其処で嘗てあった事、Part4
「それでは二階を案内しますね。と言っても、二階はあまり案内できる場所がないのですが……」
「というと?」
「二階はプライベートスペースになっていますので」
二階に上がった俺たちは順番に「ここが○○の部屋で……」と教えてもらった。
□:通路
|:三階への階段
=:一階への階段
A:スコーピオの部屋
B:リースの部屋
C:空き部屋
0~9:客人が泊まる用の部屋
0123456789
□□□□□□□□□□ 北
AA□ == □|| 西+東
BB□ □CC 南
俺たちが自由に使っていい部屋は4番の部屋らしい。
0~3番には騎士団の人が泊まっているらしく、特に0番はアルファとベータの部屋とのこと。
「早速ですが、今からアルファさんとベータさんにお話を伺っても?」
「いいですよ。その前に三階も案内しましょうか? ただ、三階は我々使用人の部屋ですので、見ても意味がないと思いますが」
おっと考えてもなかった。ゲームでは三階の描写は最低限で、詳しくは語られなかったからなあ。まあつまりは三階にはいく意味がないという事だ。だから俺は。
「そうなんですね。じゃあ、三階は行かないでおこうと思います」
と言った。
◆
さて、アルファさん、ベータさんから情報を聞き出すわけだが、三人には「まずは俺からいくつか質問させてくれ」と言ってある。最低限知っておかないといけない情報を引き出そうと思う。
「アルファさん、ベータさん。わざわざお時間いただき感謝します」
「いやいや気にするな!」
「僕達も情報を整理しようと思っていたところですので」
さて、まずはベータさんからお話を伺おう。この人がエリーさんと一番親しかったはずだからな。
「まずはベータさんからお話を伺いたいのですが、エリーさんの護衛を長らくされているのですよね?」
「はい。学園に入学するまではずっと」
「さすがに女子寮の中には入っていけないからな」
「なるほど。ではエリー様が入学してからは、全く会っていない?」
「いえ、時々会っていましたよ。彼女が学園外に出るときは、僕が護衛していました」
「ベータとエリーは比較的年が近いからな。話も合うのだろう」
「そうなんですね。その時、彼女を狙っているような視線は感じましたか?」
「僕の実力不足かもしれませんが、特に感じませんでした。もし、事前に知っていたら、こんな事にならずに済んだかもしれないのに……」
「……嫌なことを思い出させてしまってすみません」
「いえ、大丈夫です。情報共有は重要ですから」
「ところで、王子との婚約が決まってから、性格が変わったと聞きました。彼女の前後を知る者として、どうでしたか?」
「そうですね……。自分がフォルテであったことを強く喜んでいる、ように感じました」
「そうなんですね。ではエリー様が『秘宝の在り処についてのメモが見つかった』ことを周囲に自慢げに話していたのもその一環だったのでしょうね。で、それを聞かれた結果、今回の騒動になったと」
「そうなりますね」
「エリー様は『ここにあるみたいだから取りに行きたい! 付いてきて』みたいな話をしましたか?」
「はっきりと『探しに行く』とは言っていませんでした。というのも、メモは汚れていてはっきりとは読めなくなっていましたし……」
「あなたもメモを見たんですね?」
「はい」
「なんて書いてあったかは覚えています?」
「ええと、詳しいところは覚えていませんが『秘宝は仕掛けを解かないといけない』とか『その宝を手にするには、公爵家の者の魔力が必要』とかだったと」
「魔力? 俺が聞いた所によると『公爵家の血が二人分必要』だった気がするんだが……」
ここでアルファから指摘が入る。俺達もそう聞いたよな。
「え? そうでしたっけ? すみません、勘違いかもしれません」
「ちょっと待ってください。ここは勘違いで済ませてはだめですよ!」
俺の言葉にその場にいた二人+三人の視線が一斉に俺に向いた。俺はコホンと一息挟んでから続きを話した。
「流石に『魔力』と『血液』は違い過ぎるでしょう。実はこの事件を聞いた時から疑問だったんです、どうして秘宝の在り処についてのメモが彼女の部屋から発見されたのか」
「確かにそうですね」
「実は俺も疑問だったんだ」
「普通ならそのメモと一緒に誘拐するよね」
「私もそこ、実は疑問に思ってました!」
「なんか怪しいよね~!」
「つまり、もしかしたら『公爵家の血が二人分必要』ってのが誰かが仕組んだ嘘なのかも」
「おい、ベータ。なんでそんな重要な事、今まで気が付かなかったんだよ!」
「だって、『公爵家の血が二人分必要』なんて話、聞いてませんでしたし……」
この後、少しだけ詳しく話を聞くとアルファ以外の騎士団メンバーは「リースも狙われる可能性がある」という事しか聞いていなかったそうで。だからこの事実に気が付かなかったそう。
「アルファさんに聞きたいのですが、結局アルファさんはどういう経緯で『血が必要』というメモについて知ったのですか?」
「俺は陛下から聞いたんだよ『憲兵がこんなものを見つけた、だからスコーピオやリースも狙われるかもしれない』ってな。ああ、憲兵って言うのは事件現場の検証をしたりする人だ」
わざわざ憲兵=現場検証する人と教えてくれる当たり、迷宮は親切だと思う。
「そうなんですね」
「問題は、なぜ誘拐犯は偽のメモを残したか、だよな」
「そりゃあ、捜査をかき乱すためでは?」
アルファさんがつぶやき、ベータさんはそれに不思議そうな顔を向ける。
アルファさんはやれやれといったように首を振って、ベータさん、そして俺たちに向かって自分の考えを話し始めた。
「事件をかき乱すなら、もっと関係のないことを書くべきだろう? 極端な話、『隣国の街に埋まってる』とかさ。それに、二人目の誘拐も仄めかすような書き方をしたら、もっと捜査が拡大する可能性があるだろう?」
「確かに……! じゃあ、どういう真意があると兄上は考えて?」
「それがわかれば困らないんだが……」
「ところで、もう一つ疑問があります。それが例のメモの発見が事件発生から二日も経っている点についてです」
「確かに! 捜査を攪乱したいなら、もうちょっと見つかりやすい場所に出しておけばいいのに」
「そもそも一日遅れて見つかったこと自体、奇妙ではあるよな」
「憲兵の中に裏切者がいる可能性は?」
「憲兵の中となるといるかもしれないが、今回の捜査はイアソン王子やぺリアス王子の直属の特殊部署が行っているからな。裏切りの心配はゼロに近いと思うぞ」
その後、あれこれ意見を出し合ったが、「それだ!」という意見は出なかった。
◆
【ベータの証言】
・エリーが学園に入学後も、時々護衛を務めることもあった。
・エリーの性格が変わったのは「自分がフォルテであったことを誇りに思うようになったから」(※推測)
・秘宝のありかを示すメモには「公爵家の者の魔力が必要」と書かれていた。
【アルファの証言】
・憲兵が偽(?)のメモを発見。陛下経由でアルファはそのことを知った。
・今回の事件を調査した憲兵は、王子直属の特殊部隊である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます