5-7 やりゃあできるんじゃねえか

 その瞬間、スカーレットの心臓が跳ねた。

 限界に悲鳴を上げていた体が。その一瞬だけ軽くなる。


 視界がパッと、広がった気がした――その中に迫る敵がいる。


 一線級の護衛騎士、ニール。彼の体を奪った敵が、突進と共に必殺の剣を突き出した。体勢低く飛び込んだこちらを、顔面から床へ縫い付けるように、上段から。

鋭い一撃が、地を這い低く飛び出したスカーレットを狙う――


「死ねぇぇぇえええっ!!」


 絶叫。息吹、煌めく刃。

 その紙一重を――スカーレットは見切った。


 上体を跳ね上げ、剣の上を滑るように。ニールに飛びかかるように跳んだ。

 体の真下を刃が通る。跳躍が足りずに、剣は胸を裂き左の太ももを貫くが――スカーレットはその全てを無視した。

 飛び込んだ先には、驚愕に歪む生首がある。


 必殺を確信し、勝利を疑わなかった顔――今は敗北の恐怖に怯え、愕然と目を見開いている。

 その顔を見つめながら――スカーレットは、ただ呟いた。



 そして放つ一閃が、敵の生首を跳ね飛ばした。

 悲鳴は聞こえなかった。命乞いも、恨み言も。どしゃりと自分が床に落ちる音。聞いたのはそれだけだった。


 ニールの首から落ちた表情のない顔は、一度だけ悲鳴を上げるような形に変形した後で――だが何の前触れもなく、唐突に消えた。

 本当に、消えた。跡形もなく。何の痕跡も残さず。そして……ニールの体が傾ぐ。

 気を失ったように、そのまま彼の体は床へと落ちていった。


 その姿を、スカーレットは床に倒れたまま見つめていた。

 押し寄せてくる脱力感に、もう体が動かない。ダメージは深刻だったが、特に問題なのは太ももだった。ニールが貫いた剣がまだ突き立っている。かろうじて動脈は避けたようだが、引き抜けば血が溢れるだろうことは容易に予想がついた――


「スカーレットっ!?」


 と、ジークフリートの短い悲鳴。彼はこちらの名を呼ぶと、慌ててこちらに駆け寄ってきた。倒れたまま動けないこちらの傍まで寄ると、膝をついて覗き込んでくる。

 その顔が今にも泣きそうな間抜け面だったから、思わずスカーレットは笑ってしまった。

 かがみこんでいる彼の胸元を拳で叩いて、もう一度告げる。


「いい声だったじゃねえか……あれが、鼓舞か? いい気つけになった。ありがとよ……」

「バカ!! そんなことはどうでもいい! それより、これ――足……!!」

「抜くなよ。抜いたら、血が、溢れる……そうなったら、本気で死ぬ、かもな……」


 実際に抜こうとしていたのだろう。告げると怯えたように、ジークフリートが動きを止めた。もし道具があるなら――そして余力があったのなら、確かに抜いても問題はなかった。だが対処のしようがない今は、そうしておく他に処置がない。

 それより問題は、この後のことだった。

 ジークフリートは問題ないが、ツェツィーリアは気絶しているし、何より何かされたのか、衰弱している。彼女はジークフリートが背負っていけば逃げられるが、そうなると二人を守る者が誰もいない。そしてスカーレットはもう動けない……


(助けを待つしかねえか? それとも、ニールを叩き起こすか……こいつもこいつでケガしてるんだよな。人一人背負って動けるか――)


 スカーレットが切り裂いたのだ。とはいえ致命傷にはならなかった。その内動けるようにはなるはずだが……

 と。


「お、い……スカーレット、あれ――」


 青ざめて、恐怖に引きつったジークフリートの声。

 彼が見ている先を、どうにか動く眼だけで追いかけて――スカーレットも、驚愕に息をひきつらせた。


「――にが、すと……思う、のか?」

「な……?」


 思わずゾッと。響いた声に怖気が走る。

 部屋の中央――描かれた魔法陣の上に、いつの間にか人影が一つあった。ニールではない――彼はスカーレットの隣で倒れたままだ。

 そこにいたのは、ローブを着込んだ老人だった。いや、老人とも言い難い。その男の顔には何もなかった。真っ黒な闇が張り付いて、かろうじて顔の輪郭を保っているだけだ。


 ただしもう、長くはないだろう。切り裂かれた胸、そして両断したはずの首から、とめどなく何かがこぼれだしている。黒くよどんだ、粘着質の液体が。

 おそらくはそれがこの生き物の血なのだろう。人間ならば、即座に気を失うほどの血がこぼれ出ても……その男は気にも留めない。


「もはや、完全な儀式は叶わぬが……贄は、そろっておる。もはやこれ以上、遅れてしまうわけにはいかぬ……もはや、このまま始めるしかない……!」

「お前……!!」


 スカーレットはもう動けない。ジークフリートが、代わりとばかりにスカーレットの持つ斧を奪って、構えた。

 だが男はその何もかもに、一切取り合わなかった。自身の出血も含め、何もかもを無視して――声でさえ衰弱を始めているのに――独り言のように呟くのをやめない。


「それでも――諦めるものか!! 我らにとってはっ!! 死ですら救いにはなら――」


 その声を、唐突に遮って。

 ポヒュンと一つ、間の抜けた音が辺りに響いた。


「……あ?」


 これは、その音に驚いた男の声。彼自身、予想だにしない何かが起きたのだろう――視線は、部屋の中央に描かれた魔法陣へと注がれた。

 中心に生贄としてツェツィーリアを寝かせていた、広大な魔法陣。先ほどまでは何もなかったはずのそこに――


 


 本当に、ただの腕だった。異様に真っ黒いという、ただそれだけの。それが今は、手のひらを大きく開いて――生えている。

 スカーレットが考えたのは、それが誰の腕かということだった。

 その腕が――出し抜けに、男を掴もうと伸びた。


「……は?」


 その声を上げたのも、また男だった。どうして自分を掴むのかと――声に驚愕の色を混ぜ込んで。

 だが異変はそれだけでは済まされない。


 腕が現れたのと全く同じ唐突さで、魔法陣が真っ黒に染まった。

 長大な円がインクで満たされたプールのように変質する。その内部から現出したもの、それもまた腕だ。ただし異様に長い。人の腕を二倍にも三倍にも達するような長さで――いや、違う。

 その腕は、明らかに伸びていた。まるで水あめのように――音もなく伸張し、捕まえていた男に殺到する。

 顔を、腕を、肩を、足を。何もかもを鷲掴みし、腕は魔法陣だった闇の中に男を引きずり込む。


「――おやめください、我が神よ! どうして儂を!? 神――おお、神、我が神よ!? どうし――」


 男が悲鳴を上げても、その腕たちは殺到することをやめなかった。最後には全身を腕に包まれて――としか言いようがない――最後にはワニが得物を沼に引きずり込むように、魔法陣の闇へと消える。


