其処で嘗てあった事、Part6
資料室でリースさんから情報収集をした後、俺たちは少し本を読ませてもらうことにした。具体的にはこの国の成り立ちや貴族制度について本を読むことにした。
◆
300年前:建国。この時、王家と公爵家は一つの家系だった。
250年前:スタンピードや飢きんが起こる
240年前:考え方の違いから王家が二つに分かれる。それが現王家と現公爵家。
現王家「洗脳魔法は断じて使ってはいけない禁忌である」
現公爵家「洗脳魔法を使ってでも暴動は阻止すべきである」
~戦乱の世に:20年戦争~
215年前:現公爵家が政争に負け、現王家が後を継ぐようになる。
この時にゾーディアック一家は王族→公爵家になる。
180年前:王都大震災
→これより前の歴史書の多くが失われる。
以降は比較的安定した政治が行われていたらしい
◆
「洗脳魔法ですか……。怖いですね……」
一緒に読んでいた宮杜さんが少し震える。
「確かにね。もし洗脳魔法なんてものがあっていいなら、今回の事件の解決のしようがなくない?」
暁先輩が苦笑しながらそう言った。確かに洗脳なんてものがあっていい世界なら、推理のしようがなくなってしまう。ノックスの十戒にも書かれている「中国人(並外れた身体能力を持つ怪人)を登場させてはならない」に通ずるものがあるな。
「その心配はないですわ。洗脳の魔道具は既に破壊されており、今の世には存在しないはずです。また、洗脳魔法を使える人も存在しません」
そう指摘したのはリースさん。この世界の住民が言っているのだから、正しいと考えても良いだろう。
いやまあ、深読みするなら「リースさんが知らないだけで実は誰かが魔道具を隠し持っている」なんて可能性はあるだろうけど。でも、それを言い出すと話が進まないからな、今回の事件で敵は使っていないと考えてしまってOKだ。
という話をしていたところで、資料室のドアが開いた。あのドアは公爵家の人間でないと開けれないはず。つまり、今来たのは……。
「リース? 少し来てくれないか?」
「あ、はい父上!」
俺とリースさんは散らかしてしまった本を片付けようとするが、スコーピオ公爵は「そんな事をしている場合じゃないから、今すぐ来てくれ」といった。
「何があったのですか?」
「イアソン様がわざわざこちらまで足を運ばれたのだ」
「「「ええ?!」」」
リースさん、そして俺たちは慌てて資料室を後にした。
◆
その後、リースさんとスコーピオ公爵は応接室へと入っていった。手持ち無沙汰になってしまった俺たちは、ホールを警備していたベータさんに話しかけてみる。
「お疲れ様です、ベータさん」
「おお、君たちか。どうだね、何か分かったかね?」
「いえ、流石にまだ何も……。えっと、イアソン王子が来ているとか。何があったのでしょう?」
「ああ、それな。イアソン様もこの事件を調査しているんだ」
「王子からしたら自分の婚約者が誘拐されたわけですものね」
「そりゃあ、調査に乗り出しますよね」
「そういえば、王子直属の憲兵が調査した……みたいな話もありましたよね」
「そういう事だ。で、もし何かあったらと思うといてもたってもいられなくなったとかで。わざわざこちらまで来られたそうだ」
「なるほど」
「王子様?がこんな危ないことをして大丈夫なんですか?」
「駄目だろうけど……言う事を聞かなかったんだろうな。陛下も許可したらしいぜ」
この後、少しだけ雑談してから、俺はベータさんにとある問いかけをした。
「そういえばベータさん、リース様に秘宝の在り処についての話をしましたか?」
「いいや? 俺達からは何も。けど、エリー様とは何度か手紙のやり取りをしていたし、内容はそこで知ったと思うぞ」
「そうなんですね」
「ああ、そうそう。スコーピオ様もリース様もあと数時間は応接室に籠りっぱなしだと思うから、いったん部屋に帰ってもいいぞ」
「いいのですか?」
「ああ。ここは俺たちに任せとけ」
◆
一度、与えられた部屋に戻った俺たち。ここで改めて状況整理をすることにした。
「今までの会話でおかしなところがいくつかあったよな? 改めて整理してみようか」
「うん。まずは秘宝の在り処について『魔力を捧げよ』って書かれた物と『二人分の血を捧げよ』って書かれた物がある事だよね」
「特に二つ目は誰が置いたのか見当がついていない、と」
「一つ目の物はエリーさんを誘拐したアルゴとやらが持って行ったと考えて良いですかね?」
「普通に考えれば二つ目は捜査を撹乱するために置いて行ったものと考えられるけど、そうだとすると、なんで事件発生から二日後に見つかったのか分からないって話だったな」
「そして、二つ目がリース様の発言の矛盾点ですね」
「ああ。ベータによると、リースさんとエリーさんは手紙のやり取りをしていたと考えられる。実際、リースさんは秘宝の在り処について『魔力を捧げよ』と書いてあったと言った」
「けど、本人は『全くやり取りをしていない』と言った。矛盾している」
「「「うーん……」」」
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