焼き肉パーティー、実食
ドラゴン肉、正確にはビッグサンドトカゲのドロップアイテム「ビッグな肉」を捌き終えた俺と桜葉先輩。ちょうどそのころ、他の人たちが集まってきた。
「うわあ、お肉がいっぱいー! すごいね、いくつあったの?」
「これで肉一個分ですよ」
「え? あ、そうかドラゴンの肉だもんね。そりゃあ大きいかー! あ、何か手伝う事ある?」
「じゃあ、この鶏肉を炒めてもらえます? スープに入れる用なんです」
「りょーかい!」
「他の方は炭の準備をしていってくださーい!」
「「「おっけー!」」」
この学校では、薪や炭から火を準備する実習があったりする。卒業後、職種によっては屋外での活動が中心になるからな。そこでキャンプファイヤーも起こせないのでは話にならないからな。
「やっぱり皆さん、作業が早いですね。中学の頃のグダグダキャンプファイヤーとは大違いです」
「ははは、それはそうだろうなあ。さて私達ももう一仕事しないとな」
「ですね。まずはお肉に下味をつけないとですね」
◆
それから少しして。お肉の準備も整い、スープも仕上がって、火の準備も整った。「どうする?」「乾杯とかしようか?」「なら部長、音頭を取ってください」ということで川崎先輩(部長)が前に出てきた。
「え、俺? 今回は桜葉がするべきでは?」
「いえ、私はこういうのには向いてないですから?」
「そうか? うーむ、なんか気が引けるがまあいいか。それじゃあ、カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
グラスを掲げ乾杯。あ、もちろん全員未成年だから注がれているのはソフトドリンクだぞ。
「いざ実食! 楽しみだな~」
金網の上に鶏肉を並べる。俺の班は七瀬さん、宮杜さん、神名部さんの4人グループだ。なお、暁先輩は桜葉先輩の班に混ざっているからここにはいない。
「赤木君、味見のためにいくつか食べてたのでは」
「え、神名部さん見てたの?」
「うん。ばっちり見てた」
「……でもほら! 味見と実食は違うじゃん?」
「気持ちは分かる」
「だろ? とはいえ、俺はもう味見してるってバレちゃったし三人から先に食べて」
「いえ、私も実は味見で食べましたので…」
「私も味見したからあとでいいよ」
「「「じゃあ……」」」
「え、私? でも私、料理手伝ってないし後回しでいいよ!」
「いいからいいから。食べてみなって! ほら、あーん!」
「え?! あ、あーん」
「?!」「おー」
七瀬さんはドラゴン肉をぱくりと頬張った。「
「ごめん、火傷しなかった?」
「全然大丈夫! 自己回復もできたし!」
「その手があったか! それで、お味は?」
「うん、美味しい! けど冷静に味わうと鶏肉と大差ない気も……」
「だな。まああれだ。人間って言うのは情報を食べる生き物だから。『これは珍しいドラゴン肉です』って言われたら、なんだかいい食事をした気分になるもんだ」
「確かにそうかもね~。あ、こっちの焼けたみたい。今度は私から、あーん♪」
「ええ! ちょ、これ恥ずかしいな……。あーむ。うむうむ。うん、美味しい」
「わ、私からも! どうぞです!」
「ちょ、宮杜さん? その一口は大きすぎない……?!」
「なるほど。これが噂に聞く修羅場……」
「神名部さん、一応言っておくと本物の修羅場はもっと殺伐としているからね」
「私たちのはただのじゃれあいですから」
「? そうなの?」
「そうなのです」
「なんなら神名部さんも食べさせてもらったらどうですか? なんだか自分で食べるのと違って新鮮ですよ」
「いいの? じゃあ、あーん」
「え? 神名部も? ほ、ほら、熱いから気を付けてー」
「……。ちょっと恥ずかしいけど、楽しかった。じゃあ私からも、どうぞ」
「ありがと、いただきます」
次はスープ。辛党でなくても十分楽しめる辛さにしているみたいだけど、果たして。
「あ、なんだ。全然辛くない……」
「そうね、全然大丈夫そう……」
「このくらいの辛さなら食べれます……」
「うん。美味しい……」
「「「「?!」」」」
口の中がビリビリビリー!! ビリビリシメジの辛さは、後から来るタイプみたいだ!
ぱっと飲み物を手に取る。ごくごく。……これ強炭酸のドリンクじゃん! 口が、口がーー!
「ぷはー! 念のためリンゴジュースを隣に置いてて助かった~」
「炭酸を頼まなくてよかったです」
「赤木君、大丈夫?」
「大丈夫……。心配してくれてありがと。それにしても、このままじゃあ飲めないな。粉チーズ貰ってくる~」
とまあちょっとしたドタバタもありつつも、俺たちは楽しくドラゴン肉を堪能したのだった。ごちそうさまでした。
◆
一方、二年生女子の班では
桜葉「瑠璃。あの食べさせ合いっこに加わってきたらどうだ?」
暁「ええ?! そんなの恥ずかしいし! それにわざわざ行くのは……」
桃華「行ってきなって!」
薫子「私達に気を使わなくてもいいから!」
金子「ゴーゴー!」
暁「えー、うーん。やっぱりやめとく! そういうのは別の機会に!」
という会話があったとか。
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