其処で嘗てあった事、Part8
時は少し遡って、風兎がイアソン王子と話しているころ、女子三人はリース、スコーピオ公爵、そしてアルファから情報収集していた。
「それで、どういったお話をしていたのですか? あ、聞いちゃいけない奴ですか?」
ここは年上の自分が会話するべきだろう、そう考えた暁はそう問いかけた。
「一言で言うと、ここの警備は自分たち憲兵が行うから他の人には帰っていただきたいと要求された。無論、そうする理由がないと反対してどういうつもりか聞いてみたんだが、彼は騎士団をどうしても信用していないようなんだ」
「なるほど、そうなんですね。少し聞いておきたいのですが、騎士と憲兵って総括が違うのですか? 例えば、騎士団長のアルファさんと憲兵のダス(?)さんを比較すると、信用度合いが違うものでしょうか?」
「騎士も憲兵も両方、国の管轄だから、『騎士団なんて信用できない』ってのは正直変だと思った。もちろん、騎士団内に内通者がいたのは確かだが、それを言えば憲兵にだっている可能性はあるからな」
スコーピオはそこで「実際、俺は憲兵にも内通者がいるだろうとほぼ確信している」と小声で言った。
「で、聞いたわけだよ、アルファやベータのことを信用していないのか?って。そしたら『いや、そういう訳ではないんですが……。えっと……。やっぱりエリーの婚約者としてこの事件を解決したい』って言ってな」
「えーと?」
「それって騎士団を返す理由になってないんじゃあ……」
「こう言ってはなんですが、論理飛躍も甚だしいですね」
「だろ? で、そこで憲兵がごちゃごちゃ言ってきたりと、少々揉めてな」
「そんな事が……」
「結局、『協力して護衛に当たった方がいいに決まっている』ってイアソン様を説得して、なんとか納得してもらったんだが……。はああ~」
スコーピオは心の中で「こんな奴が次期国王とか、この国大丈夫か? こんなことになるくらいなら、ぺリアス様が王子になった方がよかったのに」と言ったが、それを口にはしなかった。
「ま、それはいいとして、結局、騎士団、君たち、憲兵で協力して護衛しようってことになった」
「そうなんですね。ところで、ベータさんは? 先ほどまでいましたよね?」
「ああ、彼は舞踏室の外で警備しているはずだよ」
アルファがそう言って、舞踏室の出口を指さした。扉は閉まっていて見えないが、外ではベータが不審者がいないか警備しているのだろう。彼の食事はどうなるのだろう、という目線を感じ取ったのか、アルファは「あいつは後で食べるから心配するな」と言った。
とそこで決闘騒ぎが。「建物を壊さないよう気を付けてくれよ」と言いつつ、彼は舞踏室の後ろを開けて、決闘の場とした。
その様子を心配そうに見つめる三人に向かって風兎は「心配しなくても大丈夫、この二人は、まあその、かなり弱い部類に入るから」と言った。三人は苦笑し、スコーピオは大声をあげて笑った。
決闘が始まるや否や、二人の憲兵が氷魔法と無属性魔法を放った。風兎はそれを必要最小限のシールドで防ぎながら、身体強化をフルにかけ、さらに風魔法で自らを吹き飛ばすことで二人に急接近、氷魔法でナイフを作って二人の首筋にあてた。
「チェックメイトだな」
「「は?」」
あまりに一瞬の試合(もはや試合でもなかったような……)だったものだから、ダスとトレイル、そしてほかの人もあっけにとられていた
「彼、ほんとにすごいね! スコーピオさん、どうやって彼と知り合ったのですか?!」
最初に声を挙げたのはイアソン王子だった。
…
……
………
イアソン王子はダスとトレイルに「お前たちのほうが足手まといじゃないか」と伝える。ダスとトレイルは悔しそうな顔でイアソン王子と風兎を睨みつける。
「イアソン様、リースの護衛は彼らに一任して、憲兵らは家の外をメインで警護してもらおう。どうかね?」
スコーピオがそう言うと、イアソン王子もそれに頷いた。
その直後、厨房から美味しそうな料理が運ばれてきた。
◆
さて、決闘騒ぎも終わったことだし、イアソン王子への誘導尋問を再開しますか。まあ、これは難しい話じゃあないんだけどな。
「イアソン王子、少し聞きたいのですが、今王都への出入りってどうなっているのでしょうか?」
「えっと、王都への出入りに関しては綿密なチェックを行うように周知されているはずだな」
「なるほど。では、それをスルー出来る人物はいますか?」
「なるほど、エリーの誘拐犯を絞ろうという訳か。残念ながら、普段はそこまで厳しいチェックをしているわけではないから、王都の外に逃げられているだろうなあ。ただ、今はかなり厳重に警備されているから、素通りできる人はいないはずだ。あー、まあ王族であれば一応素通りできるかな?」
「なるほど、ありがとうございます。こんなことを言ってもあれですが、正直事件が起こってからチェックを綿密にするんじゃあ遅いような……」
「そうだよね……」
王子から聞くべき二つ目の証言。それが『現在、王都を素通りできる人は王家のみ』という事。これは事件解決に必須な情報ではないのだが、知っておくと後からちょっと便利なんだ。
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