焼き肉パーティー、実食

 ドラゴン肉、正確にはビッグサンドトカゲのドロップアイテム「ビッグな肉」を捌き終えた俺と桜葉先輩。ちょうどそのころ、他の人たちが集まってきた。


「うわあ、お肉がいっぱいー! すごいね、いくつあったの?」


「これで肉一個分ですよ」


「え? あ、そうかドラゴンの肉だもんね。そりゃあ大きいかー! あ、何か手伝う事ある?」


「じゃあ、この鶏肉を炒めてもらえます? スープに入れる用なんです」


「りょーかい!」


「他の方は炭の準備をしていってくださーい!」


「「「おっけー!」」」


 この学校では、薪や炭から火を準備する実習があったりする。卒業後、職種によっては屋外での活動が中心になるからな。そこでキャンプファイヤーも起こせないのでは話にならないからな。


「やっぱり皆さん、作業が早いですね。中学の頃のグダグダキャンプファイヤーとは大違いです」


「ははは、それはそうだろうなあ。さて私達ももう一仕事しないとな」


「ですね。まずはお肉に下味をつけないとですね」



 それから少しして。お肉の準備も整い、スープも仕上がって、火の準備も整った。「どうする?」「乾杯とかしようか?」「なら部長、音頭を取ってください」ということで川崎先輩(部長)が前に出てきた。


「え、俺? 今回は桜葉がするべきでは?」


「いえ、私はこういうのには向いてないですから?」


「そうか? うーむ、なんか気が引けるがまあいいか。それじゃあ、カンパーイ!」


「「「カンパーイ!」」」


 グラスを掲げ乾杯。あ、もちろん全員未成年だから注がれているのはソフトドリンクだぞ。


「いざ実食! 楽しみだな~」


 金網の上に鶏肉を並べる。俺の班は七瀬さん、宮杜さん、神名部さんの4人グループだ。なお、暁先輩は桜葉先輩の班に混ざっているからここにはいない。


「赤木君、味見のためにいくつか食べてたのでは」


「え、神名部さん見てたの?」


「うん。ばっちり見てた」


「……でもほら! 味見と実食は違うじゃん?」


「気持ちは分かる」


「だろ? とはいえ、俺はもう味見してるってバレちゃったし三人から先に食べて」


「いえ、私も実は味見で食べましたので…」

「私も味見したからあとでいいよ」


「「「じゃあ……」」」


「え、私? でも私、料理手伝ってないし後回しでいいよ!」


「いいからいいから。食べてみなって! ほら、あーん!」


「え?! あ、あーん」

「?!」「おー」


 七瀬さんはドラゴン肉をぱくりと頬張った。「あちゅあちゅ! ハフハフ」と言いつつ、あふれ出す肉汁の旨味に顔をほころばせる七瀬さん。


「ごめん、火傷しなかった?」


「全然大丈夫! 自己回復もできたし!」


「その手があったか! それで、お味は?」


「うん、美味しい! けど冷静に味わうと鶏肉と大差ない気も……」


「だな。まああれだ。人間って言うのは情報を食べる生き物だから。『これは珍しいドラゴン肉です』って言われたら、なんだかいい食事をした気分になるもんだ」


「確かにそうかもね~。あ、こっちの焼けたみたい。今度は私から、あーん♪」


「ええ! ちょ、これ恥ずかしいな……。あーむ。うむうむ。うん、美味しい」


「わ、私からも! どうぞです!」


「ちょ、宮杜さん? その一口は大きすぎない……?!」



「なるほど。これが噂に聞く修羅場……」


「神名部さん、一応言っておくと本物の修羅場はもっと殺伐としているからね」

「私たちのはただのじゃれあいですから」


「? そうなの?」


「そうなのです」

「なんなら神名部さんも食べさせてもらったらどうですか? なんだか自分で食べるのと違って新鮮ですよ」


「いいの? じゃあ、あーん」


「え? 神名部も? ほ、ほら、熱いから気を付けてー」


「……。ちょっと恥ずかしいけど、楽しかった。じゃあ私からも、どうぞ」


「ありがと、いただきます」



 次はスープ。辛党でなくても十分楽しめる辛さにしているみたいだけど、果たして。


「あ、なんだ。全然辛くない……」

「そうね、全然大丈夫そう……」

「このくらいの辛さなら食べれます……」

「うん。美味しい……」


「「「「?!」」」」


 口の中がビリビリビリー!! ビリビリシメジの辛さは、後から来るタイプみたいだ!

 ぱっと飲み物を手に取る。ごくごく。……これ強炭酸のドリンクじゃん! 口が、口がーー!


「ぷはー! 念のためリンゴジュースを隣に置いてて助かった~」

「炭酸を頼まなくてよかったです」

「赤木君、大丈夫?」


「大丈夫……。心配してくれてありがと。それにしても、このままじゃあ飲めないな。粉チーズ貰ってくる~」



 とまあちょっとしたドタバタもありつつも、俺たちは楽しくドラゴン肉を堪能したのだった。ごちそうさまでした。






 一方、二年生女子の班では


桜葉「瑠璃。あの食べさせ合いっこに加わってきたらどうだ?」

暁「ええ?! そんなの恥ずかしいし! それにわざわざ行くのは……」

桃華「行ってきなって!」

薫子「私達に気を使わなくてもいいから!」

金子「ゴーゴー!」

暁「えー、うーん。やっぱりやめとく! そういうのは別の機会に!」


 という会話があったとか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る