幕間1 陰で囁く者たちの話

 遠く、遠く悲鳴が聞こえる――その、森の中。

 全身を黒のローブで包んだ、顔さえ見えぬ老人が三人。まるで三つ子のように、同じ姿の影が三つ。

 樹上から、惨事を見つめて苦々しく呻いた。


「……どうして失敗した?」

「わからぬ」

「わからぬ」

「どうして、あやつは邪魔をした?」

「此度の姫君は狂っておる」

「此度の贄は狂っておる」

「何をした……ここで狂う運命などではなかったはずだ」

「わかるのは……」

「コムニアの時期が、ズレておる」

「姫君の生まれが、ズレておる」

「あの女、何をした……?」

「あの女、どうやって運命を狂わせた……」

「わからぬ……わからぬ……」


 沈黙。

 誰も――何も答えない。否、答えを持っていない。

 だが、黙り続けられもしない。

 黙り続けるのは――何もしないでいるのは、死よりも恐ろしいのだから。


「――修正がいる」

「運命は正しく回らねばならぬ」

「でなければあの方がお怒りになる」

「死ですら我らの救いにはならぬ」

「生ですら我らの救いにはならぬ」

「であれば正しく、終わらせるしかあるまい……」

「我が神に、姫君を」

「我が神に、贄を」

「我が神に、世界の滅びを――」


 三者三様に呟いて、姿を消す。

 森の中には、誰もいない。

 ただ風だけが吹いて、消える。

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