其処で嘗てあった事、Part3
メイドのアンに案内されて、屋敷の間取りを確認することになった。まずは一階から。
「すでに見ているとは思いますが、ここが玄関ホールです」
屋敷に入ってすぐの場所だな。来訪者の目に留まるからか、非常に立派な作りになっている。天井は吹き抜けになっていて、開放感がある。
玄関ホールの南側が出口で、東西に大きな扉が一つずつある。北側には二階へ上がるための大きな階段があり、階段の両脇には小さな扉がある。
「どちらから見て回りますか?」
・階段の左横の小さな扉
・階段の右横の小さな扉
・西(左)側にある大きな扉
・東(右)側にある大きな扉
・二階へ
「えっと、階段の左横の小さな扉、あそこは先ほどまでいた応接室ですよね?」
俺は左奥にある扉を指さした。
「ええ、そうです。何か気になることでも?」
「いえ、応接室に入って左にも扉があったと思うのですが、あれは何だったのかなと」
「ああ。あれは厨房につながっている扉ですよ」
「厨房に? ああ、そういえばあの扉から紅茶が運ばれてきましたね」
「そうですね。来客に紅茶やケーキを運ぶために設置された扉なんです」
「じゃあ、階段の右横にある小さい扉は何があるんですか?」
七瀬さんは右奥を指さしながらそう尋ねる。アンは少し困った顔をしてから話し始めた。
「あちらには地下への階段があって、地下には資料室と魔道具室があります。が、入るにはスコーピオ様やリース様が一緒でないといけませんので……」
「そうなんですね」
「スコーピオ様はお忙しいはずですが、リース様なら今日は空いているはずです。気になるようでしたら、後で案内してもらうと良いでしょう」
「分かりました」
え、そんな重要な場所に俺たちを案内していいの?と思わなくもないが、そこを気にしていては話が進まないから考えてはいけない。あれだ、青い服に赤色の蝶ネクタイを着た某探偵が小学生のくせに事件現場にずかずか入っていけるのと似た感じだ。「そこにツッコミをいれては話が成り立たない」ってやつだ。
「じゃあ次は西側の大きな扉。あちらは何があるのでしょう?」
今度は宮杜さんが左を指さしてそう尋ねた。
「あちらは大広間、あるいは舞踏室ですね。あちらなら入れますよ。付いてきてください」
アンに連れられて入った大広間は、舞踏室とはかけ離れた見た目をしていた。大広間には多数の机といすが並べられており、どちらかというとフードコートに近い雰囲気を醸し出している。
「舞踏室……には見えませんね」
「ええ。四日前から滞在している騎士団の皆様が食事する場所にしていましたので、このようなレイアウトになっています。普段は机も椅子もないですよ」
「なるほど。あれ、騎士団って派遣されたままなんですか? 裏切者がいるかもしれないと聞いていたので、てっきり騎士団はもう帰ったのかと」
「ええ、かなりの人数帰っていただきましたが、騎士団長とその弟、その他数名は残っています」
「そうなんですね。その人達に後で話を聞いてみてもいいですか?」
「ええ。ちなみに、騎士団長の弟さんであるベータは、小さいころからエリーの護衛をしておりました。彼が裏切ることはまずないと考えて頂いて問題ないです」
騎士団長アルファとその弟ベータは、この事件について調査している第一人者的な存在だからな。この人たちに話を聞けば、色々と情報を教えてもらえる。
特にベータは信頼できる存在であり、彼の証言は事件解決の手掛かりとなるんだ。おっと、これ以上はネタバレになるな。
その後、舞踏室の奥(北側)にある厨房も少しだけ見せてもらってから、俺たちは玄関ホールに戻ってきた。
「じゃあ、次は東側の部屋を見ても?」
暁先輩が東側に見える大きな扉を指さす。
「ええ。あちらはギャラリー、遊戯場、そして小さな書庫があります」
ギャラリーと呼ばれている部屋に入ってまず目に入ったのは恐竜の骨格標本。他にも絵画や彫刻、隕石などが置かれている。
「すごいですね……。いくらかかってるんだろう……」
「こんなもの、玄関の近くに置いていて大丈夫なんですか?」
「そりゃあ、盗まれたり壊されたりしたら困りますけど。とはいえ、魔道具類と比べたらはした金みたいなものですからね。これらで目を引いて、地下に保管されている魔道具が盗まれないようにしている……とスコーピオ様はおっしゃってました」
「なるほど~。あ、向こうにあるのはビリヤード台ですか?」
「ダーツもある! ちょっとやってみたい! シュ! シュ!」
「こら、先輩。遊んでる場合じゃないでしょ?」
七瀬さんがビリヤードを発見してそっちに駆けていった。また暁先輩はダーツを発見し、矢を投げる手真似をしている。
「そうですね、ビリヤードやダーツを楽しむことができます。それで、その向こうにある部屋が書庫ですね。見て行かれます?」
「よいのですか?」
「ええ、問題ないですよ」
書庫は通常ルートの時にヒントを見つけた場所だな。ただし、前回来たときと違って、全部ちゃんと読むことができる本である。呪いの本は置かれていない。
「植物辞典、動物辞典、魔物辞典。歴史書。時間があれば読んでみたいです」
「ここはいつでも開いていますので、好きな時に読んでいいですよ。もちろん、夜には護衛をしてもらいますが」
「それはもちろん」
【1F】
厨:厨房
大:大広間(舞踏室)
応:応接室
☆:玄関ホール
=:二階への階段
ギ:ギャラリー
遊:遊戯場
本:書庫
■:地下への階段
厨厨厨応応応■本本本
大大大応応応■本本本 北
大大大☆==☆ギギ遊 西+東
大大大☆☆☆☆ギギ遊 南
◆ あとがき ◆
ご報告があります。
なんと、本日(5月3日)、PVが100Kを超えました! わ~パチパチ!
この作品を投稿し始めたのが今年(2023年)の1/1、そこから毎日投稿し続けること約4か月で100K達成という事になりますね。ここまで長かった……。
この作品、実は一度投稿すること自体を諦めていた作品だったんです。そのまま約半年放置していたのですが、ある時読み返して「せっかく考えたこの設定を使わないのはもったいない」と思い、改稿に改稿を重ね、納得の行く形にすることができた、という過去があります。
あの時「改稿しよう」と思って本当に良かったと思っています。
改めまして、この作品をここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。今後も本作を楽しんで頂ければ幸いです。
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