魔法杯の模擬戦、試合開始前

「まず、一年生組。魔法杯のルールは知ってるよな?」


 コクコク、と俺達は頷く。授業でも習ったからな。


「それなら説明を省くぞ。で、今回はこの『フィールドジェネレータ』を使う場合の変更点だけ説明する。と言っても、フィールドが狭くなるって事以外はあんまり変わってないけどな。」


・魔法杯で使用される大アリーナは400メートル四方。普通の魔法杯はこの全体をフルに使って対戦を行うが、今回の模擬戦で使用するのはその四分の一。つまり、200メートル四方のエリアを使用する事になる。

・それに伴い、領地は95メートル四方のエリアに変更。拠点の大きさも半分になって一辺10メートルのエリアになる。

・杯玉の大きさは変わらない。

・地形オブジェクトの大きさは一辺10メートルと、普通の魔法杯のそれと同サイズである。


・点数制度などは全く同じ。


・死亡判定後、復活までのクールタイムは30秒と短く設定されている。


・試合時間は20分


「ざっとこんな感じだ」


「面積が四分の一になるって事は、参加人数も減らす方が良いですよね。10人くらい?」


「いや、実は一チームの制限は3人らしい」


「え、めっちゃ少なくないですか?」

「攻撃2、防御1って感じですかね? あるいはその逆か」


「とはいえ、4チーム参加する訳だから、全員で3×4で12人。部活動で使う分にはちょうどいい人数と俺は思ってる。という訳で、早速やってみようか! まずは俺達3年生がやってみるか? いや、敢えて後輩に先にやって貰おうか。新入部員?見学の子?も合わせてさ」


 お、俺達が先にやっていいのか! じゃあ、早速対戦……!

 の前にグループ分けを行う必要がある。と言っても、宮杜さんは俺と組む必要があるし、神名部さんもはじめましての人と組むのは嫌だろうから俺のチームに入れようと思う。二人もそれでOKとのことなので、俺のチームメイトは確定だ。


 俺達と離れてしまった七瀬さんは、暁先輩と桜葉先輩と一緒のチームになった。


 一年生組のもう一人、山本君は彼の実兄である山本先輩と二人で出場する事になった。山本先輩曰く、「俺は三年だからな。それくらいのハンデがいるだろう」とのこと。


 あともう一チームについては、桃花先輩(火属性)、薫子先輩(水属性)、金子先輩(火属性)の二年生チームが組まれた。



「チームもすんなり決まったな。それじゃあ、各チームは作戦会議を行おうか。これ、メモ用の画用紙」


「「「はーい」」」



◆ Side 山本兄弟


「この戦い、兄貴はどうすれば良いと思う?」


「先にリゲルの考えを教えてくれ。この戦いの行方はどうなると思ってる?」


「うーむ、そうだなあ。まず、俺の能力は対人戦でバリバリ活躍するというよりも、罠を仕掛ける方が得意。だから、俺は拠点の周りの防衛を整えるのがいいだろう? 杯玉の落とし合いが始まる、試合後半までの間に、防衛線を張るべきかと思ってる」


「俺も同意見だ。だけど、今聞きたいのはそうじゃない。この戦いの行方だ。他チームはどう来ると思う?」


「と言うと?」


「例えば、赤木のチーム。あそこは、実質三人が一緒に行動する必要があるだろ? 宮杜も神名部も単独では攻撃が出来ないと聞いている。つまり、あのチームはこの試合において一番不利だ」


「だが、赤木の強さはピカイチだぞ? 罠を見破る能力も凄い、防御も、攻撃も少なくとも一年生で右に出る者はいないんじゃないかっていうレベルだ。そんな彼がいる以上、不利って事は無いんじゃないか?」


「まあな。正直、赤木一人が本気で戦えば、いい勝負すると思うぜ? だけど、彼はそう言う奴じゃないだろ?」


「あ……。確かに」


「彼は二人に活躍の場を与えようとするはず。彼の性格からして、きっと勝つ事よりも横にいる子を楽しませる事を優先すると思う」


「なるほどなあ。それで言うと、桜葉先輩のチームも七瀬さんに活躍の場を与えるための行動を取るかな?」


「可能性はある。俺の予想だが、桜葉と七瀬が攻撃中心の立ち回り、暁が守りをすると考えている。暁の能力は大地魔法、防御に適してるからな……」


 その後も彼らは、試合展開を予想しつつ、どのタイミングで守りに入るかなどを決めたのだった。


◆ Side 桃花・薫子・金子


「加奈ちゃんのチームが一番有利かなあ?」


「だよね~。加奈ちゃんは攻撃、暁ちゃんは防衛だよね。一年生の、えっと、七瀬アヤちゃんだっけ、は遊撃って所かな?」


「けど、山本兄弟もヤバいよね。山本先輩は三年生なだけあって強いし、弟君の方は罠特化。弟君が本気で罠を張り巡らせたら、たどり着ける気がしない……」


「そうだよね。一歩でも領地に入ったら爆発に巻き込まれると思う」


「特に今回はフィールドが狭いよね。だから、罠を密に張り巡らせてると思う」


「赤木君の所はどうだろ?」


「赤木君次第じゃないかな? 正直、本気の赤木君は全員が相手でも勝ちそう」


「確かに……。桜葉ちゃんなら相打ちに持ち込めるかもだけど……」


「けど、他の二人が、その、こういう言い方はあれだけど足を引っ張りそうね。赤木君、二人を見捨てて勝ちに拘る様な子じゃないし」


「そうだね。……彼っていい子よね~」


「え、もしかして気になってる?」


「まっさか~。そこまで親しくないし。それに、瑠璃ちゃんが狙ってるでしょ?」


「やっぱりそうだよね?!」

「あの瑠璃ちゃんに恋人かあ。でも、二人ってお似合いだと思う!」


 二年生三人組は、途中からコイバナに花を咲かせるのだった。




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