第3話 ライトはパパ活中?
カミュアとアーリーンは早速人間界に向かう。もちろんあの不思議なエレベーターを使って。
エレベータにスイーツフェスに行きたい! と伝えると、会場に直通で案内された。正確にいうと会場の脇にあるスタッフルームの扉がエレベーターと直結していたのだ。なんとも便利でなんとも不思議なエレベーターである。
周りを見渡すと、会場
「うぁ~すごーい♪」
カミュアの目が輝いている。なんとかカミュアに
「ねぇ~あの人モデルかなにかかなぁ~?」
「超かっこよくない?」
「かっこいぃ~」
アーリーンもイケメンの部類にはいる。学園ではアーリーンのファンクラブがあるとか、ないとか噂されているくらいだ。
今日のアーリーンは、カイトを見習って丸いサングラスをかけて、サマーニットを
アーリーンとしても容姿を褒められるのは
カミュアはすでにいくつかチョコレートや焼き菓子を購入し、今は行列に並んでいる。
天使が人間に混ざって行列に並んでいると思うと
アーリーンはお財布の中を確認する。
人間界の通貨は、ストーンに溜まったポイントで交換することができる。今回はそのお金で買い物や飲食をすることにしていた。今時現金でのお支払いというのは人間界では古いのかもしれないが、仕方ない。支給されたスマホはこのために使うものではないからだ。
「ねぇ~アーリーン。シュークリームを買ってみたんだけど、一緒に食べないか?」
「お、いいね」
行列に耐えてお目当てのシュークリームをゲットしたカミュアが上機嫌でアーリーンの元へ戻ってきた。
二人はゆっくり食べれる場所を探し、会場の近くにあるベンチに腰をかけた。さっそくカミュアが購入したシュークリームを取り出す。今回は2個あるから安心してよ。とドヤ顔でアーリーンにシュークリームを渡す。
別に1つを分け合いながら食べるでもよかったんだけどなーとアーリーンはちょっぴり不満顔。
アーリーンはシュークリームを頬張りながら、人間の行動に目を向けた。この中には、善良な人間と、悪意に傾いている人間がいる。もちろんどちらでもない人間もいる。
例えばあそこ…、少し遠くで小さな男の子が転んで、手に持っていたアイスクリームをぶちまけガン泣きしている。男の子は側にいる男性の足にけ
こんな感じで、神と悪魔のバランスは成り立っているのだ。
「アーリーン食べないのか?」
「いや、うますぎて感動してた」
「だよね~。僕このシュークリーム気に入ったよ。あとでパパたちの分も買って帰ってあげようよ」
「あぁ、そうだな」
アーリーンはカミュアの優しさに癒されていた。やっぱりカミュアは可愛いよな~と改めて思っている。そのカミュアは、鼻の頭にカスタードクリームをたっぷりつけてシュークリームを美味しそうにパクついていた。
「カミュア、鼻。鼻の頭にクリームついてるぞ」
アーリーンは思わずカミュアの鼻の頭を触りそうになって、慌てて手を引っ込める。ここは人間界だ。気を付けろ、カイトの声が聞こえる気がする。
アーリーンがそんなことを思いながらシュークリームを食べようとした時、見慣れた男性の姿が目に入った。
少し遠くにあるオープンカフェにライトが座っているのだ。ライトだけじゃない。向かいの席には、可愛い見たこともない制服を着ている女の子が座っている。なんだか仲良く話をしているっぽい。
「ライト?」
「えっ?」
鼻の頭のクリームを拭いながら、カミュアもライトの存在に気づく。
「あれ、ライトだよ。行ってみよう!」
「ちょっと待て。よく見ろ。あの女の子にお前~見覚えあるか?」
「女の子?」
アーリーンがカミュアの袖を引っ張ってもう一度座らせる。そしてライトを観察していると、すごく楽しそうだ。あんな笑顔のライトは見たことがない。毎日毎日カミュアと寝食を共にしていて、男としてのフラストレーションを人間界で晴らしているのではないか!? とアーリーンの妄想は爆発する。
「見たことないな~。ライトも以前は人間だったってママが言ってたから、関係者かもしれないよ?」
ライトがルーナの元へやってきたのはだいぶ前のはずだし、人間の生命が終わってからすぐにルーナに拾われるとは思えない。と…、ということは?
カミュアは手についたクリームを愛おしそうにペロペロしている。ライトに興味はないのか?と聞きたい。もっとカミュアのことを見ていたいが、今はそれどころではない。ライトが何をしているのか、興味はそこにある。
「あれは?」
「何々?」
ライトが封筒を女の子に渡している。女の子も嬉しそうに受け取っている。ちょっとまった!これは、これはもしや、ぱ、ぱ、パパ活というやつなのか!?
アーリーンの妄想は完全によからぬ方向へ振り切られる。
「アーリーン。ライトも今日は休みなんだし、何していても僕はいいと思うよ。そっとしておいてあげようよ」
「う…」
主人(?)のカミュアがそう言うなら、アーリーンがとやかく言うことでもない。アーリーンは何かすっきりしないものを感じていたが、カミュアは別の行列店に興味が移っている。
「あっちのお店も行ってみよう!」
「それもいいけどさー、シュークリームのお土産並ぶんだろ?」
カミュアが今日一番のかわいい笑顔でアーリーンを見つめている。もちろん顎に指をあてて。
「はい。俺が並ぶのね(涙)」
「ありがとう~♪」
「後でさっき来た扉の付近で待ってて。僕はあのお店を覗いてくるよ。確か~クニャーネっていうお菓子みたいだよ。ザクザクなパイ生地の中に甘すぎないカスタードクリームがたっぷり入ってるんだって。想像しただけで、美味しいってわかるよね~~~。アーリーンの分も買ってくるから心配しないで!」
いつの間に手にいれたのか、会場マップを片手に店舗の物色をしているカミュア。アーリーンにシュークリームの買い物をお願いして、クニャーネに向かってウキウキで去って行った。
クニャーネに負けた…。俺はいつになったらカミュアにとっての1番になれるんだろう。と本気で悩むアーリーン。
それでもカミュアのお願いの為にカミュアの笑顔の為に、シュークリーム店の行列に並ぶのだった。
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