第15話:結果発表
脱出に成功すると、すぐ18時がやってきた。
大きなモニターの前に4人で並ぶ。
今回は
「みなさん、存分に楽しんでいただけたようでなによりです」
「楽しいとかそういうことなの? あれ。結局中間発表以降、一回もシンと遊んでないわよ。そこのビッチちゃん以外、ポイントに変動もないでしょ?」
極めて不愉快そうにユウが吐き捨てる。
「びっちって言ったぁ!? りぃも被害者なんだけどぉ!」
「
「それでは、発表しましょう。まず、こちらが中間発表の時の点数です」
大型ディスプレイに先ほどのポイントが表示される。
「問題はリアがどれくらいポイントを稼いだか、ね……」
「では、まずは、目黒莉亜様のポイントを発表します」
莉亜が手を組む。
「目黒莉亜様……400pt」
「えぇ、変わらないのぉ!? なんで!? りぃ、真一くんにおっぱい触られたのに!?」
「言い方!」
あとギリギリ触ってない!
莉亜は俺の濡れた服を掴んで前後に揺さぶる。
「どぉして、りぃといた時にハッピーホルモン出てないのぉ!? え、本当に嫌だったのぉ!? そんなことあるぅ!?」
「いや、多分ハッピーホルモンは出てたと思う」
「じゃぁ、どぉして……!?」
脇に立つ神田がにやり、と口角を上げた。
「そりゃそうだよ、目黒」
「へ……?」
「中間発表の直後、平河とわたしは、スマートウォッチを交換していたからね」
「えぇ……!! 真一くん、どぉしてそんなことしたのぉ!?」
「それは……」
すがりついてくる莉亜。俺は腕組みをして、仁王立ちではっきり宣言する。
「俺がガチの童貞だからだ!」
「「……?」」
「あははは……!」
あまりの宣言にポカンとするユウと莉亜。目尻をぬぐいながら爆笑する神田。
「俺は、このテストで、『誰と一緒にいるのが楽しいのか』ということと、『みんなのこの留学に来た真意』が知りたかったんだ。でも、誰かに色仕掛けをされた瞬間、その両方が出来なくなる恐れがあった」
「かっこいいのかダサいのか分からないわね……」
「そして、誰かが、ていうか莉亜が仕掛けてくるだろうこともわかっていた。ハッピーホルモンを分泌させるには最適な作戦だし、莉亜はビッグライトニングマウンテンの出口でそれを試していたから。だから、神田にスマートウォッチの交換を頼んだんだ」
ユウのツッコミを無視して説明する。
「で、どうして玲央奈ちゃんにぃ……?」
「萌え袖で隠せるからだ。普通の制服だと手首は出てるからバレるだろ」
「それだけぇ!?」
「それだけってことはない。神田は元々、スマートウォッチを俺と交換して、自分と過ごす時にだけポイントが入るような作戦を立ててたんだ」
「ずるぅっ!?」
莉亜が目を剥く。ずるいのは莉亜もだけどな。
「ホーンテッド・パレスで怖がってる演技して平河にくっついて、その隙に入れ替えようと思ったんだけどね。すぐにバレちゃった。そのためにジャージを着てたんだけどなあ。おかげで一日中ジャージでディアスリーにいないといけなくて恥ずかしかったよ」
「その割には表情に出ないのね?」
「女優だからね」
「すごいじゃない……!」
ユウが素直に感心している。良いやつかよ。
「で、その作戦を止めて、失格にさせない代わりに、一回だけスマートウォッチを交換してくれって頼んだんだ」
「うへぇ……」
感心すればいいのか怒ればいいのか迷った様子の莉亜の脇で、ユウが挙手する。
「でも、結果として、レオナとアタシの勝負はフェアに行われてるってコト?」
「そのはずだ」
「じゃあ、このあとの発表も変化なしってコトじゃない」
それはたしかにそうなる。おそらく、神田が勝ち上がることになるだろう。……体操着効果で。
「では、発表してもよろしいでしょうか?」
十条さんが差し込む。
「神田玲央奈様……1200pt」
「ほら、さっきと一緒だわ。レオナの作戦勝ちってコトね……」
そう言って肩をすくめるユウに、十条さんが言う。
「渋谷ユウ様……1500pt」
「「「……え?」」」
ユウ、莉亜、俺が共に首をかしげる。
「レオナ、どうして? スマートウォッチはあんたが付けずに持ってたんでしょ? 動くはずないじゃない!」
「いやあ、それが……笑わないで聞いてくれる?」
眉をハの字にして笑った神田が説明する。
「平河からスマートウォッチを預かってさ。そのままカバンに入れておけばよかったんだけど、なんというか……彼氏と時計交換するのってどんな感じなんだろうって思ってちょっと付けてみたんだよね」
「玲央奈ちゃんの彼氏じゃないけどぉ?」
「彼氏と時計交換するのってどんな感じなんだろうって思ってちょっとつけてみたんだよね」
なぜか同じことをもう一度言う神田。
「そしたら、なんかよく分からないけど嬉しくなっちゃって。で、その時一番近くにいた渋谷にわたしが分泌した分のハッピーホルモンが加算されちゃったってことみたい」
照れ笑いをする神田。
「神田、そんな風に……」
「あはは、恥ずかしいね。あ、スマートウォッチ、返しておくね」
ジャージの下に着けていたらしいスマートウォッチを外して、俺に返してくれる。
「なぁんか、勝負に負けて試合に勝ったって感じだねぇ……?」
勝負にも試合にも負けたらしい莉亜の呟きが、閑散とした遊園地にぽつりと鳴り響いた。
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