第24話 決着・不良学生との勝負

 和香里は目の前のカードを見つめながら必死に考え、相手の装備の効果を再確認する為に上咲の言葉を頭の中で思い返した。


(……ん?確か上咲はさっき……)



“運命の赤い鎖は相手にも勝手に武器を装備させた上に、鎖で繋がったお互い以外に攻撃出来ない武器カード……”



(そっか!この鎖は『武器』なんだ!)



「ゴコ!その鎖で『ハート』に攻撃して!」


『よっしゃーー!!』


 ゴコは赤い鎖を思い切り掴むと、鎖を全力で振り回して先端にくっ付いているハートを地面に思い切りぶつけて攻撃した。


「馬鹿か!光のローブは攻撃が通用しねぇ防具だ!そんな事したって何の意味も無え!」


 上咲の言う通りハートは地面をすり抜けて攻撃を避けた。


「違うよ!攻撃する事に意味があるんだよ!」


「何?」


 ハートに攻撃は避けられたが、鎖はゴコが攻撃を終えた瞬間、バラバラに砕け散ってしまった。


(ゴコは使用した『武器』を破壊する能力がある!まさか弱点だと思っていた効果に助けられるとは……!)


『あっ!鎖が……!』


「何っ!?まさかコイツ……使用した武器は破壊するタイプのアルカナか!?」


 ハートは破壊された鎖を見て驚き、上咲はゴコの能力に驚き焦っている。


(このチャンスは逃さない!)


「ゴコ!ラブに『氷の剣』で攻撃して!」


『任せろ!!』


 ゴコは自由になった右手に装備した氷の剣を、空を飛んでいるラブに向かって全力で投げた。


『マズい!間に合えーっ!』


 先程の攻撃で振り回され、ラブから引き離された『光のローブ』持ちのハートは急いでラブの元に向かう。


『きゃあっ!?』


『ラブ!?」


 だが、ハートの飛翔よりも速く飛んだ氷の剣がラブの身体を貫き、ラブは悲鳴を上げながら光に変わってアルカナカードに戻ってしまった。


『そ、そんな……!』


「ヤバい!こうなったら『ビリショック』で一旦……ダメだ!あの護身の盾の効果でアイツは止まらねぇ!」


「ゴコ!『粉砕棍棒』でハートを光のローブごと攻撃して!」


『トドメだ!』


「いやまだだ!ハートに『アタックカウンター』!」


 上咲は咄嗟に魔法カードをハートに使用してゴコの攻撃を反射した。


『うおっ!?』


 攻撃を反射されたものの、装備していた盾のお陰で攻撃は完全に防げた。


「そうか、反射も特殊効果だから護身の盾持ちのアルカナに反射ダメージは入らねのか……だが、相手は既にライフルと棍棒を使用した。もう防具を消すカードは無い筈……」


「ゴコ、もう一回『粉砕棍棒』で相手を攻撃して!」


「げっ、まだ持ってたのかよ!?」


 ゴコは空を飛ぶハートに急接近し、手に持った棍棒を思い切り振り下ろした。


『うわーっ!?』


 光のローブを砕かれ、ゴコの強力な攻撃を喰らったハートも光に変わり、上咲の持つアルカナカードに戻った。


「ああっ!ラブ!ハート!」


 上咲はラブ・ハートが入ったアルカナカードを掴んで2人の名前を叫んだ。


『ゴコの勝ちだ!』


「終わった……ゴコ、ありがとう」


 和香里は笑顔で近寄ってきたゴコの頭を撫でて褒めた。そしてアルカナカードを見つめたまま呆然とする上咲にそっと近寄った。


「上咲、この勝負は私達の勝ちだよね?」


「……くそっ、俺の負けだ」


 上咲は非常に悔しそうだったが、それでも自分の負けを認めた。


「じゃあ、私が勝ったから……」


 と、上咲に命令をしようとしたその時



「和香里さーん!!」



 上空から和香里を呼ぶ声が降ってきた。


「ん?この声は……」


『ナルとリスタルだ!』


「和香里さん!大丈夫ですか!?」


 何とこの現場の空にリスタルの魔法の絨毯に乗った鳴が現れた。2人とも大慌ての様子だ。


「ええっ!?2人ともどうして此処に!?」


「闘志さんのお兄さんから連絡があったんです!先程和香里さんの様子がおかしかったから、何か事件に巻き込まれている可能性があるって!だから私と闘志さんで別れて和香里さんを探してたんです!」


『『魔法探知』で魔力の発生源を辿って此処まで来ました!』


 鳴はリスタルの絨毯から降りて和香里に駆け寄った。リスタルも絨毯をしまってから短い足をバタバタと必死に動かして走って来た。


「2人とも、よく結界の中に……いや、鳴とリスタルは一般人じゃ無いから入れたんだね。2人とも心配させてゴメンね、でも私は大丈夫だよ!さっきアルカナバトルで勝負を挑んできた上咲って人に勝ったから!


「うえざき……?」


 和香里は全て終わったから心配無いと、先程の勝負を鳴に報告して安心させようとしたが、鳴は『上咲』の苗字に眼鏡を光らせて反応した。


「……ですね?」


「……鳴?どうしたの?」


「貴方ですね!?蘭お兄さんのお店を破壊した犯人は!!」


「「えええっ!?」」


 鳴は激しい怒りを露わにして上咲を怒鳴りつけた。何の事情も知らない和香里と上咲は同じ反応をして驚いた。


「何!?あの人と何かあったの!?」


『実は昨日僕らが帰った後、石英さんが謎のアルカナバトラーと勝負して負けた上に喫茶店を破壊されたんです!』


「あの時蘭お兄さんのアルカナのフラさんは『ウエザキ』と名乗る人にやられたと言ってました。つまり……この人は蘭お兄さんの仇なんです!!」


「何っ!お前はあの石英の……」


 上咲は心当たりがあるのか、石英の名前を口に出した。しかし、全て言い終える前に鳴は上咲に向かってカードを構えてしまった。



「相手にビリショック!」


『はい!……ってコレ、マジカルボンバーです!周囲を巻き込んで大爆発してしまいます!!』


「きゃー!間違えた!?リスタル、魔法を中止して!」


『無理です!急に止まれませーん!!』


「うわーーっ!?お前もかよーっ!?」


 鳴の制止も虚しく、リスタルの杖から爆発魔法が放たれてしまった。

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