第3話 カードの種類と、ゴコの能力
『ゴブァアアアア!!』
巨大イノシシは目の前に立ちはだかるゴコ目掛けて思い切り突進した。
『そりゃっ!!』
ゴコは巨大イノシシの攻撃を余裕でかわし、すれ違いざまに攻撃を叩き込む。どうやらこの勝負はゴコが優勢のようだ。
「えーっと、『施錠』『瞬間移動』『クーシー』……」
ゴコが巨大イノシシと格闘している間、和香里は武器確保の為に、パックからカードを取り出しては1枚1枚確認していた。
「武器全然出ない……!えーっと次は……ん?」
3パック目を開封し中身を確認していると、魔物カードに『レッドホットボア』と名前が付いたイノシシが目に留まった。このカードは他のカードと違って少しキラキラしている、どうやらレアカードのようだ。
(このカードの魔物って……目の前で暴れてるイノシシの怪物と同じでは?)
もしかしたらカードの説明欄にあの怪物の弱点が書かれているかもしれない。和香里はそんな期待を寄せながら、レッドホットボアの説明文を指でなぞって読み上げた。
「この魔物は常に防御力200、この魔物が『攻撃』を受ける際は更に防御力300加算される……何これ?」
『ワカリ!』
ゴコは巨大イノシシを両手で押さえ込みながら、和香里に声を掛けた。
『この怪物凄く硬い!!』
「ゴコ、その魔物は攻撃されると防御力500になるって書いてあったよ!」
『硬いわけだ!この魔物相手なら負けないけど、ゴコの力だけで倒すとなるとすごく時間かかる!』
どうやらあの魔物を倒す為にはどうしても武器が必要らしい。
「待ってて!カードの中に武器あるか探すから!」
『おう!』
和香里は必死になって4つ目のパックを開けた。すると1枚目に『ファイアーボール』と書かれたカードを発見した。
「魔力に200のダメージを上乗せして魔法攻撃……」
わざわざ『魔法攻撃』と書かれているという事は、『攻撃』と種類が違うのかもしれない。
(レッドホットボアは『攻撃』を受ける際に防御力300増える、でも『魔法攻撃』なら防御力300は増えない筈!)
「良いのあったよ!これならいけるかも!」
『あったか!?じゃあそのカードをゴコのカードの上に重ねてくれ!』
「分かった!」
和香里は急いでゴコのカードの上に『ファイアボール』のカードを置いた。すると、ゴコの両腕が真っ赤に燃え始めた。
『ファイアー!!』
ゴコは両手を構えると、燃え盛る火の玉をレッドホットボア目掛けて撃ち出した。火の玉は物凄い勢いでイノシシの魔物に飛んでいき、見事に命中した。
「あ、あれ……?」
火の玉は魔物に思い切りぶつかったのだが、魔物に攻撃が効いてる様子は全く無かった。
ゴコが魔法を打ち終わったのと同時に、ファイアボールのカードの表面が黒ずんだ。カードは一度使用したら2度と使えないという意味なのだろうか。
「魔法が全然効いてない!?」
『ゴコは魔法が苦手だ!』
「ええっ!?魔法ダメなの!?ってか魔法苦手とかあるの!?」
『ゴコは攻撃が得意だ!だから武器くれ!』
「わっ、分かった!」
(他に人が来る前にアレを倒さないと!)
初歩的なルールが分からず混乱しつつも、和香里は再び手元のカードを1枚1枚確認していく。
『ブラッドボア』……『ビリショック』……『黄昏』……『重厚な鉤爪』……
「あっ……!あった!ゴコ、あったよ!!」
カードの4枚目に、ようやく目当ての武器カードらしきものを発見した。
『重厚な鉤爪』。カードの説明には『装備した対象に攻撃力を300加算する』と書かれていた。
『それだ!それをゴコのカードの上に置け!』
「わ、分かった!」
和香里はゴコのカードの上に武器カードを置いた。ゴコの両腕にイラスト通りの重そうな鉤爪が現れた。
『うおおおおおー!!』
ゴコは雄叫びを上げながら魔物に突撃していく、それと同時に装備している鉤爪も輝き出した。
『ブモォオオオオオ!!』
魔物も雄叫びを上げながゴコに突然していく。だが、ぶつかる寸前にゴコが高速スライディングで魔物の懐に入り込み、無防備な腹に両足で蹴りを入れた。
『ブモォ!?』
両足で思い切り蹴られた巨大な魔物はそのまま上に吹き飛んだ。
『今だっ!!』
ゴコは宙を舞うイノシシに向かってジャンプし、両手の鉤爪で大きな相手をズバンと切り付けた。
『プギッ!?』
切られた魔物は一瞬だけ悲鳴を上げると、体が揺らいで煙のように溶けて消えてしまった。それと同時に、ゴコが装備していた武器も消えてしまった。
「あれ?武器って使い捨てなの?」
手元を見ると、武器カードが先程のファイアボール同様に黒ずんでしまっていた。
『おっしゃ!カードゲットだ!』
ゴコは足元に落ちた魔物カードを拾い上げると、和香里の元に元気に駆け寄った。
『カードだ!』
「拾ってくれてありがとう。ねえゴコ、武器って一回使うとダメになるの?」
『ゴコは武器を全力で使うからあっという間にダメになる!でも武器で攻撃すると普段以上の力で攻撃出来る!!』
「……?」
謎の説明に戸惑う和香里だったが、ゴコのカードに説明が書かれていたのを思い出し、改めて説明文を確認した。
『このアルカナが武器で攻撃する際は、その武器の攻撃力を2倍にした上で攻撃する。攻撃に使用した武器は破棄する』
「2倍……」
先程装備した鉤爪の攻撃力は300、これをゴコが装備すると攻撃力は倍の600になるという事だ。
「これ強くない?武器次第では物凄い事になるって事だよね?」
『ゴコは武器があれば百人力だ!!』
「凄く頼もしいよ!……あっ、そうだ。そろそろ家に帰らないと!ゴコ、まだ元気はある?私を家までおぶれる?」
『おう!』
「ありがと!」
和香里は再びゴコの背中に乗り、全然疾走で家へと続く道を走り始めた。
(あっ、パトカーが消えてる……)
帰り際に大橋に視線を向けたが、そこには既にパトカーの姿は無かった。それどころか橋の損傷部分すら見当たらなかった。どうやら魔物のやらかしは全て無かった事になったらしい。
(良かった……全部無かった事になってる……)
和香里はホッと安心し、ゴコの背中に揺られながらアパートへと帰宅した。
「ただいま〜」
「おかえり。随分と遅かったわね、何かあったの?」
「いや〜大変だったよ〜、帰りにイノシシが出てさ〜」
「イノシシ?こんな所に?」
「俺が帰る時にはイノシシなんて居なかったぞ」
どうやら両親の頭からも魔物の存在は消えたようだ。
「ほら、2人とも早く手を洗ってらっしゃい。晩御飯にするわよ」
「はーい……ん?2人?もしかしてゴコの分もある?」
「当たり前じゃない。ほら、早く手洗い場に行きなさい」
『いやったー!ご飯だー!!』
「ゴコ、良かったね」
何はともあれ、暴れる魔物を無事に倒せたし、何故かは分からないがゴコは家族の輪に入れたようだ。
(今日は何とかなったけど、いつかゴコでも倒せない相手が出てくる可能性もあるだろうし……とりあえずは、魔物を安定して倒せるようにカード集めないと……)
再び魔物が現れた時の為に、今度また追加でカードを買いに行こうと心に誓った和香里だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます