第8話 逆転のカード
「……あれ?これって……」
ゴコが絶体絶命の大ピンチの中、和香里は手札から1枚の気になるカードを見つけた。
『対魔導兵器ライフル』
(これ、武器カードじゃ無い?)
このカードは弟の和方から貰ったものだ。銃の絵が描かれているので武器カードとばかり思っていたのだが、どうやらコレは『道具カード』らしい。
(攻撃力が無いけど武器っぽいからってとりあえず手札に入れてたんだ……でも、これならいけるかも!)
「ゴコ!これ受け取って!」
和香里は対魔導兵器用ライフルのカードをゴコのカードに重ねた。ゴコの手元に不思議な形状のライフルが出現した。
「あっ!あれは……!」
どうやら翡翠はこの道具の効果を知っているらしく、少し動揺している。
『ワカリ!アイツに攻撃は効かない!』
「ゴコ、それは武器じゃないよ!それは相手の道具を狙い撃ちして壊す道具!」
『おー!』
この『対魔導兵器用ライフル』は、相手が装備している装備を1つ処分する効果のある道具カードだ。
「ゴコ、その銃を使ってリスタルの光のローブを撃ち落として!」
『おう!』
ゴコは片手でライフルを構え、リスタルのローブ目掛けて引き金を引いた。ライフルの先端から眩い光線が飛び出した。
「リスタル!避けて!」
『分かっ……わわっ!?』
リスタルは素早く動いてライフルの攻撃を避けようとしたが、ライフルの弾はリスタルを的確に追尾して光のローブに見事に命中した。そして役目を終えたライフルはゴコの手元から姿を消した。
「これなら攻撃が当たる!」
「いえ、まだです!マナローブを装備させてリスタルの魔力を全て防御力に変えます。魔力不足で使用不可能になったバーニングバードを破棄し、新たにファイアボールを追加します!」
リスタルは新たに綺麗なローブを身に纏い、透明な体内に居た火の鳥が消えて新たに火の玉が現れた。
「リスタルは魔術師のアルカナ特有の体力不足の問題がありますが、このローブさえあれば例え相手の力が強くても耐えられます!」
翡翠は手元のカードを見つめながら更に考える。
(恐らく力のアルカナであるゴコさんは、武器を犠牲にして攻撃力を上げるタイプ……でも、マナローブさえあれば例え攻撃が命中してもある程度は耐えられる……ゴコさんには既にバーニングバードの一撃が入っているから、そろそろ倒れる筈!)
翡翠はゴコの能力を考察し、この勝負の勝ちを確信していた。
「例え防御力が高くても問題無いよ!こっちにはとっておきがあるからね!」
「えっ?」
だが和香里にはまだ奥の手、弟から貰った1パックから出た最終兵器のレアカードがあった。
「まずは武器カードを全部破棄するよ!」
和香里がそう宣言すると、手札の中の武器カード5枚が全て黒くなった。
「武器カードを破棄……ま、まさか……!」
翡翠は和香里の説明に戦慄している。恐らく翡翠にはこの効果に思い当たるカードがあるのだろう。
「武器5枚を犠牲にしてようやく使用可能になった武器カードをゴコに装備させるよ!」
和香里はゴコのカードに1つの武器を重ねた。
『おーっ!』
ゴコの手元にシンプルなデザインの強そうな剣が現れた。嬉しそうなゴコとは裏腹に、翡翠さんの顔が青ざめていく。
「大英雄の剣……!」
『大英雄の剣』。これは手元の武器カードを5枚犠牲にしてようやく表に出せるカードだ。他にもコストについてあれこれ説明が記載されていたが、ゴコが無事に装備出来たので特に問題は無いだろう。
(弟から貰ったカードに沢山武器カードが入ってだから使えた……本当に弟には感謝しかない!)
「ゴコ!その剣でリスタルを攻撃して!」
『おう!』
因みに、この武器の攻撃力は2000。ゴコが装備すれば攻撃力は倍の4000、更にゴコの攻撃力を合わせれば合計で5000になる。
「リスタル!逃げて!」
『わっ、分かった!』
翡翠は焦り、ただ逃げるように指示を出した。リスタルは指示通りにその場から逃げ出してゴコから距離を取ろうとするが、ゴコはそれ以上の俊敏な動きでリスタルを捉えた。
『吹っ飛べ!!』
ゴコは両手で構えた剣を真っ直ぐリスタルに振り下ろした。
『うわーっ!!』
大英雄の剣はリスタルを的確に捉え、マナローブごとリスタルを吹き飛ばしてしまった。リスタルは光になって翡翠の手元に飛んでいった。
「リスタル!」
翡翠はリスタルが入ったアルカナカードを両手に持ち、心配そうにカードの中を確認している。
「翡翠さん……」
「……私の負けです」
翡翠は和香里に顔を向け、自分の敗北を認めた。
「あの……リスタルは大丈夫そう?」
『アイツ無事か?』
和香里とゴコは翡翠が立っている建物に近付き、リスタルの安否を確認する。
「はい、リスタルは無事です。このままカードの中で休ませれば次の日には元気になります」
「良かった……」
とりあえず無事で良かったと安堵する和香里。
「……翡翠さん、何でアルカナバトルを挑んできたの?」
「それは……」
と、翡翠が理由を言おうとしたその時。
「和香里ー!!」
突然道路側から和香里を呼ぶ声が。背後を振り返るとそこには、車に乗った和香里の父親が。
「7時になっても家に帰って来ないから心配したぞ!こんな時間まで何してたんだ?」
「えっ!?もうそんな時間!?」
『あっという間だ!』
「ほら、2人とも家に帰るぞ」
「あっ、待って!ちょっと翡翠さん下ろしてくる!ゴコ、建物の上に乗ってる翡翠さんを地面に下ろしてあげて!」
『おう!』
「あっ!私は大丈夫です!」
「おい何であの子はあんな所にいるんだ!ちょっと待ってろ、今ハシゴ持ってくるから!」
「お父さん待ってて!大丈夫だから!」
父が混ざって更に混乱する現場。この後翡翠は『瞬間移動』の呪文カードでその場から姿を消し、建物から消えた翡翠に気付いた父親が更に騒いで現場は大混乱になった。
「お父さん大丈夫だから!」
「大丈夫じゃないだろ!おいまじでどうすんだコレ!ってか何だ!?あの周りに散らばったカードは!?」
「お父さんマジで落ち着いて!」
『落ち着け!』
この後、辺りに散らばっていたゴブリンのカードを全て回収し、数分後にスマホのチャットアプリに来た『私は無事です。また後で電話します』という翡翠の返事を見せた事で、父親はようやく落ち着いたのだった。
(部活動の中で翡翠さんの連絡先交換しといて良かった……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます