召喚系ボス!

 真っ先にキャプテンスケルトンを攻撃したのは暁先輩だった。彼女の十八番おはことも言える地上から弾幕、地下からトラップを出す攻撃を放つも、それはキャプテンスケルトンに当たる前に見えない壁でブロックされてしまう。


「無効化された?!」

「もしかして土属性無効だったり?」

「遠距離攻撃完全無効とかだったら厄介ですね」


「大丈夫、そこまで厄介な奴はかなり深い階層じゃないと登場しないから」


 40層はまだまだ序盤だからな。


「じゃあなんで……?! あ、なるほど、もしかして」


 キャプテンスケルトンが鞭を地面に叩きつけると、地面に数十個の魔方陣が生成された。そしてその様子を見て、先輩は攻撃が無効化された原因が分かったみたいだ。


「流石は先輩、もう分かりましたか?」


「うん、これって召喚系ボスよね?」


「召喚系ボス?」

「確か50層のボスとかに見られる特徴でしたっけ?」


「うん、宮杜さんの言う通り。挙動が50層ボスの『地獄郷のディストピア楽団アンサンブル』に似ているの。で合ってる?」


「はい、その通りです。召喚系ボスは自分では戦わず、召喚した配下に戦わせるタイプのボスで、配下を倒しきったら本体にも攻撃できるようになります。という訳で配下が来ますよ!」


 地面に描かれた20個の魔方陣から骨の戦士が生成される。見た目は雑魚敵の「スケルトン」や「パイレーツオブスケルトン」と似ているが、それよりも厄介な性質を持っている。


「それじゃあ、攻撃開始! 『ライトニング』!」

「動きを止めるよ、『落とし穴』!」

「ふえ、骨さんがいっぱい……! 『アイスアロー』!」


 まずは遠距離攻撃。

 俺が放った『ライトニング』は広範囲光属性魔法に分類される。魔法杯の最中、名も知らぬ誰かが使っているのを見て俺も習得した。

 暁先輩は、奴らの立っている地面を陥没させた。ダメージは与えられないが、動きを封じるという意味ではなかなかいい攻撃だ。イメージとしては「階段であと一段あると思ったのになかった時」みたいになる。

 宮杜さんは骨の軍団に圧倒されつつも、得意のため攻撃を準備、発射する。どうでもいいが、宮杜さんはあの攻撃にアイスアロー以外の名前を付けたらいいのではないかと思う。例えば『百氷穿ひゃくひょうせん』とか。かっこよくない?


 一斉攻撃を受けるも、スケルトン軍団に入ったダメージは軽微だった。なぜなら盾を構えたスケルトンが前に出て、仲間を守ったからだ。


「な、なんだか統制が取れてる?」

「集団じゃなくて軍団みたいだね」


 そうこれが厄介なんだ。雑魚敵とは違って、彼らは統制の取れた行動をする。カラクリは後ろにいるキャプテン、彼が指揮を執っているのだ。キャプテンの指揮のもと、タンクが前に出て、後ろから遠距離攻撃部隊が魔法や弓を放ってくる。


「回り込むしかないな、七瀬さん!」

「了解!」


 俺と七瀬さんが左右から軍団に接近する。その間も正面にいる宮杜さんと暁先輩が絶えず攻撃を放っているから、奴らは俺たちの接近に対応できていない。


「横から失礼、『フラッシュボム』!」

「当てれるものなら当ててみな! なんて!」


 おお、七瀬さんのそのセリフ、避けタンクっぽい! そしてまさに七瀬さんの思惑通り、遠距離攻撃部隊が七瀬さんを攻撃し始めたが、七瀬さんはそれらを上手く躱した。


 っと、七瀬さんの動きを見ている場合じゃない。俺だって狙われてるんだ。

 俺の前に現れたのは剣と鏡の盾を装備したスケルトン。「さあ、俺と一騎打ちしようぜ」と言っているように見える。いいぜ、乗ってやろうじゃないか!


 鏡の盾は光属性攻撃を大きく軽減する性質がある。また、他の遠距離攻撃も効きにくいはずだ。

 となると近接攻撃をしないとな。飛び蹴り……と見せかけて空中に作ったシールドを使って空中でもう一段ジャンプ! スケルトンの背後に着地して、後頭部を攻撃する。どさっと倒れるスケルトン。

 すると、仲間のピンチを察知したのか他のスケルトンが俺を狙い始めた。おいおい、一騎討じゃあないのかよ。

 魔力感知状態に入って俺を狙う魔法一つ一つに集中、それらを対応する属性魔法で相殺する。と同時に目の前にいるさっき倒したスケルトンに光の剣を突き付けてその命を奪った。


 ……あれ、スケルトンって既に白骨死体だよね。すでに死んでいるのに「その命を奪った」っていうのはおかしいか?

 いやまあそんなことはどうでもいいか。



 その時、スケルトン軍団の足元がドゴッ!っと隆起した。暁先輩の攻撃だ。

 これによって一気に体勢を崩した一同。その隙に俺と七瀬さんは強そうな魔法兵に攻撃を加えて無効化する。

 またタンクも体勢を崩したことで、宮杜さんの攻撃が通るようになった。氷の矢じりがスケルトンの頭に突き刺さる。


 はじめ20体いたスケルトンも残り5体となった。そのタイミングでキャプテンが召喚魔法を発動。追加で30体のスケルトンを召喚した。



 合計35体となったスケルトン軍団。しかし俺と七瀬さんは距離を置かずに敵陣の中で暴れまわった。フレンドリーファイヤを恐れているのか、敵陣の中だと遠距離攻撃があまり飛んでこないことに気が付いたからだ。




 スケルトンの攻撃パターンに慣れてきたのか、程なくして35体のスケルトンを一匹残らず倒しきった。


 やっと終わった。そう油断したタイミングで……。


 バン!!


 キャプテンスケルトンがピストルを使って魔法を放った。



 え、お前そんなことできたの? そんなことができるなら最初から使えよ!

 はじめてキャプテンスケルトンと戦った人は誰もがそう思うだろう。一応これには訳があって、キャプテンスケルトン(というか召喚系ボス全般)は仲間を召喚している間は無敵になる代わりに攻撃ができないという制約を負っている……らしい。

 で、今は仲間がいなくなったから、無敵じゃなくなった。と同時に攻撃不可という制約もなくなり、ピストルを使えるようになったという訳だ。


 初見殺しなこの仕様を知っていた俺は、最後の一体が倒される前にキャプテンスケルトンの前に移動し、この攻撃を防ぐ準備をしていた。思考並列化も併用して銃弾(魔弾)の正確な位置を把握、シールドを使って攻撃を防いだ。


 まさか防がれるとは思っていなかったのだろう、一瞬キャプテン狼狽え、その隙を突いて俺は至近距離で光魔法を放った。攻撃の衝撃を殺すために後ろに下がるキャプテン。

 そこに宮杜さんと暁先輩の攻撃がぐさりと刺さった。そしてその攻撃をもってキャプテンの体が崩壊しドロップアイテムへと変わった。


 ドロップしたのは……ノーマルドロップの魔石(大)だった。残念。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る