ロール

「地形オブジェクトの基本について理解してもらったところで、次はロールについて話しておこうか」


「ロール?」

「役割って意味?」


「そう、作戦における役割分担についてとも言いかえる事が出来るかな。ま、実際に見てもらった方が早いだろうから、リストアップしようか」


・防衛

 拠点内から動かず、敵襲を退ける事に専念する役割。


・固定砲台

 ある位置から動かずに遠距離攻撃を行う役割。防衛と違って、拠点外に配置されるものを指す。


・攻略

 他チームの拠点を落とすのに特化した役割。杯玉に近接攻撃を仕掛けられる人物が選ばれる。(遠距離攻撃でも強力なダメージを出せる人がいるなら、その人を選ぶことも)


・運搬

 攻略メンバーを相手チームに送り届ける役割。地形オブジェクトの無効化を担う人、隠密やインビジブル系の魔法を使って奇襲に貢献する人、敵の攻撃から攻略メンバーを守るタンクなどの総称。


・情報

 嘘の内容を喋って敵をごまかしたり、逆に敵の会話を聞いてそれを味方に伝えたりする人。スパイみたいなイメージだな。

(ゲームではこういう要素はなかったけど、リアルとなった今、情報部隊は非常に重要になるはず)


・遊撃

 上記どれにも属さない人。


「なお、試合開始直後は防衛も攻略も必要ないし、全員が遊撃みたいになるけどな。ここまでオッケー?」


「あの……すっごくバカみたいな質問になるかもだけど、一ついいかな?」


 委員長がおずおずと手を上げた。もちろん、と続きを促した。


「そもそも、全員遊撃じゃあダメなの? 役割を固定せずに、常に臨機応変な対応をすればいいんじゃないかな?」


「うん、正直それも一理ある。けど、やっぱり事前に大方の内容は決めておいた方が行動をとりやすいんだよな。例えば試合の中盤~後半に戦闘不能になったとするじゃん? その時、リスポーン後の行動はどうするべきだろう? 拠点に残って防衛? それとも拠点を飛び出して攻略? 鈴原さんならどう判断する?」


「他チームに押されているなら守るし、こっちが有利なら攻撃。とかダメ?」


「例えば、他チームに押されている、つまり他チームが攻めてきているとしよう。これって逆に言うと『他チームの防衛メンバーが少ない』って言い換えられるのではなかろうか?」


「あ……」


「つまり、守るべきか攻めるべきの判断って難しいんだよな。だからこそ、ロールを先に決めておいて、その指針になればと思う訳だ」


「なるほどね……。ごめんね、変な事聞いちゃって」


「いやいや。同じ疑問を抱いてた人は多いと思うし、質問を投げてくれて凄く助かった。ありがと。せっかく質問が出たし、ロールを決めておくメリットをもう少し話そう。もう一つのメリットとしては、『複雑な作戦を実行できる事』が挙げられる。例えば」


拠□□□□

□□□□②

□□□□□ →Bチーム

□□□□□

□③□□①

  ↓

 Cチーム


「固定砲台を①の位置に配置しているとしよう。ここで、情報部隊が『今、Bチームの守りが手薄だ。攻めやすい』と判断し、それを攻撃班に伝えた。次に情報部隊は固定砲台に作戦を伝える事になった。どうするなんと伝える? じゃあ、伊藤」


「え、俺? えっと……Bチームを攻撃するように固定砲台に伝える? つまり、②に移動させる」


「あー残念、逆だな。Bチームを攻撃してしまうと、Bチームの人が拠点でリスポーンしてしまうだろ?」


「あーそっか。Bチームを攻撃しないようにすべきなのか」


「そう。さらに言うと、③に移動してCチームを妨害することにもメリットがある。それが、『敢えてBチームに拠点を落とさせてから、Bチームに敵討ちをすれば、一気に得点を稼げる』という事だ」


「なるほどなあ」


「こういった作戦をスムーズに実行する為にも、ある程度ロールを決めておくことは便利って訳だ。さて、じゃあここからは各自自分がどのロールをしたいか、出来るかを考えてもらおうかな? ちなみに、俺は防御も攻撃も出来るから、攻略を担うのが良いかなって思ってる。あと、宮杜さんにバフをかけて、二人で固定砲台をするのもありかな?」



「相談してもいいか?」


「おう、勿論」


「俺って光魔法で攻撃も出来るしインビジブルも使えるじゃん? この場合、固定砲台と運搬のどっちが向いてるかな?」


「そうだなあ。お前ってインビジブル、時々失敗してなかったっけ? 空間が揺らいだりしてた覚えが」


「あーまあ確かに。まだ発展途上と言われたら、頷かざるを得ない」


「特に『走りながらインビジブル』ってかなり高等テクニックのはずだ。だから、固定砲台がオススメかなあ。固定砲台でも、インビジブルが使えて損はないからな」


「なるほど、確かに。そっか、運搬は走りながらじゃないといけないもんな」



「私、私はどうすべきかな?」


「俺の独断と偏見だと、七瀬さんは攻略かなあ。近接アタッカーの中でも、身体強化タイプ。つまり、走るのが早い。敵地までかけて一気に攻め落とすのとか似合いそう」


「なるほど、じゃあ杯玉をてやー!ってすればいいんだね!」


「だな」



 こうして、大雑把にロールを決める事が出来た。ここで、第一回の作戦会議は終了。次回以降は、各ロールにそれぞれが取るべき作戦を伝えていく感じだな。

 ってなると、資料を作るべきかも? 次回の会議は……二日後かあ。まあ、余裕があったら作ってみるか。




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