「――どうして――」


 それが男の、最期の言葉になった。

 ――そして代わりのように響いた声は、これだった。


「――――カット」


 最初は一音、ただ静かに。

 だが宣告するように強く――


「カット、カット、カット――カットカットカットカットカットカットぉッ!!」


 そしてその声は、その勢いも声量も次第に発狂したように高まっていった。

 若い――先ほどの男と比べればはるかに若い、男の声だった。魔法陣が作った闇のよどみの中から放たれた声は。


 そのよどみの中から、飛び上がるようにして飛び出してきたのは――若い男だ。

 ただしなんと言うべきか。一言で評するならば、何もかもが異様な男だった。

 長身の屈強な大男。闇色の髪は腰に至る程に長く、だが不思議と魅入られそうなほどに綺麗な光沢を浮かべている。

 顔の造形は異様なほどに整っている――女と見間違うほどだが、浮かべる表情は明らかに男のそれだった。眉根を寄せ、歯を隠しもせず、わけがわからないとキレている。


 だが真に恐ろしく感じたのは、彼の瞳だった。吸い込まれそうなほどに真っ黒な色をした瞳――その瞳を、“彼”は知っていた。

 今から十年前、“彼”が“スカーレット”になる前に見た邪龍と同じ――


「な、ん――」


 ジークフリートは突然の闖入者に、何か言おうと身構えたようだが。


「カットだよカット!! カットだよ、ええ!?」


 その男はジークフリートの言葉などまるっきり無視して、怒りの形相で声を荒らげた。


「困るんだよ姫君ぃ!! どうしてこんなどうでもいいところで脚本を狂わせるんだ!? 何十も何百も繰り返して、飽き飽きしてるんだよこんなところは! 原点だからってこんなところズラしたって大した変化は起きないって君も――……」


 矢継ぎ早に放たれていた怒りが、ふとした拍子に止まる。


「……おんや?」


 男は何やら奇妙な物でも見たというように首を傾げると、現れた時と同じ唐突さで、スカーレットたちに近寄ってきた。

 ジークフリートがかばうようにスカーレットの前に立つが、意にも介さない。

 覗き込むようにスカーレットを見やって――ぽつりと、こう言ってくる。


「……誰だね? 君。我が姫君ではないね?」

「……そういうテメエが、邪神とやらか?」


 正直に言えば――

 予想していたものとはかなり違った。具体的なものを想像していたわけでもないので、なにがどうとは言えないが。


 少なくとも、その男は話ができるようだった。神話で語られる神々のような厳かさがあるわけでもなければ、超然とこちらを見下してくるわけでもない。怒ってはいても敵意は見えない――この世界を滅ぼしたがっているような憎悪も。


 だが、立ち上がらなければならない。この男が敵なのなら。

 震える体を無理矢理起こそうとして――だが、体が動かない。深刻なのは、やはり足だった。剣の刺さった足はもう痛みさえ感じない。


「あー……やめときたまえよ」


 それでもどうにか立とうとするのを、まさかの男に止められた。


「その闘争心は嫌いじゃないがね。流石に姫君の体をそこまでボロボロにされると、私としても思うところがあるのだよ。一応は私にも、共感という概念くらいはあるのでね」

「……知り合い、なのか?」


 愕然と訊いてくるジークフリートの質問は、こんな時だからか、いっそ滑稽に響き渡った。

 なわけあるかと吐き捨てる。実際に、“彼”とこの男は知り合いではない。そこは男も素直に同意してみせた。


「知り合い……ではないねえ。他人の空似ではないという確信はあるのだが。どうやら、この姫君は我が姫君ではないらしい。顔は一緒なんだがね……ところで」


 と、今更気づいたように、男はジークフリートに告げた。


「その斧を下ろしたまえよ。物騒だ」

「だ、だが! お前は、邪神なの、だろう!? だ、だったら――」

「――


 瞬間。


「ヒッ――」


 ジークフリートは悲鳴と共に、腰を抜かして床に転んだ。

 何をされたのかは見ていなかったが、何をしていたのかは見ていた。男はジークフリートの目を覗き込んだだけだ。それだけで……ジークフリートを支配した。恐怖で。

 それで悟った。ジークフリートの使う“畏怖”。それと同質の力だ。ただし男は王ではない。神だ。根源的な生物としての差をまざまざと見せつけられて、折れた。


 それっきり、男はジークフリートから興味を失ったようだった。

 辺りを見回して、唇に手を添えながら呻く。


「それにしても……どこだねここは。空気もいつもと違うし……何やら時期もずれているようだし。姫君は我が姫君じゃないし、無能は腹が立つから食べてしまったし。どうも、思った以上に今回は脚本が狂っているようだ……ふむ?」


 と。

 辺りを見回すのを唐突にやめると、男は虚空の一点を見つめて話しかけた。


「何をしたんだね、我が姫君。随分と脚本を滅茶苦茶にしてくれたみたいじゃないか」

『…………』


 確信をもって男が睨んだ先……スッと音もなく、あの女が姿を現す。

 見上げる角度では女の表情はうまく見えない。だが“邪神の花嫁”と呼ばれていたはずの女は、決して男に恋慕の情を抱いた顔などしていなかった。

 明確な敵意とはまた違う――それでも拒絶を女は口にする。


『これ以上、私はあなたに従わない』

「ふうむ? 悋気かね? それとも反抗期かね? 倦怠期を乗り越えるため――というわけでもなさそうだ。何を考えているのか、訊いても?」

『もううんざりなのよ。疲れたの。私が“私”をやめたくなるほどに……それでもきっと、あなたたちは聞く耳なんて持ってくれなかった。だから実力行使に出た。それだけよ』

「ふむ……その結果、君の身代わりをよこしてくれたと? ふうむ……」


 唸り声をあげて、また考え込むように男は唇に手を沿える。

 だがすぐに結論を出すと、あっけらかんと言ってみせた。


「まあいいだろう、我が姫君。最初の頃はともかくとして、君はこれまでいい子にしてくれたし、私のお願いもよく聞いてくれた。花嫁というのは伊達ではなかったのだよ。その程度には私は君を好きだった……だがね?」


 その眼が不意に、ぎょろりと動いて“彼”を見る――

 何もかもを超越する神の眼で。闇色の眼と共に男は囁いた。


「――新しい子も、随分と美味しそうじゃないか?」

「――っ!!」


 咄嗟の判断が“彼”を救った。

 最後の力を振り絞り、ジークフリートが落としたマスターキーを拾う。足が動かなくとも上体だけで、“彼”は無理矢理一撃を放った。


 だが振り抜いた一撃は――いつの間にか近づいてきていた男の顔、その目の前で……止まっている。


 信じられない気持ちで、“彼”は愕然と男を見た。

 男は剣を、歯で噛んで止めていた。人間技ではない――否、人間ではない。そんなことを、こんな局面で思い知る。

 男は歯だけで“彼”から斧を奪い取ると、ぺっとその辺に吐き出して、微笑んでみせた。


「いいね……いい。実にいい。私が神だと知って、なお折れぬその反骨。我が姫君、君に足りなかったのはこれだよ! 従順な君も嫌いじゃなかったがね? 不満があったとすればこれだ――たまにはこのいじらしさが欲しかった!!」


 まるで――いや、事実歓喜に打ち震えるように、男が地震のみを抱きしめて悶える。その様に、女はどうとも言えぬ顔をしたが。

 だが真の恐怖は、そのすぐ後にやってきた。


「ああ、いい……! 悪いがもう、我慢できない。“支配”するほどの力はないが、それでも……」

『――っ! ダメ!?』


 今のままでも、十分に距離は近かった。その距離を男は更に踏み出し、“彼”のすぐそばにかがみこむ。

 そうして逃げられない“彼”の、左手をその手に取ると――

 うっとりと、ため息のように。唇を濡らして、男が囁く。


「つまみ食いくらいは、しても許されるだろう?」


 刹那。


「――ぐ、ぎッ!?」


 突然手の甲に走った痛みに、スカーレットはくぐもった悲鳴を上げた。焼けつくような、焼き鏝を押されたかのような激痛は手の甲から、腕を伝って心臓へと這ってくる――というのに、“彼”にはそれをどうしようもできない。

 全身を炎にあぶられ、視界が熱に溶かされるような苦痛の中、男の声だけは……嫌になるほどに、ハッキリと聞こえた。


「私なりのコムニアだよ、新しい姫君。これで君はもう、私から逃げられない。さあ、世界が滅ぶまでの新しい運命を紡ごうじゃ――」


 と。


「――おい、お前」


 不意に聞こえたのは、灼熱を宿した怒りだった。


「私の娘に、何をしている」

 

 そして男の顔が消し飛んだ。

 

 事実として、まばたきの間に男の首から上が消えていた。消えた当の男の顔はといえば、壁面にぶち当たって潰れている。

 乱入者がしたことは、あまりにも単純だった。特別なことは何もしていない――ただ無造作に男の顔を蹴飛ばして、首から引きちぎったのだ。

 そうして無言で、超然と立つ大男を、“彼”は呆然と見上げた。


(おや、じ、どの……?)

 

 クリスタニアの軍神、ヒルベルト・メイスオンリーが、怒り狂った無表情でそこにいた。

 “彼”はこれまで、戦士としてのヒルベルトを知らなかった。ヒルベルトが決して、そうした側面をスカーレットには見せなかったからだ。聞こえてくる戦場伝説を訊いても父は笑ってごまかすだけで、父は家庭に血生臭い話を一切持ち込んだりはしなかった。

 だが、今になって思い知る。傭兵として生きてきた“彼”だからこそわかる。


 これに勝てる人間はいないと――これに勝っていいのは人間ではないと。


 それほどまでに、戦士としてのヒルベルトは格が違った。

 存在するだけで、空気がひりつく。その体に押し込めた怒気に肌が泡立つ。呼吸すら満足にできなくなるほどに、まとわりつく気配が重い――……

 だがその重さを全く無視して、軽薄に響く声が一つ。


「――ああ、そうか。君がいるのを忘れてた」


 頭が消し飛んだはずの男の体から。その声は平然と放たれた。

 握りしめていたこちらの手を離し、ヒルベルトに向き直るように立ち上がる。頭がないことを気にしたのか、男の手は頭の辺りを彷徨うが――次の瞬間には、音もなく男の頭がそこにあった。

 再生したとか、作り直したとか、そういった類の変化ではない。そこにあるのが当たり前のように、瞬き一つの間に出現した。

 ヒルベルトも、頭が戻ったその瞬間を見抜けなかったのだろう。無表情だった顔、その眉間に、初めてしわを寄せた。


「面妖な……怪異の類か?」

「それ、君が言うのかい? 君たちのほうが、人間としてはよっぽどだろうに」


 感覚を確かめるように首をひねりながら、男が言う。その物言いはなんてこともないが。

 ここにきて、初めて男が警戒を見せていた。人を小ばかにしたような態度は一貫しながらも、視線はヒルベルトから離れない。

 ヒルベルトもまた、視線を男から離しはしなかったが――こちらは単に、怒りが臨界点を超えていただけだった。

 だから、男の小言にも一切付き合わず、独り言のように呟いてくる。


「頭を飛ばしても死なない生き物か……まあいい。殴れるなら関係ない。いつかは死ぬ」

「ふうむ……まあ、付き合ってあげてもいいけれど」


 と、そこで初めて男は注意をヒルベルトから外した。

 視線の先にいるのは……瀕死のスカーレットだ。


「君の娘、ほったらかしていいのかな?」

「…………」

「生憎、私は君の娘が気に入ってしまってね。だからどうだろう。いずれのために仕切り直しというのは――」

「黙れガキが。その口閉じねば、噛み殺すぞ」

「ああ……神様相手でもこれだよ。これだからまったく、君たちというやつは……」


 最後には呆れたように肩をすくめるが。

 それが本当の時間切れだったのだろう。途端に男の体が薄れ始めた。ゆっくりと全身が半透明になっていき……やがて、消える。

 その最中にぽつりと。他人事のように男は呟いた。


「そうか。この展開だと君は死なないのか……まあいいか、余興が増えたとでも思えば。アクシデントは楽しまなければ、ね」


 そして今度はスカーレットたちに向けて、言い残す。


「いずれまた会おう、我が姫君たち。近いうちに……迎えに行くよ」


 それを訊き届けたかどうかのうちに。

 スカーレットは、とうとう意識を失った。

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