第19話 闘志覇綺
『私は『正義』のアルカナ、名は『ツルギ』と言う』
闘志覇綺のアルカナであるツルギは、和香里達に向かって丁寧に自己紹介をした。
『力のゴコだ!ワカリはゴコのマスターだ!』
『ボクの名前はリスタルです!魔術師のアルカナで、ボクの主人はナルです!』
ツルギの自己紹介を聞き、ゴコとリスタルも闘志達に自己紹介をした。
「凄い……!まさか同じ校内に2人もアルカナバトラーが居たなんて……!闘志さんもアルカナカードプレイヤーだったんですね!」
「アルカナカードプレイヤー……ああ、妹からの誘いでアルカナカードは何回か遊んだ事はある」
「成る程!因みに、闘志さんはどうやってアルカナと出会ったんですか?」
「妹のカード開封を手伝っていたら白いカードが現れ、そのカードに色が付いたかと思ったらそこからツルギが現れた。それがツルギとの出会いだった……だが、この出会いは間違いだったのではと思っている」
「えっ?」
「少し違えば、このツルギは妹のアルカナになっていた。俺よりもアルカナカードに詳しい綺羅の方がツルギを上手く扱えたのではと思うと、非常に居た堪れなくてな……」
「いえ、確かアルカナは力のある人が手に取るとその場でアルカナの姿が決まるので、ツルギさんは紛れもなく闘志覇綺さんの相棒ですよ!」
「そうなのか」
「はい!恐らく、もし妹さんが白いカードに手を触れていたら別のアルカナが出ていたと思います!」
「……やっぱり、闘志さん的には綺羅がアルカナバトラーになってた方が良かった感じですか?」
「いや、妹を危ない目に遭わせる訳にはいかない。ある意味、役目を肩代わり出来て良かったとも考えている」
「成る程……」
和香里達が闘志とツルギが出会った経緯を聞いている間、闘志のアルカナであるツルギはゴコとリスタルに質問攻めに遭っていた。
『ご飯は何がうまい?』
『それは好きな食事を聞いているのか?私は好き好んで食事はしない』
『食わないのか!?』
『えっとえっと、じゃあ主人の闘志さんの好きな所はありますか?』
『真っ直ぐな所だ』
『おー!いいですね!』
「こらこら、質問のし過ぎて闘志さんのアルカナを困らせないでね」
『おう』
『はい、分かりました!』
和香里は急いでアルカナ達の元に駆け寄り、2人を軽くたしなめた。良い子な2人は素直に従ってくれた。
「ツルギさん、2人の相手してくれてありがとう」
『私は特に問題無い』
和香里のお礼に冷静に言葉を返すツルギ。素直なのか従順なのかは分からないが、彼はとにかく、人の言うことを真面目に聞くタイプなのかもしれない。
とりあえずツルギに2人の相手をさせて、闘志との会話を再開した。
「それにしても、アルカナを所持している2人は揃ってカードゲーム部に所属しているのか」
「私は元からアルカナカードが好きだったので……」
「私はアルカナカードを全く知らなかったので、基本的なルールを知る為に入りました」
「そうか……」
2人が部活動に所属する理由を聞き、暫しの間考え込む闘志。やがて何かを決心すると、改めて鳴に向き直った。
「決めた。俺もカードゲーム部に入る」
「ええっ!?」
「えっ?闘志さんも此処に入るんですか?でも、闘志さんは既に柔道部に所属してる上に部長なんですよね?」
またまた大きな声で驚く鳴に、冷静に闘志の現状を整理する和香里。
「柔道部とカードゲーム部のどちらにも所属する。このカードゲーム部に入れば、同じ力を持った2人とも会えるし、アルカナカードのルールも改めて勉強出来る。後はアルカナカード部の部長が許可を出してくれるかどうかだが……」
「大丈夫なら大歓迎です!同じ力を持つ仲間が増えたらこちらとしても頼もしいですし……ですが、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。どちらにしろ、俺はもう柔道部には行けないから暇だったんだ」
「えっ……」
闘志の一言に思わず言葉を詰まらせる鳴。
「もしかして、大きな怪我を……?」
「いや、俺が強過ぎて周りの士気が下がるから来るなと顧問に言われた。中には俺に一生勝てないからと柔道をやめる生徒も現れてな……」
「そうだったんですか……」
「理不尽ですね」
「そもそも俺は柔道教室に通っているから、何も心配する事は無い。火曜日と金曜日は柔道教室が休みだから、その日は部活に出られる」
「燃えるゴミを出す日と同じなんだ」
「だが、俺に『分裂』と『隠密』を使えば、柔道教室にも通える上にカードゲーム部に毎日顔を出せる」
「闘志さん……そこまでして部活動に顔を出してくれるんですか……?凄く有り難いのですが……」
柔道に強い生徒が立て続けにカードゲーム部に入部したらまた何か言われるかもしれない。
「そこは心配無い。俺は前からアルカナカードを集めていてな……周りにもカード収集の趣味や、多少カードゲームを嗜む事は知られているから、カードゲーム部にも自然に入れるだろう。もし文句を言われたら俺が何とかする」
「闘志さん、相手を怪我させる真似だけはやめてくださいね」
「才語、流石にそんな真似はしない。俺を何だと思ってるんだ」
「前にわざと肩ぶつけて来た不良の肩を砕いたって綺羅から聞きました」
「……」
和香里の反論に闘志は無言になった。
「……本当にあった事なんですか?」
「まあ、何はともあれ仲間が増えるのは良い事だよね」
「はい。闘志さん、今後とも宜しくお願いします」
「翡翠部長、こちらこそ宜しくお願いします」
鳴と闘志はお互いに丁寧に挨拶を交わした。こうして、カードゲーム部に物理的に頼れる部員が入ったのだった。
「そうだ!折角ですし、これから皆んなで喫茶店クラッシュに行きませんか?昼間に助けてくれたお礼もしたいので……」
「いや、礼は……いや、このままでは翡翠の気も収まらないだろうし、交流会も兼ねて参加するのもまた一興か。分かった、俺も参加しよう」
「ありがとうございます!そうだ、喫茶店クラッシュに外で倒した魔物カードを持って行ったら全て換金してくれますよ。闘志さんは今まで倒したカードは手元にありますか?」
「魔物……倒した魔物は全部焼却処分したが……」
「ええっ!?」
「いや、よく考えたらさっきまで暴れてた魔物をずっと手元に置くのも怖いし……闘志さんの行動は凄く真っ当だと思うよ」
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