第7話 バトラー同士の勝負

「才語さん、貴方がアルカナバトラーに相応しいかどうか見定める為に、アルカナバトルで勝負して下さい!!」


「ええっ!?翡翠さん急にどうしたの!?」


 誰も居ない静かな公園、小さな建物の上からアルカナバトルを申し込む翡翠。


「アルカナバトルはアルカナ同士を戦わせる勝負。つまり、貴方のゴコさんと私のリスタルを決着が着くまで戦わせるんです」


「いやいや!そんな急に言われても……!」


「お願いします、これはどうしても必要な事なんです!」


 訳が分からない和香里に、一方的に勝負を申し込む翡翠。そのあまりの剣幕に、和香里も思わずたじろいでしまう。



「……どうしても、戦わないといけないの?」


「はい」



 だが、翡翠の真剣な申し込みに、和香里も次第に真面目になっていく。


(……多分だけど、この戦いだけは絶対に避けて通ってはいけない気がする……!)


「……分かった。勝負するよ」


 和香里は真剣な面持ちで鞄からカードを出して構えた。その間に、翡翠のアルカナのリスタルが建物から降りてゴコと向き合った。


「ありがとうございます。では早速勝負を始めましょう。このアルカナバトルにルールは特にありません、アルカナに幾ら支援をしても構いません。では……勝負開始です!」


 翡翠が始まりの合図を出した。2人のアルカナは真剣に向き合い、相手の出方を伺っている。


(とりあえず攻撃を当てやすくする為に、魔法で相手の動きを止める!いくら魔法が苦手なゴコでも、魔法の効果が薄くなる事は無い筈!)


「ゴコ!翡翠さんのアルカナに『ビリショック』撃って!」


『おう!』


 和香里はビリショックのカードをゴコのカードの上に置いた。ゴコはリスタルに向かって両手を構えた。


「……」


『……』


 だが、いくら待ってもゴコから魔法は出てこなかった。


「あれ?おかしいな……」


「才語さん!説明欄!」


「説明?」


 翡翠に指摘され、和香里は改めてビリショックの説明に目を通した。


「えーと、この呪文は魔力が500以上の魔物が使用出来る……えっ!?もしかして魔力無いと使用出来ないの!?」


(ゴコは魔力ゼロだから使えないじゃん!?)


 和香里は想定外の事態に驚き慌てている。


(ヤバい!さっきアルカナバトラーにふさわしいかどうかとか言われたのに……!)


 開幕一発目から初歩的なミス、このままではマズいかもしれないと動揺しながら翡翠を見た。翡翠は無表情のまま和香里を見つめている。


「……初心者にはよくある事です」


(翡翠さん、私のフォローしてくれてる……)


 和香里は翡翠の精一杯のフォローに逆に悲しくなった。


「今度はこっちの番です!リスタルに『光のローブ』と『天上の杖』を装備させ、『バーニングバード』の魔法を追加します!」


 翡翠はリスタルのカードの上に3枚カードを乗せると、アルカナのリスタルの杖とマントが白く豪華なものに変わった。更にリスタルの身体の中に炎の鳥が現れ、体内をくるくると周り始めた。


「うわっ!相手ガチじゃん!?」


「真剣勝負ですから当たり前です!リスタル、魔法でゴコさんを攻撃してください!」


『分かった!』


「やばい!ゴコ避けて!!」


『おう!』


 リスタルの杖から火の鳥が何体も飛び出してはゴコに向かって飛んでいく。ゴコはその場から飛び退いて火の鳥を避けた。


「リスタル!追撃して下さい!」


『うん!分かった!』


「えっ?」


 相手のアルカナは何度も火の鳥の呪文をゴコに放ち続ける。


「相手の呪文が消えてない!?何で!?」


「私のアルカナであるリスタルは呪文を装備出来るんです!普通なら消滅してしまいますが、リスタルは装備し続ける限り、ずっと使用出来ます!」


「そんなのあるの!?」


 和香里が驚いている間に、ついにリスタルの攻撃がゴコに命中してしまった。ゴコにとっては初めてのダメージだ。


『ふぎゃっ!?』


 攻撃を喰らったゴコは地面をゴロゴロ転がるが、途中で跳ねて体制を整え直した。


「ゴコ!大丈夫!?」


『まだ平気だ!だがあの魔法をもう一撃喰らったらゴコは終わりだ!ワカリ、ゴコに武器をくれ!』


「分かった!」


 和香里は手元にある『戦士の剣』のカードをゴコに重ねた。


『うおおおおーっ!!』


 ゴコの手に立派な剣が現れた。ゴコはリスタルの魔法を一通り避け切った後、剣をリスタルに向けて思い切り投げて攻撃した。


 輝きを増した剣はリスタルを的確に捉えて命中した。だが、剣はリスタルをすり抜けて明後日の方角に飛んでいってしまった。


「攻撃が当たってない!?」


「光のローブの効果で攻撃は一切通用しません!更に天上の杖で魔力が更に増えています!」


「マジで!?」


(やばい!攻撃が通用しないなら武器カード持ってる意味無いじゃん!?)


 和香里は焦った。まさか攻撃が通用しない相手が現れるとは思わなかった。


(早くゴコを助けないと!)


 とにかくゴコを助ける為に何とかしなければと、和香里は所持しているカードを1枚1枚丁寧に確認し始めた。


「……あれ?これって……」


 そんな状況の中、和香里は1枚のカードを見つけた。


(これ、武器カードじゃ無い?)

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