第9話 新たな仲間、翡翠鳴
翡翠とのバトルが終わった後、和香里は父親の車で直ぐに帰宅した。そして9時半頃……
[才語さん、先程は申し訳ございませんでした……]
翡翠から掛かってきた電話を取ると、真っ先に謝罪の言葉が耳に飛び込んできた。
「いや、大丈夫……ってか、翡翠さんのアルカナのリスタルの方が心配って言うか……」
和香里は勝負を挑まれた事よりも、先程ゴコの凄まじい猛攻によりマナローブごと消し飛んだリスタルの事だけが気掛かりだった。
[多分大丈夫です。前にも魔物の攻撃で倒されてしまった事がありましたが、次の日には元気になりましたから]
「良かった……」
和香里がほっと一安心する中、ゴコは1人で喋る和香里をじっと見つめながら耳をピンと立てている。
『ワカリ、その板喋るのか?』
ゴコはスマホから聞こえる声に耳を傾け、不思議そうにしながらそう尋ねてきた。
「ああ、これはスマホだよ。今、遠くにいる翡翠さんと電話を繋いで喋ってるんだよ」
『ヒスイ?』
「さっき戦ったリスタルといた人だよ」
『それと喋れるのか!?』
「喋ってみる?」
『おう!』
「分かった。翡翠さん、ちょっとゴコと代わっていい?」
[勿論大丈夫ですよ]
「ありがとう。ゴコ、普段より声は抑えて喋るんだよ」
『(おう)』
「それは抑え過ぎ、もう少し声出してもいいよ」
『おう!』
「そう、それくらいだね」
和香里はゴコの声量に納得すると、スマホをそっとゴコに手渡した。
『ゴコだ!』
[ゴコさんこんばんは]
『おお!返事が来た!』
ゴコは話が出来るスマホに大興奮し、色々と喋っては翡翠の反応を楽しんでいた。
『ゴコはバトルが好きだ!』
[頼もしいですね]
『ゴコは食事も好きだ!』
[ご飯は美味しいですよね]
『特にクッキーが大好きだ!』
[そうなんですね、では今度お詫びにクッキーを持ってきますね]
『やったー!!』
「はいはい。ゴコ、そろそろ私と代わってね〜」
『おう!』
ある程度喋らせた後、和香里はゴコからスマホを返してもらった。
「翡翠さん、ゴコの相手してくれてありがとね」
[才語さんのアルカナのゴコさんとの会話、とても楽しかったですよ]
「翡翠さん相変わらず優しい……あっ、そうだ。さっき、アルカナバトラーに相応しいか試すって言ってたけど、私は大丈夫だった?」
[あっ、それはもう余裕で大丈夫です!才語さんみたいな優しい方がアルカナバトラーで良かったです!ですが、実は……戦った理由は別にあって……]
「どゆこと?アルカナバトラーを試すのとは別に何か理由があったの?」
[はい、実は…………才語さんとお友達になりたくて……]
「……えっ?友達?」
[はい、アニメでは勝負の後に友情が生まれてたので、才語さんともっと仲良くなる為には絶対に戦わないとって思ってたんです……]
「そうだったんだ……」
どうやら和香里に勝負を挑んだのはアニメの影響だったらしい。
(だからってまさかガチでバトルをするとは……翡翠さん、変な所でちょっと抜けてるような……)
「翡翠さん、そんな事しなくても「友達になりたい」って言えば友達になるって」
[ありがとうございます。才語さんは優しいですね]
「そんな事無いって、私も翡翠さんと仲良くしたいし。翡翠さんアルカナカードに詳しいし、同じ力持ってるし」
[才語さん、ありがとうございます…………あの、改めて言いたい事があるのですが、いいですか?]
「うん、いいよ」
[ありがとうございます。では……才語さん、私とお友達になってくれませんか?]
「いいよ!これからも宜しくね!」
[はい!宜しくお願いします!]
こうして和香里は、同じアルカナバトラーの力を持つ同級生の友達が出来たのだった。翡翠は和香里より遥かにカードに詳しく、カードバトルも強かったので非常に頼りになるだろう。
「そうだ、私の事は和香里って呼んでいいよ〜」
[宜しいんですか?では私の方も鳴って呼び捨てで呼んでください]
「鳴だね、分かった」
[えへへ……名前で呼ばれると本当に友達みたい……あっ、もうこんな時間!ではそろそろ電話を切りますね。和香里さん、おやすみなさい]
「鳴、おやすみ〜。また明日ね〜」
[はい!また明日!]
翡翠鳴との電話を終えた和香里は、ゴコをカードに戻してからそのまま就寝した。
そして次の日の放課後……
「失礼しま〜す」
和香里は今日も美術室にやって来た。だが、今日は隣に綺羅は居なかった。
「鳴部長、綺羅は用事があるって言ってすぐ帰ったよ」
「和香里さんこんにちは。闘志さんは今日はお休みですね、分かりました」
『あっ!才語さんだ!こんにちは!』
美術室に入ると、翡翠鳴と元気になったリスタルが和香里を出迎えた。
「あっリスタル!元気そうで良かった〜!」
和香里は机の上に乗っているリスタルを見て笑みを浮かべた。
「和香里さんに改めて紹介します。この子は魔術師のアルカナの『リスタル』です」
『才語さん!昨日は友情の儀式をしてくれてありがとうございます!』
「友情の儀式?」
『バトルの事です!刄獲流燃志(ばとるねんし)って方はあの儀式を通して様々な方と友達になったんですよ!』
「ばとるねんし……?」
「あっ、それはアルカナカードのアニメの主人公の事です。リスタルはあのアニメが大好きで……」
「成る程……そういえば昨日もリスタルは外に出てたよね?もしかして鳴はアルカナを常に外に出てるの?」
「はい。見張りも兼ねて、リスタルは常に表に出してるんです」
「見張りかぁ……確かに、もし想定外の方向から攻撃が飛んできたら人間だけだと対応出来ないもんね……じゃあ私も出しとこ!ゴコ、出て来て!」
和香里は鞄からカードを取り出し、ゴコを召喚した。
『ゴコのお出ましだ!ワカリ、どっかに魔物出たか?』
「違うよ、これからは何も無くても出来るだけ外に居てもらおうかなって思ってさ」
『何っ!もっと外に居られるのか!?いやっほー!!』
ゴコは大喜びしてその場で飛び跳ねた。どうやらカードの中は退屈だったようだ。
「そうだ、こっちも紹介するね。この子は力のアルカナの『ゴコ』だよ」
「やはり『力』のアルカナでしたか。はい、宜しくお願いします」
『あっゴコさんだ!こんにちは!』
『リスタル!元気になったか!』
『はい!一晩寝たら元気になりました!昨日は対戦していただきありがとうございました!』
『昨日のリスタルの魔法、凄く効いた!今度は攻撃全部避けてやる!』
『こっちだって負けませんよ!』
アルカナ同士で挨拶し、楽しそうに交流している。とても可愛らしい光景だ。
「そうだ、昨日拾ったゴブリンのカード持って来たよ。これ山分けする?」
和香里は鞄の中から更にカードを取り出し、昨日討伐したゴブリンカードを机の上に並べた。
「あっ、それは全部才語さんが持ってて大丈夫ですよ」
「いいの?でも全部はねぇ……」
2、3枚ならまだ分かるが、10枚を超える量を貰ってもただ持て余すだけだ。
「あっ、流石にそんな量あっても邪魔になるだけですよね……そうだ!その魔物カードを売ってお金に変えるのはどうですか?」
「えっ?」
「外で暴れていた魔物のみを買い取ってくれる親戚がいるんです。折角ですし、今日は野外活動という事で、これから親戚が運営している喫茶店に行きませんか?」
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