可愛いと可愛くない
七瀬さんが使う武器を買う話は後々話し合う事にして、今は迷宮攻略だ。次に戦う魔物は「むっくりバード」という真ん丸な体型の鳥である。鳥の癖に飛ぶことができず、地面を歩いたり転がったりして移動する、なんとも不格好な鳥である。
「か、可愛い!」
「可愛いですね!」
そして可愛い事で有名な魔物だったりする。むっくりバードの強化版「ずんぐりバード」と合わせて、魔物可愛さランキングで堂々の一位を獲得している。(風兎調べ)
「可愛いって気持ちはよく分かるが、あの子も魔物だ。倒そう」
「うん、しょうがないよね」
「はい」
むっくりバード、ずんぐりバードは種々の風魔法を使いこなす。魔法を撃ち込んでも全て風のシールドによって阻まれてしまうから、こいつを倒すには近接アタッカーが必要だ。
という訳で宮杜さんはお休み。七瀬さんと俺がむっくりバードを倒した。
「お、向こうにいるのは」
むっくりバードを倒した場所から100メートルほど歩いた時、人っぽい「何か」がわらわらと歩いているのが目に入った。よくよく目を凝らすと、彼らには肉が付いていないことが分かる。
「骸骨?! あれって……」
「スケルトン、でしたっけ?」
スケルトンは骨だけの魔物だ。カタカタと笑う様子が不気味で、魔物可愛さランキングで堂々の最下位を獲得している。(風兎調べ)
「ちょっと怖いね」「私も苦手です……」
二人が俺の近くに寄ってきた。うん、確かに見た目は怖いよなあ。
「あいつらはただの魔物だから、怖がる必要はないぞ? けど、苦手なら俺が全部倒すけど」
「うんん、大丈夫」「私も平気です! これくらい乗り越えないと!」
「そう? じゃあ行くか」
スケルトンは今までの魔物と違って、いくつかの種類がいる。盾で味方を守るタイプ、剣を使うタイプ、弓を使うタイプ、魔法を使うタイプ、などなど。
まずは宮杜さんが魔法を発動。しかし、それは防がれてしまった。逆に向こうからも種々の魔法が飛んでくるが、大した威力では無いので全部相殺できた。
「そんなに強くはなさそうだね」
「だな。よし、俺が右から、七瀬さんが左から回り込もうか」
「分かったよ!」
人型の敵との戦い方は魔法杯前に散々練習したからな、俺も二人も上手く連携する事が出来た。
「はい、制圧完了。どうだった?」
「戦ってみたら意外と怖くなかったかも? 幽霊って言うよりもロボットみたいだったね」
「あ、それ分かります! 動きが機械的でしたよね」
「スケルトンは決まった動きしかしないからな。あいつらって脳が無いし」
「「確かに」」
◆
それから約1時間かけて俺達は迷宮探索を楽しんだ。
「今の所、余裕だな」
「そうだね」
「はい、問題ないです」
「じゃあ35層に行こっか」
サクサクっと31~34層を突破した俺達は、35層に入った。そして早速俺達はオバケダコを見つける。
「あ、あれって伊藤君のペットの!」
「オバケダコでしたっけ?」
「そうだな。……てか伊藤のペットって言い方は正しいのか?」
確かに伊藤はオバケダコをテイムしているけど。
でも、言われてみれば伊藤ってオバケダコを大切にしてるように見えるんだよなあ。オバケダコの「陸上では動きが遅くなる」という性質上、伊藤はオバケダコを両手で抱えたり頭に乗せたりして戦う。その様子がペットとじゃれ合っているように見えるんだよ。
おかげで伊藤は「タコの飼い主」としてちょっと有名だったりする。特に魔法杯一日目で伊藤は大活躍だったからなあ。
閑話休題
「伊藤と授業中に戦ったことがあれば分かると思うけど、オバケダコは攻撃モーションを見せてから攻撃するまでの時間が短い。注意して戦うぞ」
オバケダコを二匹倒し、オオシオマネキを倒し、キャモンを打ち落とし、ずんぐりバードとむっくりバードが二匹同時に俺達の前に転がりながら現れてびっくりしたりした。
そして、35層に足を踏み入れてから1時間ほど経ったとき、俺達はそれを見つけた。眼帯を付けた骸骨が10体ほどの群れをなして歩いていたのだ。
「あれが『パイレーツオブスケルトン』ね?」
「その通り」
彼らの名前はパイレーツオブスケルトン、海賊要素を足した骸骨である。ゲームでは「海賊といえばドクロマーク。ドクロマークと言えばスケルトン!」なんて言われていた魔物だ。
ただのスケルトンよりも強くなっているが、それでも行動パターンはさほど変わらない。がむしゃらに俺達を攻撃してくるだけ。やっぱり脳が無いんだな。
あ、そうそう。スケルトンのドロップアイテムはこんな感じ。
Nドロップ:錆びた武器
スケルトンが持っていた武器がドロップする。使い道は無い。
Rドロップ:石灰石
SRドロップ:ボーンナイフ
骨で出来たナイフ・極極稀に即死発動
「ボーンナイフが手に入ったけど……どうしよう?」
七瀬さんが困った表情で俺と宮杜さんを見つめる。
「俺は要らないなあ」
「私も使わないです」
「私も使いたくないなあ。なんだか不気味だし……」
「だよなあ……」
ボーンナイフは呪われてそうな見た目をしている。使うと呪わる、なんてことは無いが、少なくとも俺は使いたくない。
「不思議なのが、これに買い手がつく事だよなあ」
「ホント不思議よね……。誰がこんなの買うのかなあ」
◆
後日、別クラスの男子が「ふふふ、ボーンナイフを買ったんだ! カッコイイだろ?」と言っているのを聞いて、思わず吹き出しそうになった俺であった。
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