出るまで回せば排出率100%
「ねえ、赤木君? もしかしてキャプテンスケルトンのSRドロップって、あのピストルだったり?」
七瀬さんが期待を込めた表情で俺を見る。それに対し俺は大きく頷いた。
「正解。その名も『海賊のピストル』、性能は魔力変換効率70%、攻撃に光属性が付与される……だったはず」
「70%?!」
「すっごいですね、売ったら幾らになるんでしょう……」
「というか、赤木君はどこからその情報を……?」
おおっと、暁先輩がまずい疑問を抱いてしまった。俺は誤魔化すように今後の予定を伝える。
「SRドロップってことは排出率5%だ。で、今回は暁先輩から『SR排出率2倍』のアクセサリーを借りるから排出率10%に引き上げられている」
「ということは、10回倒せばいいんですね」
「ああ、まあそうだな。けどもっと早くに出るかもだし、逆に20回倒しても出ない可能性もある。10回以内に出る確率はせいぜい65%だからなあ」
「そっか、そう考えると渋いですね……」
「1
「そうですね、その計算法で合ってます。とここで偉大な先人の言葉をご紹介。『ガチャは出るまで回せば排出率100%』、有名なセリフだな。だから安心すればいい」
「全然安心できないよ~!」
「それ、ソシャゲの廃課金者のセリフじゃないですか……」
「しかも、キャプテンスケルトンを倒すのって道中4時間はかかるから……」
「そうですね、土日みたいな時間がある時じゃないと挑戦できないんですよね。まあ、海辺を散歩するくらいのつもりで、のんびり楽しみましょう。今日の午後も行こうと思ってるんですが、いいですかね?」
三人は頷いてくれた。
ちなみにだが、200層、300層、500層なんかをクリアするようになると「R以上確定チケット(使い捨て)」「SRドロップ率33%」「SR確定チケット(使い捨て)」みたいなアイテムが手に入るようになる。
そう、本来裏ボスはこういうのを手に入れてから挑むべきなんだ。それを無理やり先回りしようとしているから、こんな風に周回しなくちゃいけない羽目になるんだ。
◆
道中4時間と言ったが、それは一回目の探索でかかった時間。二回目は3時間半ほどでボスエリアまで来ることができた。
二回目はレアドロップの「秘伝の爆釣れエサ」という釣りの餌が落ちた。これを使うと、魚型のモンスターを釣り上げることができるという特殊なアイテムだ。せっかく手に入ったし、機会があればのんびり魔物釣りでもしよう。
次の日、つまり日曜日の午前・午後は共にノーマルドロップしか落ちなかった。残念。その代わりといってはなんだが、魔石を売った値段でちょっと豪華なご飯を食べて心の安定剤にした。
月曜日。魔法杯での事件があってから初めての登校だ。途中で紅葉さんに見つかって「不純よ!」とお𠮟りを受けたりもしたが、それ以外は特筆すべき事件も起こらずクラスにたどり着くことができた。
「お、赤木おはよー! って、わーお。文字通り両手に花じゃないか」
「朝から仲の宜しいことで~」
「え、付き合ってるの? いつから?」
そしてクラスに入ると質問攻めにあった。まあ、そうなるよなあ。
「いや、まだ付き合っては……」
「うん、赤木君曰く『付き合うなら結婚まで見越したい』って言ったから」
「なるほど、それじゃあ今日一緒に登校してきたのは牽制?」
「そゆこと~」
意外にもクラスメイト達は好意的にとらえてくれた。(若干嫉妬の目線も感じたけど)
◆
こうして一週間が過ぎて、再び週末になった。
土曜日の午前もノーマルドロップ。
土曜日の午後もノーマルドロップ。
日曜日の午前もノーマルドロップ。
くっ! やっぱりそう簡単には出ないか……!
仕方がない、昼飯はちょっと豪華なものを食べよう。うん、そうしよう。
食堂へ向かう途中、暁先輩が「あ!」と叫ぶ。何かを思い出したようだ。
「ねえねえ、赤木君、赤木君! 確か今日って新しいお店がオープンする日だよね?」
「? ああ、そういえば! 確かピザのお店ですよね?」
「そそ! で、せっかくだし色んな種類食べたいからシェアしない?」
「いいですね。二人はどう?」
「私もピザにしようと思っていたので是非!」
「ピザですか、私もピザ好きなんで大丈夫です!」
満場一致、今日は四人でピザパーティーをすることになった。
「一人ずつこれ食べたいっていうのを言っていこうか。俺は『炭火焼ビーフ&チキン』ってやつが気になるかな」
「あ、いいねそれ! じゃあ、私は……『モッツァレラチーズ&トマト』かな」
「じゃあ、私は……。『明太マヨのポテサラピッツア』で」
「最後私ね? 私はやっぱりあれ! 『ホタテたっぷり、海鮮ピッツア』!」
「おーけ、改めてさっきの4種類で問題ない? なさそうならそれで決定するけど」
俺を含め四人ともアレルギーや苦手な食べ物はなかったはずだけど一応な。……問題なさそうだし、これで決定。あとはこの長蛇の列を並ぶだけだ。
30分以上待たされることになったが、待った甲斐あると思えるクオリティーのピザだった。ぜひまた利用したいな。
◆
そして午後。キャプテンスケルトンにとどめを刺した俺たちは、ドロップアイテムを拾いに行って……。
「お!」「これって!」「まさか!」「え、どれどれ?!」
そこにはクラッシックでかっこいい見た目のピストルが落ちていた。正真正銘『海賊のピストル』である。
「最初の一回もカウントに入れると、8回目でのドロップね!」
「8回以内でドロップする確率は……ざっくり60%くらいだから今回はかなり運が良い方だな! というわけで七瀬さん。さっそく装備してみて」
「すっっっごーい! かっこいい! ほんとに私が使っていいの?」
「もちろん、そのために周回したんだから」
「私は使わないですしね」「右に同じく」
「本当にありがとうございます。えと、こんな感じかな?」
西部劇っぽい構えで銃をもってポーズをとる七瀬さん。うん、さまになっててかっこいい!
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