其処で嘗てあった事、Part10
253年前
・穀物の収穫量が例年の半分程度になってしまう。
・魔物の巣『星々の黒洞』にて、普段よりも強い魔物が観察されるようになる。
252年前
・食を求めて魔物の巣に挑戦する人が増える。魔物の巣の中で死亡する人が続出。
「
次の文献は私だね。250年前、『星々の黒洞』の内部で大量に人が死んだ影響か、魔物の活性化が起きたみたい。いわゆるスタンピードだね。それで、国内がちょっと不安定になったみたい。『貴族(フォルテ)がなんとかしろよ』みたいな。
そこで249年前、当時最強のフォルテだった王家の末っ子にしてが対スタンピード部隊を率いることになった。彼はまだ小さな子供だったから『こんな子供に任せるのは』と思われたが、結局作戦が実行されることになった。
なんやかんやあって247年前に末っ子君はスタンピードを無事納めることができたが、その過程で不味いものがドロップしてしまった。『パラダイムコントローラー』というアイテムで、魔力を捧げることで大衆に思考誘導をかけることができるぶっ壊れアイテムだった。
その後、他の魔物の巣でもスタンピードが3回起こったけれども、全部末っ子君が解決したらしいわ。そして、その全てで『パラダイムコントローラー』がドロップしたみたい。
」
暁先輩がそう説明し、最後に「私が見つけた文献はここで終わってる」と言った。そして話を引き継いだのは宮杜さんだった。
「
あ、えっと! 続きは私が見つけた文献に書いてありました。だいたい247年前~242年前の話で、ここでは『パラダイムコントローラー』の所有権を巡った争いについて書かれていました。衝突の末、別々の機関がパラダイムコントローラーを所有して、互いを牽制することにしたみたいです。
・王(最高権力者)
・宰相
・憲兵
・騎士団
だそうです。
結局全部王家と関わる部署に配置されたので、実質王の絶対王政と言っても過言ではありませんね。そして、当時スタンピードの余波を受けて不安定だった治安を、洗脳で無理やり抑え込んだみたいです。
」
宮杜さんの次は俺の番だな。
「
その続きは俺の本に書かれていた。
239年前、王が病気で亡くなり長男が後を継いだものの、それに民衆は納得しなかった。末っ子こそが後を継ぐべきと思っていたみたいだ。
それを憂いた末っ子君は、パラダイムコントローラーで民衆を洗脳しようと考えた。けれども不幸なことにそれを見た長男は『末っ子君はパラダイムコントローラーで自分が王になろうと思っている』と考えて激怒。末っ子君を遠くへ追放した。
また自分が保有するパラダイムコントローラーを第三者が使わないよう、パラダイムコントローラーを王家(長男自信とその子孫)しか開けられないような金庫に入れて、さらにそれを王城のどこかに作った隠し部屋へと保管した。
そして長男は宰相に『民衆を洗脳しろ』と命じた。なお、自分でしなかったのは魔力が足りなかったからだと考えられているそうだ。だが、宰相は『洗脳に頼らず、自分の株を上げる方法を考えては?』と忠告した。
しかし、ここで憲兵は長男側についてしまう。彼らは『洗脳で治安が良くなるならそれが良い』と主張。パラダイムコントローラーを使用してしまう。
しかし、こうなることを予想していた宰相と騎士団もパラダイムコントローラーを使用して洗脳を打ち消した。
こうして始まったのが20年戦争だそうです。
」
「
えっと、20年戦争は多くの貴族や商人、民衆を巻き込んだものになったみたい。
まず宰相のパラダイムコントローラーが憲兵によって盗まれて、けど追放先から帰ってきた末っ子君がそれを取り返して。
で、憲兵の邪魔をしたという理由で末っ子君は牢屋に入れられちゃって、パラダイムコントローラーも奪われる。
けど、実は弟君は牢屋に入る前にパラダイムコントローラーを信用していた商人に渡していた。つまり盗ませたパラダイムコントローラーは偽物だった。
その後、憲兵が保有する(偽物の)パラダイムコントローラーが盗まれた。それが偽物であると憲兵は知っていたが、わざと『盗まれた!』と大騒ぎする。ちなみに、盗んだ貴族は末っ子君を慕っていた貴族みたい。
また時を同じくして、騎士団が保有するパラダイムコントローラーがとある貴族に盗まれて、その貴族が別の貴族に倒されて……みたいなことを繰り返す。そしてどういう因果か、地方にいた王家の次男の手に渡った。
」
「
そしてこれで最後かな。
結局、末っ子君が脱獄し、彼が率いる部隊が憲兵と交戦、激戦の末、憲兵は全員死んでしまい、長男は捕まる。
長男はその後処刑されるが、彼の子供たちまでは殺されず、公爵という地位を与えられた。ちなみに、なぜ殺されなかったかというと、長男の娘と末っ子君が実は恋仲だったからだそうだ。
さて、ここで地方にいた王家の次男がパラダイムコントローラーを持って王城に現れた。曰く、『争いに巻き込まれたくない! 争いに巻き込まれたくない! どうか穏便に!』とパラダイムコントローラーに祈った結果、パラダイムコントローラーは使用者である次男を洗脳(説得?)し、『パラダイムコントローラーを全て壊そう』と提案した。
四つあったパラダイムコントローラー、つまり弟君からパラダイムコントローラーを預かっていた商人、次男、末っ子君を慕っていた貴族がパラダイムコントローラーを破壊した。と書かれている。
この四つは民衆の前で破壊され、こうして平和になったとさ。だって。
」
「え、赤木君? ちょっと待って。最後変な事を言わなかった?」
「末っ子君を慕っていた貴族のパラダイムコントローラーって偽物だよ?!」
「残りの一つは……長男さんが最初に隠したものですかね?」
「ああ。おそらく、これは
だって考えても見てくれ。「あと一個、長男が持っていたと思われるパラダイムコントローラーが見当たりません!」なんて言おうものなら、民衆は納得しないだろう。最悪……。
「なるほど。最悪、長男の娘にして末っ子君と禁断の恋をしていた女の子が『あいつが生きているのは危険だ』って思われるかもしれない」
「流石先輩、その通りです」
「という事はまさか!! ……今もパラダイムコントローラーは王城に眠っている……?」
「そして、それを取り出すには王家でないといけないんですよね?」
「そして、当時の王家は今の公爵家……」
「「「!!!」」」
秘宝の正体がわかったな。
さあ、解決まであと一歩だ。そろそろ敵が尻尾を表すはずだから。
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