決勝戦の前に

◆ 魔法杯二日目 ◆


朝:暁先輩と桜葉先輩のクラスを応援。桜葉先輩が大活躍し、見事決勝戦にコマを進めた。ちなみに、暁先輩も頑張っていたが、桜葉先輩程の活躍っぷりではなかったかな。


昼:七瀬さん、宮杜さんと共に暁先輩を祝った。桜葉先輩はクラスメイトと決勝戦に備えての敵情視察があるらしいので不参加。


夕方:自室に戻って、決勝戦で使う作戦を検討。


◆ 魔法杯三日目 ◆


朝~晩:(可能な限り)クラスメイトを集め、作戦会議を開いた。え、三年生の先輩を応援しなくていいのかって? 暁先輩曰く、「部活の先輩を応援しないといけない、なんて風習は無いよ」って言ってたから大丈夫だろう。



 さて、特に注意すべきクラスは何と言っても15組だろう。強力な火魔法を操る女の子(名前は紅葉もみじ陽菜はるなというらしい)がリーダーを務めているクラスだ。


「紅葉さんを倒して、リスポーンまでの時間を有効活用する感じかな?」


「それは厳しいと思うぞ。なにせ彼女、火魔法の癖に物理攻撃も防御してるくらいだし」


「じゃあ……どうするの?」


「紅葉さんに近付かれないように、逃げながら戦うしかないだろうな。それと仮に近づかれた場合でも、避ける事に専念すれば何とかなると思う。例えば七瀬さんなら、かなりの時間避け続ける事が出来るはずだ」


 紅葉さんの攻撃は、威力と言う点だけを見れば他の追随を許さないレベルだ。実際、あの攻撃は俺の無属性シールドでも防げないだろう。だから、正面から殴り合うのは得策ではない。

 しかし、そんな最強の攻撃を出せる紅葉さんにも弱点はある。それが「発射までに数秒のラグがある」という事。要は「溜め」の時間が必要なんだ。よって、避けタンクとして日々実力を上げている七瀬さんなら体力が尽きない限り避け続ける事が出来る。


「避けタンクの活躍の場って訳ね!」


「だな、期待してるぞ」


 あと、山本君のいる11組。罠看破系の魔法や強力な第六感があれば問題ないのだが、残念ながらこのクラスでそれを出来るのは俺だけ。

 しかし、偶然にも3組には魔法を無効化する魔法、通称「アンチマジック系」のスキルを持っている人がいた。普段はタンクとして活躍しているが、今回は罠の無効化を頑張って貰おと思う。


 6組(好こーピオンをテイムしている人がいるクラス)の対処は簡単だ。好こーピオンの特性を知っておけばOKだ。ただし、決勝戦では他の魔物を使ってくるかもしれないから、80層~100層辺りにいる魔物についての勉強会を開いた。


「お、俺ももっとすごい魔物をテイムして……」


 伊藤が対抗心を燃やしていたけど、それは却下だ。オバケダコ以上に役に立つ魔物となると、今の伊藤ではテイムできないだろう。




 まあそんな感じで俺達は話し合いを終えた。



◆ そしていよいよ魔法杯四日目 ◆



 決勝戦当日は、朝からクラスリーダーへのインタビューがある。4クラス×三学年、合計12人が観衆に向けて抱負を語るのだとか。


 俺は

「決勝戦の場に相応しい、白熱した試合にすべく、自分たちの精一杯を披露できたらと思います」

 という、ありきたりな一言で済ませた。


 一方次のクラス、6組のリーダーは

「ここまで勝ち上がってこれたのは、『マジックグッズ』様に提供して頂いたテイム成功率上昇の指輪のおかげです。海外の品物でして、その効果は日本産の物とはかけ離れていました。興味がある方は『マジックグッズ 輸入商品』で検索して下さい」

 と言った。そういえばプロモーションをするクラスがあるって聞いたな。

 魔法杯は、学園関係者のみならず、フォルテ関係の職に就く全ての人が注目している試合。また、全国に向けて放送される人気番組でもある。宣伝の効果は十分あるだろう。


 他にも二年生から1クラス、三年生から2クラスがプロモーションをしていた。栄養ドリンク、歩数計、そして1年6組と同じく『マジックグッズ』のプロモーションだった。



 次は賭け事についてのルール説明。せっかくの機会だし、暁先輩と桜葉先輩のクラスに賭けてみた。



 決勝戦第一試合、三年生の試合は非常に迫力があった。なんというか、一人一人が強いんだ。俺達1年生、そして2年生の試合だと「特別強い人が目立つ」って感じなんだが、3年生の試合は全員が熟練者に見えた。

 そういえば、3年生という事は来年から実戦に投入されるのか。フォルテメイアにある迷宮と違って、普通の魔物の巣で戦う時は「負け=死」だ。そんな環境で働くのだから、強くて当然だよな。

 ちなみに優勝したクラスは『マジックグッズ』のプロモーションをしていたクラスだった。


 決勝戦第二試合、二年生の試合は頭脳戦が見どころだった。2クラスが暗に結託したり、いつの間にか敵対していたり。見ているこっちまでハラハラした。

 最終的には残り3分のタイミングで桜葉先輩率いる部隊が拠点を落として逆転し、暁先輩率いる防衛部隊が拠点HP残り5%というギリギリで耐え抜いて、先輩のクラスが優勝していた。次は俺達の出番だから、祝福している時間が無いのが残念だ。


 そして決勝戦第三試合、一年生の試合だ。

 まずは地形オブジェクトの設置。数はマグマ20個・沼20個となったので「予選での配置そのまま」という訳にはいかなかったが、基本的には同じような形にした。他クラスはどんな作戦を使うだろうか。楽しみである。



 最後に円陣を組んで「絶対優勝するぞ!」「「「おおー!」」」と全員の士気を高め……。


『10、9、8、……、3、2、1、……』


 ゼロ。ブザーが鳴った。




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