第12話 真夜中の脱出
アパートに帰宅後……
「そろそろ11時……」
全ての支度を終えて後は寝るだけとなった和香里は、パジャマではなく私服姿でベッドの上にいた。真夜中に家から抜け出す為だ。
『よっるーのさーんぽ!』
ゴコは近くの椅子に座り、先程からずっとワクワクしている。
「ゴコ、気持ちは分かるけど騒ぐと家族が起きるから、静かに待っててね」
『おう。ワカリ、散歩はまだか?』
「そろそろ鳴から電話が来る筈だけど……あっ、来た!」
和香里がゴコをなだめていると、近くに置いていたスマホに反応が。スマホを手に取ると、画面にはお目当ての翡翠鳴の名前が浮かんでいた。和香里は早速ボタンを押して鳴と通話を始めた。
[こんばんは]
「こんばんは〜。夜に家を抜け出すなんて、何だかワクワクするね」
[凄く分かります……!私も初めて家を抜け出す時はドキドキしました……あっ、家を抜け出す方法を教えますね。別れる前に私が渡したカードは手元にありますか?]
和香里は机の上に置いていた鞄を取り、その中からカードを幾つか取り出した。
「うん、あるよ。『分身』『隠密』『施錠』『解錠』『飛翔』『戦車』『回復』のカードだよね」
[はい、ではまずは『分身』カードを和香里さん自身に使って下さい。そうすれば才語さんの分身が現れる筈です]
「分かった」
和香里は自身に意識を向けて分身カードを使用した。すると和香里の身体から和香里そっくりの人間がもう1人現れた。
『ワカリが増えた!?』
[その分身に家で過ごすよう指示して下さい]
「分かった。分身、私の代わりに家で過ごしてて」
和香里の分身は和香里の言葉に頷くと、静かにベッドに入ってすやすやと眠り始めた。
『おぉ〜』
[では次に『隠密』のカードを和香里さんに使って下さい。それで和香里さんもアルカナと同様に一般人から見え辛くなります、仮に見つかっても一般人は相手が和香里さんだと分かりません]
「へぇ〜便利だね」
[そして『解錠』と『施錠』のカードは文字通り、鍵を開けたり閉めたり出来ます]
「このカードは名前通りの効果が出るんだ……」
[それでとりあえず家から抜け出して下さい]
「分かった!」
和香里とゴコは静かに自室から出て、家族を起こさないようそっと廊下を歩いてに玄関まで移動した。その間、時計の針や自分の足音がいやに大きく聞こえた気がした。
(解錠!)
普段より長く感じる廊下を抜けてようやくドアにたどり着くと、『解錠』のカードでドアの鍵を開けて外に出た。
「(えーっと、施錠……と)」
和香里が『施錠』のカードを使うとドアから鍵が閉まる音がした。
「(鍵閉めよし!)」
『(ヨシ!)』
扉に鍵が掛かっている事を確認すると、2人は急いで階段を降りて広い道路に出た。辺りには人の気配は無い。
「真っ暗……」
今現在、外は真っ暗だ。周りには僅かな灯りしか付いていない。
[外に出ましたね?後は公園に向かうだけです。移動は『飛翔』と『戦車』がオススメです。どちらもアルカナに使用するカードで、『飛翔』を使用すれば空を飛べるようになり、『戦車』のカードを使用すれば普段よりもっと速く動けるようになります]
「分かった!じゃあ今日は飛翔使ってみるね!ゴコ、私を背負って!」
『おう!』
和香里は『飛翔』のカードを持ってゴコの背中に乗った。
「いくよ……!」
和香里は、はやる気持ちを抑えながらゴコのカードに『飛翔』のカードを重ねた。
『うおおっ!?』
「うわっ!?」
すると、ゴコの背中から大きくて力強い羽が生えた。和香里は驚いて思わず軽くのけぞった。
『大丈夫か?』
「大丈夫……」
和香里はスマホをスピーカーにして、手元の物を全て鞄にしまった。
「ゴコ、広居公園に出発!」
『出発進行!』
ゴコはその場で大きく羽を広げると、その場から思い切りジャンプした。
「うわわっ!?」
今までよりも強い風がゴコと和香里を襲う。
『いくぞーっ!!』
ゴコはあっという間に周りの電柱よりも遥か上を飛び越え、その場で翼を広げて更に飛び上がって5階程あるアパートより上空を飛び始めた。
「空飛んでる……!」
『ワカリ!空飛べた!!』
「凄いよ!私達、電柱より上にいるよ!」
和香里とゴコは初めての空に感動している。
[因みにその『飛翔』のカードに制限時間はありません。使用し続ける限り、ずっと飛び続けます]
「そうなんだ!じゃあ安心して空飛べるね!ゴコ、公園はあっちだよ!あそこに向かって飛んで!」
『おう!』
ゴコは羽を器用に動かし、公園に向かって物凄い速さで飛び始めた。
(速っ!風が強くてまともに前向けない……!)
和香里はあまり風が来ない位置から前を覗き、ゴコをナビしながら何とか公園に到着したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます