア様……」
「だから、嬉しい。こんな私にも性的な魅力を感じてくれる男がいるということが、好意を向けてくれる男がいるということが。そしてそれがアリサワであるということが、たまらなく嬉しいんだ……」
ギュッと、ゼルティアが俺の両手を掴んだ。
「隣に座れ、アリサワ」
「は、はい……」
ゼルティアの座っているそこはひとり掛けのソファだ。大きめとはいえ、ふたりで座るとギュウギュウになる。当然、俺とゼルティアの体が密着する。柔らかで温かな感触が、俺の二の腕に伝わってくる。
「……その、ゼルティア様……当たってますよ……?」
「……当てているのだ。わざと。これは、本当に嬉しいか……?」
「っ⁉ はっ、はいっ! う、嬉しいでスっ!」
「そ、そうか……」
ギュギュっと。ゼルティアが体を寄せてくる。……自分の腕が、邪魔だ。俺はゼルティアと接する側の腕を、ゼルティアのその細い腰へと回した。
「……アリサワ、こういったスキンシップも、その、普通は男同士や女同士の友達の間柄だけでやることなのだろうか?」
「男同士、女同士、男女に限らず……友達以上の間柄でやることかな、と」
「嫌では、ないか?」
「ぜんぜん。むしろ、幸せいっぱいです」
「それならよかった……」
ゼルティアが縋り付いてくるように体を預けてくる。
「ありがとう、私のことを好きと言ってくれて……ただな、まだアリサワには話しておかねばならないことがある。少し、私の話をしてもいいだろうか……?」
もちろん、俺は頷いた。
「ありがとう、アリサワ。これは……私と、魔王という象徴にまつわる話でもある」
落ち着いた、真剣な口調でゼルティアは切り出した。
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