神名部さん加入、そして……
桜葉先輩の発言のせいで話がそれてしまったが、今日の一番の目的は神名部さんに部活紹介することだ。
「で、部活紹介って何すればいいかな? 概要は赤木君が説明したんだよね?」
「はい。なので、実際にどういった事をしているのかを知りたいなと。あと、何か行事ごとがあれば知りたいと思ってます」
「なるほどね。ま、まずは部活の活動内容だけど……。見ての通りね」
そう言って暁先輩は、グラウンドでひたすら戦闘しているメンバーを指し示す。
「ああやって、自分の実力を確かめる。せっかくだし、ちょっと観察させてもらおっか」
えっと、確かあの二人は二年生で名前は桃花先輩と金子先輩だったっけな?
二人とも火属性の使い手であり、その戦いっぷりはとても華やかである。まさに火花散るような真剣勝負って感じ。
「二人とも火属性なんですね。同級生の火属性魔法使いとは格段の差があります」
「そりゃあ、一年間フォルテとして鍛えてるからね~! 二人とも、とっても優秀だよ! その友達も一年後にはあんな風になってるかもね」
「友達じゃないです、ただの同級生です」
「……えっと。なんかごめんね」
「?」
暁先輩が困ってらっしゃる! で、会話が上手く成立せずに神名部さんも困ってる。
(あの、先輩。神名部さんの友達いない発言はただ事実を伝えてるだけで、卑屈になってたり嫌に感じてるって訳じゃないので、謝る必要はないですよ。下手に謝ると、今みたいに「この人はなんで謝ってるんだろう?」みたいな顔をします)
(な、なるほど)
その後、模擬戦を終えた桃花先輩と金子先輩は反省会をし始めた。暁先輩、神名部さん、そして俺はその反省会に参加する。
「負けちゃった~! 最後の爆発魔法、凄いね!」
「ありがと! あれは、目の前の空気を高温にする事で、爆発を起こしてるの」
「な、なるほど。相手に火を当てる以外の攻撃もあるんだね……」
「うん。それにしても、桃ちゃんの追尾式火矢、最近どんどん精度が上がってるよね!」
「うん、前までは『相手を狙って進め』みたいにイメージしてたんだけど、最近は『相手の動きを予測して進め』みたいにイメージしてるんだ。PID制御って言うのに近いらしいの。あ、暁ちゃん! 見てたんだ~! あれ、そっちの子は?」
「見学の子。赤木君のパーティーメンバーらしいの」
「神名部と申します」
「そうなんだ、よろしくね!」
「よろしくね! もう説明があったかもだけど、さっきまで見たいにただ戦うだけの時もあれば、こうやってしっかりと反省会をするときもあるの」
「すごいですね。流石は『研究会』って感じがしました」
「追尾式の魔法、凄くカッコ良かった! 前に教えてもらったけど、よく分からなかったんだよね……。その何とか制御って言うのを学んだら私も使えるようになるのかなあ?」
暁先輩の能力は土魔法、大地に作用して盾を作ったり落とし穴を掘ったりする魔法の他に、岩を飛ばすような魔法も存在する。特に後者なら、追尾作用が付与出来たらいいよな。
「どうだろ……? ざっくりと調べた限り、敵の素早い動き、ゆっくりした動きに対応する?とかなんとか? 正直、私もあんまり詳しくは理解してないの。魔力を微調整してるだけだから……」
「感覚でなんでも出来ちゃう人かあ。うーん、赤木君は分かる?」
「そうですね……。PID制御自体は(前世で)家電開発をした時に勉強したことがあります。Pは比例制御、Iは積分制御、Dは微分制御です。Pは今の状態に応じて敵を追いかけるって言う意味です。単純で分かりやすいですが、悪く言えば大雑把です。これだけでは、微妙なズレを補正できません」
「そういえば、昔の私の魔法はそうだった! 追いかけはするんだけど、微妙にズレてたの!」
「それを修正する為に使うのがIです。積分制御とは微妙な誤差が持続した時に修正するって意味です。Pとの違いは、誤差があってもすぐには修正せずそれが持続した時に修正するという点にあります」
「すぐに修正するだけじゃダメなの?」
「そうしてしまうと、『あれ、右にズレてる? 進路を左に修正!』『今度は左にズレた! 右に修正!』っていう風にブレブレになってしまいます」
「ああ、なるほど!」
「最後にD。これは敵が急に動いた時に、一気に修正する事を指します。D制御は敵の未来の位置を予測している点が異なります。例えば、敵が一気に左に移動したとしたら、その0.1秒後はもっと左に動いているでしょう。そういうのを予想して動かします」
「私の魔法、そんな高度なことをしてるんだ……!」
「無意識の内に出来るって事の方がすごいですよ。俺もその魔法、いつか習得したいです。とまあこんな風に、先輩後輩の垣根を越えて、能力について議論できるのが、この部活の良い所かな」
「赤木君の言った『家電開発をした時に勉強した』が衝撃的過ぎて、途中の説明を覚えてないけど、凄いって事は分かったよ」
◆
「っていう感じ。どう、興味湧いた?!」
「そうですね、面白そうだと思いました。けど、なかなか私の能力だと練習出来ないですよね」
「あー確かにそうかもだね……。隠密とデバフだっけ?」
「はい」
「そうだよね……。それこそ、迷宮とか魔法杯なら大活躍だけど、一対一の対人戦には向かないよね」
「そうですね」
「うーん」
と困った顔をしている俺達の所に、川崎先輩が自信満々な顔で近付いてきた。
「ふふん。そう言う子が来るかもしれないと思って、用意した物があるんだ! これを見てくれ!」
「これって……?」
「魔法杯の模擬戦を行える魔道具『フィールドジェネレータ』だ。今までのモデルと違って、少人数で戦う用の魔法杯を行える代物……らしい。最近手に入ったものの、使い道が無かったらしくて、なんやかんやあって能力研究会が使っていいことになったんだ! という訳で……。能力研究会の部員は全員、集まってくれ!」
「なになに?」
「なんか魔法杯がどうこうって聞こえたけど……」
「この、フィールドジェネレータを使って、少人数用の魔法杯が出来る事になった。今日はその試運転をしようと思う! 大アリーナに移動だ!!」
少人数用の魔法杯か。ゲームにも搭載されていた機能だな。
けど、当然リアルでは一度もプレイしたことが無い。いったいどんな感じになるのか楽しみだ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます