学生の屋台
第二試合を見終わると、ちょうどお昼。何かを買って食べようと思う。
「先輩方はどうする感じですか、午後も観戦します?」
「あーどうしようかな。明日に備えて休んでようかな?」
「私は瑠璃に合わせようかな」
「私もそうしようかな~」
「何か面白いことがあったら、教えてよ」
「了解しました~。宮杜さんはどうする?」
「私ですか? 私はせっかくですし観戦しようかなって思います。どんな人がいるのか知っておきたいですし」
「そっか。にしても、宮杜さんって体力あるよね。魔力が多いのは知ってたけど」
「あはは、そうですよね、自分でもびっくりしてます。入学前の自分だったら、既にヘトヘトで動けなくなってそうです」
曰く、中学生の頃は100メートル走るだけでヘトヘトになるような感じだったらしい。けれど、この学校に入学して以降は一気に体力が付いたようだ。それは能力に目覚めた事による身体の変化なのか、あるいは単純に毎日部活で体を動かしているからなのか。
「へー。フォルテになって健康になったって感じかあ。そう考えると、フォルテになって良かったな」
「……そうですね」
苦笑しながら頷く宮杜さん。あれ、そうでもない?
あー、うん。フォルテになった
ちなみに、男子の場合は「親に見られないって気楽だわ~」「一人暮らしって言っても、自炊しなくていいし。マジで
「コホン。せっかくだし屋台で何か買って食べようぜ」
「はい、そうですね! どれも食欲をそそられる物ばかりで……」
焼きそば、たこ焼き、アメリカンドッグ、ベビーカステラ、チョコバナナなどなど。
「凄いよな、お祭りで食べるような物が沢山並んでる」
「ですね! ……すみません、実は私、お祭りなんて行ったことが無いので、正直適当に言いました」
「あはは、実は俺も。テレビとかアニメ、漫画でしか『お祭り』を見た事が無いんだよな……。それはともかく。15分後にここで待ち合わせって感じにしようか?」
「はい、分かりました!」
物珍しそうにキョロキョロしながら去っていく宮杜さん。俺も昼飯を買わないと。
「はい、いらっしゃい!」
俺が目を付けたのは、メキシコ料理のお店。色んな種類のタコスを売っているようだ。
タコスは物凄くざっくり言うと、「メキシコのクレープ」みたいな感じ。ただクレープと違って、タコスはトウモロコシ粉を練って作った薄いパン(トルティーヤ)に具を乗せた物だ。
「牛肉、海鮮、トマト&チーズ、それからフルーツを一つずつ」
「は~い! 合計1200円ね」
「はい、これで」
フォルテメイア公式アプリで決済する。物が出来上がるまで少し時間があるようで、店員さんが話しかけてきた。
「君は一年生? どう、学校には馴染めてる?」
「はい、楽しくやってます」
「そっかそっか。私が一年生の時はホームシックだったよ~」
「え、ここの卒業生ですか?」
「いやいや、私は学生だよ? 三年生」
「ええ?! 学生がお店を……?」
「あ、フォルテ組は知らないのかな。えっと、この学校にはフォルテじゃない子とか、非戦闘系のフォルテの子が所属するクラスがあるでしょ?」
「はい。ああ、そこの学生は、魔法杯の間、屋台をするんですね」
「そういう事~。あ、出来たみたい」
◆
「あ、赤木君! お待たせしました」
集合場所で待っていると、宮杜さんがトテトテと走ってきた。時計を見ると時間ギリギリだ。あー、もしかしなくても焦らせてしまったかな。反省。
「あ、宮杜さん……それに七瀬さんも! 元気そうでよかった」
「やっほ、赤木君! うん、部屋でひと眠りしたの。もう完全復活だよ!」
「そっかそっか。じゃあ、一緒に観戦するか」
「うん!」
「にしても、凄い量を買ったな」
宮杜さんと七瀬さんが食べ物がたくさん入った袋を引っ提げている物だから、少しびっくりしてしまう。
「あー、うん。正直買い過ぎたと思ってる。ひっじょーに申し訳ないけど、一緒に食べてくれる? 二人じゃあ食べきれなさそうだから……」
「すみません、ついつい浮かれてしまって……」
「オッケー、余りそうなら食べるよ」
という訳で午後の二試合は三人で見る事になった。
第三試合、9組~12組は山本君のクラス(11組)が勝ち上がった。罠設置能力がやっぱり強いな。ちなみに罠は「敵を認識して爆発」なので、味方が踏んでも発動しない。なにそのご都合主義。ずるくない?(←お前が言うな)
あ、この試合では中央防壁法を使うクラスがいなくなった。俺達の試合、それから第二試合を見て「あれ、中央防壁法って弱くね?」と気が付いたようだ。
で。第四試合が凄かった。15組のクラスリーダーらしき女子が、えげつない活躍をしていたのだ。
「すっご! なにあの火魔法!」
「一気に10人が退場しましたよ!」
二人が言っているように、リーダーちゃんは火魔法の使い手のようだが、その練度が凄まじかった。俺の本気(属性魔法を解禁した場合)と互角、あるいはそれ以上の実力がありそうだ。
魔力感知状態に入ってじっくり観察させてもらったのだが、魔力量が宮杜さんの二倍近くある。それでいて、宮杜さんの様に魔力の奔流に流されたりせず、彼女は全魔力を完全にコントロールしている。
「魔力量もピカイチ、練度もピカイチだなあ。あれはヤバいな」
「近づけたらもしかしたら、だけど近づくまでの間に丸焼きにされるよね……」
「勝てるビジョンが見えません……。私が本気で作った氷の壁も、一瞬で打ち消されそうです……」
「15組が優勢だな。リーダーちゃん以外もそこそこ強いし」
「私達、勝てますかね……」
「どうだろ、正直、正面から殴り合ったら負けそうだな」
「作戦で勝つしかない、という事ね!」
「ああ。にしてもすげえなあ。決勝戦は団体行動を避けた方がよさそうか……」
集団で行動したら、真っ先に炎魔法の餌食になるだろう。
決勝戦は3日後。急いで作戦を練り直さなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます